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子ども・若者とともに行う研究の倫理 プリシラ・オルダーソン(著/文) - 新曜社
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子ども・若者とともに行う研究の倫理 (コドモ ワカモノトトモニオコナウケンキュウノリンリ) 研究・調査にかかわるすべての人のための実践的ガイド (ケンキュウ チョウサニカカワルスベテノヒトノタメノジッセンテキガイド)

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発行:新曜社
A5判
240ページ
並製
価格 2,800円+税
ISBN
978-4-7885-1497-3   COPY
ISBN 13
9784788514973   COPY
ISBN 10h
4-7885-1497-4   COPY
ISBN 10
4788514974   COPY
出版者記号
7885   COPY
Cコード
C3030  
3:専門 0:単行本 30:社会科学総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2017年11月
書店発売日
登録日
2017年10月30日
最終更新日
2022年8月19日
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紹介

◆特別な配慮とは?
 今日、子どもや若者の生活についてさまざまな研究や調査が行われています。国や自治体は、いろいろな支援を計画したり評価するのに子どもが参加することを求めています。「国連子どもの権利条約」は、子どもが自由に意見を表明する権利を有することを明記しています。子どもの権利は、世界中の研究やコンサルテーション活動でますます尊重されるようになっていますが、そこにはさまざまな倫理的問題が起こりえます。本書は、子どもとの研究や活動で起こりがちな問題について具体的に述べ、その倫理的問題を解決する方法について懇切に解説した、研究者、実践家必携の手引きです。

目次

子ども・若者とともに行う研究の倫理 目次
謝  辞
著者について

序  論
    いくつかの用語の定義について
    研究倫理
    本書の目的─不確実性と問いの形式からの出発
    インサイダーあるいはアウトサイダーとしての研究者
    本書の内容

第一部 研究計画の段階

  1章 研究を計画する─目的と方法
    2つの基本的問い
    目的と方法についての問い
    研究は行う価値があるか?
    理論は重要だろうか?
    観点は重要だろうか?
    方法は重要だろうか?
    研究倫理への関心の増大における3つの局面
    研究を査定するための3つの倫理的枠組み
    不確実性─倫理的研究の基盤
    問いのまとめ

  2章 危害と利益の査定
    危  害
    利  益
    危険、負担、危害と利益の査定
    危険  利益査定における混乱
    苦悩あるいは屈辱の危険
    問いのまとめ

  3章 権利の尊重─プライバシーと守秘性
    守秘性に関する法的権利
    オプトイン(参加選択)または、オプトアウト(参加拒否)
    実践的な尊重
    プライバシーの権利
    1998年データ保護法
    守秘性か承認か?
    見知らぬ者同士の親しさ─研究におけるインタビュー
    倫理とインターネット
    地域の価値観を尊重すること
    対面の接触におけるプライバシーと自由な応答の促進
    伝統的な倫理は現代の研究経験や人間関係を扱えるか?
    問いのまとめ

  4章 研究を計画する─選択と参加
    研究のテーマの枠組みを決めることと研究の範囲
    尊重、包含と保護を結びつける
    伝統的な倫理は社会的排除を扱えるか?
    イメージとシンボル
    包含を超えて参加へ─研究者としての子どもと若者
    若者とともになされた国際連合関連の研究
    若い研究者自身の特質の尊重
    問いのまとめ

  5章 金銭問題─契約、プロジェクトへの資金提供
    および参加者への報酬の支払い
    計画すること、予算を組むことと研究の検討課題
    倫理と資金の提供源
    二酸化炭素排出の対価
    倫理と契約
    公表の自由
    若い研究者と参加者への報酬の支払い
    背景状況に応じた報酬の支払い
    問いのまとめ

  6章 目的と方法を審査する─倫理ガイダンスと倫理委員会
    研究目的および方法の審査と改訂
    社会調査研究は研究倫理委員会を必要とするか?
    研究倫理委員会に関する最近の経験
    国際的基準
    全国的な社会調査研究倫理評議会が必要か?
    問いのまとめ

第二部 データ収集の段階

  7章 情  報
    口頭および書面による情報
    研究情報リーフレット
    リーフレットのレイアウト
    研究情報リーフレットの例
    他の言語によるリーフレット
    半識字社会における情報
    適切な研究か?
    研究を通じて交換される双方向の情報
    問いのまとめ

  8章 同  意
    同意と権利
    同意の意味
    オープンエンドの研究への同意
    アセント
    同意と法
    子どもや若者による同意、および彼らのための同意
    二重基準
    親の同意の混乱
    同意する能力を定義し査定する
    意思決定における関与の水準
    同意と拒否を尊重する
    縦断研究への同意
    同意と二次的データ分析
    同意に関する国際的基準
    国際的状況における研究
    なぜ子どもの同意を尊重するのか?
    子どもの同意に関する一般的問題
    問いのまとめ

第三部 文書化、報告、追跡調査の段階

  9章 研究結果の普及と政策実施
    子どもにデータ分析にかかわってもらう
    普及─議論の核心と変化に至る
    普及と政策実施─子どもと若者、そして大人が変化のために一緒に働く
    普及における諸問題
    諸問題をめぐる創造的な方法
    普及と報道メディア
    批評者的な読者と観察者
    子どもに対する根本的な態度と3つのP
    問いのまとめ

  10章 子どもへの影響
    研究は子どもと若者にどのような集合的影響力を持つのか?
    研究による子どもへの影響を検討する
    肯定的イメージ
    問いのまとめ

  11章 結  論
    個人とチームの今後に向けた方法
    個人のみでは解決できない問い
    社会調査研究倫理機関の必要性
    国家指針の概要
    研究は行う価値があるか?
    そして最後に

訳者あとがき
文  献
索  引

装幀=新曜社デザイン室

前書きなど

子ども・若者とともに行う研究の倫理 序論(抜粋)
   今日、子どもや若者は、彼らの生活の多様な側面について常に意見を尋ねられます。国や地方政府は子どものための無数の機関や支援提供者とともに、膨大な時間と努力と資金を投入して、熱心に子どもの意見を聞き、いろいろな支援を計画したり評価することに子ども自身が参加することを求めています。「国連児童の権利条約」(1989)は、子どもに影響を及ぼすすべての事項について子どもが自由に自分の意見を表明する権利を有すること、その場合、子どもの意見は、その子どもの年齢と成熟度に従って相応に考慮されることを明記しています(第12条)。さらにこの条約の54にわたる他の多くの条項も、子どもを尊重し子どもを参加させることに関連しています。各国政府による本条約の実行に関する進展状況の定期報告と、それへの国連委員会の応答に記録されているように、これらの児童の権利は、徐々に世界中の研究やコンサルテーション活動においていっそう尊重されるようになってきています(www.ohchr.org を参照)。しかし、子どもとともに行う子どもに関する研究やコンサルテーション活動は、倫理的問いを提起します。これらの問いを検討することは、効果的な研究の手順、方法、結果にとって極めて重要であるため、本書では研究がたどる主要な10段階で起こりがちな問いについて、その順序で吟味していきます。後で説明しますが、私たちは一般的な答えを提供するのではなく、皆さん自身が、特定のプロジェクトにおいて生起する実践的な問題について考え、その倫理的問題を回避したり解決する可能な方法について考えること、それを支援することを目指しています。

いくつかの用語の定義について
 私たちは社会調査研究を広義に、子どもや若者の意見や経験を収集し報告するあらゆる手続きを含むものとして定義します。プロジェクトの種類を長々しく列挙するのを避けるために、「研究」 「調査」 「プロジェクト」と呼びますが、それにはコンサルテーション、評価、監査、視察、そして参加型プロジェクトなど、データを集め、報告するすべての活動が含まれます。そして、これらはすべて、倫理的問いを提起する可能性があります。

 観察や質問紙、事例研究、インタビューやグループ討論といった伝統的な方法と活動を利用することに加えて、研究者は子どもに彼らの日常生活の写真を撮ること、日誌を書くこと、地図を描くこと、ビデオを撮ることを依頼するかもしれません。彼らは子どもや若者を研究者そのものとして招き入れるかもしれず、そこで電子メールの使用や、チャット、フェイスブックのようなソーシャル・ネットワーキングのウェブサイトの利用も増大します。私たちはこれらすべての活動によって引き起こされる倫理的問いを検討します。

 社会調査研究者は年齢を問わず、これらの種類の研究を行う人を指します。彼らは地域や国の政府機関や部局の職員であったり、営利的組織、独立組織あるいはボランティア組織の人びとであったり、学者や実践家、支援利用者や活動家の背景を持つ人かもしれません。彼らは専門家、学生、「非専門家」研究者、コンサルタント、評価者、ジャーナリスト、市場調査者かもしれません。彼らは自然科学や社会科学、人文学、ITや経営学の分野で研究しているかもしれません。彼らが子どもを観察し、会話し、子どもの意見や経験についてのデータを収集しているなら、本書では彼らを「社会調査研究者」と考えます。社会調査研究者は知識を増やすこと、モノやサービスを評価すること、政策や実践に情報提供したり変化させることを目的とし、さらにまた、子どもの参加と包含(inclusion)を促進することを目的とすることもあるでしょう。

 本書が役立つことに気づいていただける読者には、データを収集し、処理し、分析して報告する人びとばかりでなく、研究やコンサルテーションのプロジェクトを計画し、資金提供し、委託し、管理する人びともまた含まれると期待しています。私たちは、研究倫理委員会(Research Ethics Committees: RECs)や機関審査委員会(Institutional Review Boards: IRBs)のメンバーに対してばかりではなく、研究の倫理的承認を得るためにこれらの機関に申請しようとする研究者に向けて書いています。研究倫理について教え、学ぶ人びとが急増していますが、そういう多くの人びとにとっても、本書が役立つことを望んでいます。もう一つの重要な読者のグループは、研究報告書や実施計画書を読んで諾否の判断を行い、さらに研究の推薦を公にしたり執行したりするであろう人びとです。倫理基準の知識と、研究者がそれらを自身の報告の中でどのように言及しなければならないのかということについては、政策立案者や実践家、支援使用者とその擁護者、資金提供者のために実施計画書を審査し、査読付き学術誌のために論文を審査する専門家などの批評者的な読者にも役立つでしょう。倫理に関する知識は、読者が研究について十分な情報に基づいて査定をするときに役立ち、また読者が、政策、実践、教育、そして後続する研究において現在の研究結果がどのように解釈され応用されるかということに関して、可能な影響力を考察するときに役立つでしょう。

 私たちは、研究されている人びとを通常参加者と呼びますが、これには異論があり、彼らが適切に研究について知らされておらず尊重されていない場合には、「研究の被験者」と呼ぶほうがより正確な場合があります(Smyth & Williamson, 2004)。

 私たちは本書の全体を通じて子どもと若者について論じますが、できるだけ読みやすくするために、時に敢えて「子ども」という表記で誕生から18歳未満の人すべてを示すことにします。

 私たちは、英国にとどまらない、研究倫理に関する?国際的?なハンドブックを書こうとしました。では私たちは、南半球の国とか北半球の国、東洋、西洋の国をどのように記述すべきでしょうか? いずれも正確な対比ではありません。豊かな日本は極東にあります。オーストラリアとニュージーランドは貧しいとされる南半球にあります。ブラジルと中国も急速に、「第三世界」から「第一世界」経済へと変化しています。そこで私たちは、「富める/貧しい」という対比で世界について書くことを避けました。後で私たちは、「西洋」の倫理は「東洋」の倫理と完全に異なるという、新植民地主義者の仮定に挑戦します。私たちは「先進国/発展途上国」という言葉を、次に述べる理由から避けました。

 子どもとともに行う研究の倫理についての本の中で、私たちは幾分か抑圧的な主張である、不完全な「発達途上」の子どもがいつの日か「完全な発達を遂げた」大人になるという概念に挑戦します。なぜならこのような概念は、国際政治、経済、そして研究において、むしろ誤解を招くものだからです。すべての国が脱工業化した「発展した社会」を見習うべきだと仮定するのは、見下した考え方です。「発展した社会」は大変不完全なものです。「未発達」とされる国は、古くからの知恵に基づく洗練された文明を持っています。誰もが最も「発展した」そして軍国主義的な国の基準に合うように生きるべきだと思い描くのは非現実的です。なぜなら、そのためには地球6個分以上の資源を必要とするでしょう。「発展した世界」は、次世代が支払わねばならない膨大な負債を貯め込む代わりに、倫理や子ども時代への気遣いなど、より控えめな文明からもっと多くを学ばねばなりません。

 しかしまた、私たちは、英国に居る私たちの研究倫理の考え方を他のどのような国にでも容易に輸出したり押し付けたりできると言いたいのではありません。私たちは、世界人口の17パーセントの豊かな国に住む子どもと、83パーセントの貧しい国に住む子どもが、非常に異なる日常生活の様式を持っていることをはっきり認めたいと思います。用語としてはまだ広く用いられていませんが、私たちは、今日多くの子どもが、研究倫理に関して特段の問いを引き起こしうる不利な状況で生きていることを思い起こし、そこから多くを学ぶことを可能にするために、?マイノリティ世界と(より貧困な)マジョリティ世界という概念を用いました。

 子どもとともに行う研究における生きた倫理を、単なる一連の技術や考え方をはるかに超える人間関係としてとらえた最も明確な理解の一例は、エチオピアの「根深い貧困と過酷な物質的剥奪」の中での生活を研究しているタケク・アベベ(Abebe, 2009: 461)に由来します。彼は子どもに食物や贈り物を与え、また子どもたちも彼にお返しに贈り物をしました。

 私は彼らの環境から離れることはできないと思うようになった ・・・ 相互的関係が、多くの実り多いやり方で研究空間を育んだ ・・・ 相互性は ・・・ いかに倫理的広がりが相互関係の産物であるかを示している ・・・ そして、あの権威ある倫理的原則は、相互作用の中で、研究参加者によって実際に生きられ、再生産され、経験されるのである。

・・・

上記内容は本書刊行時のものです。