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非国民文学論
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年2月21日
- 書店発売日
- 2020年2月21日
- 登録日
- 2019年12月25日
- 最終更新日
- 2020年6月15日
書評掲載情報
2020-04-25 |
朝日新聞
朝刊 評者: 保阪正康(ノンフィクション作家) |
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紹介
ハンセン病を理由に徴兵されなかった病者、徴兵検査で丙種合格になった作家、さまざまな手段で徴兵を拒否した者――。総動員体制から排除された戦時下「非国民」の短歌や小説を読み込み疎外感と喪失感を腑分けし、そこから生じる逆説的な国民意識を解明する。
目次
まえがき
第1部 非国民文学論
序 章 いのちの回復
1 「絶望」を超えて――〈書く〉ことによるいのちの回復
第1章 〈国民〉を照射する生――ハンセン病療養者
1 療養所内「家族主義」
2 「精神的更生」としての創作
3 兵役と療養者
第2章 〈幻視〉という生――明石海人
1 歌集『白描』への注目
2 精神の自由を求めて――歌誌「日本歌人」
3 天刑と刑死――二・二六事件歌をめぐって
第3章 〈漂流〉という生――『詩集 三人』と『笹まくら』
1 「個」としての家族――金子光晴『詩集 三人』
2 徴兵忌避者の生――丸谷才一『笹まくら』
3 家族という課題
4 切断なき「戦中―戦後」
終 章 パラドクシカルな〈国民〉
第2部 〈歌聖〉と〈女こども〉
第1章 明治天皇御製をめぐる一九四〇年前後(昭和十年代)
1 〈歌聖〉明治天皇の登場――日露戦争期
2 『国体の本義』などにみる明治天皇御製
3 御歌所所員らの「謹話」にみる明治天皇御製
第2章 仕遂げて死なむ――金子文子と石川啄木
初出一覧
あとがき
人名索引
版元から一言
「非国民文学」とは何か。近代日本が成立して登場した「国民」という概念を前提に、「国民ではない」と見なされた文学者を取り上げて、作品と生きざまを検証する。
「非国民」の概念を身体性と精神性の双方から考察するため、「国立療養所」としてのハンセン病療養所に着目して、「国立」と「非国民」とを検討する。
戦時下では身体的に「非国民」とされた療養者が、精神的には総力戦を見守る「国民」の立場にもあったという逆説的な短歌を紹介する。
リアリティーあふれる闘病歌が高く評価されたが、その歌人の内面はアンチリアリズム志向だったという逆説的な作品を、2・26事件歌もあわせて例証する。
さらに、金子光晴の家族詩集と丸谷才一の小説も素材にし、戦時下に「徴兵忌避」を選んで身体的自由を得ようとした男性が、戦中も戦後も定住できずに、むしろ身体的不自由を負うことになったという逆説的な展開を解明する。
総動員体制から排除されて「非国民」とレッテルを貼られた文学者の精神の自由に光を当てる。
上記内容は本書刊行時のものです。