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構造としての語り・増補版
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年9月
- 書店発売日
- 2017年9月29日
- 登録日
- 2016年7月22日
- 最終更新日
- 2020年6月15日
紹介
欧文をモデルにしたある一定の文体が安定しようとするその同じ時期に、必ず“語り”の手法を基本にした表現が、単なる「反動」としてではなく、新しい表現状況と密接に絡み合いながら登場してきたことも文学的「近代」の重要な特質であることを解明する。
目次
第1部 構造としての語り
第1章 近代小説と〈語り〉
1 小説言説(ルビ:ディスクール)の生成
第2章 近代的〈語り〉の発生
1 葛藤体としての〈語り〉――『浮雲』の地の文
2 〈語り〉の空白/〈読者〉の位置――他者の原像
3 物語(ルビ:ストーリー)の展開と頓挫――『浮雲』の中絶と〈語り〉の宿命
第3章 〈人称〉と〈語り〉の主体
1 視点と〈語り〉の審級――明治初期翻訳文学での自然と文体
2 〈記述〉する「実境」中継者の一人称――森田思軒の「周密体」の成立
3 〈語る〉一人称/〈記述〉する一人称――一八九〇年前後(明治二十年代)一人称小説の諸相
4 〈語り〉と物語の構成――構成論の時代/四迷・忍月・思軒・鴎外
第4章 〈書く〉ことと〈語る〉ことの間で
1 『坊っちやん』の〈語り〉の構造――裏表のある言葉
2 『心』での反転する〈手記〉――空白と意味の生成
第5章 〈語る〉ことから〈書く〉ことへ
1 『蝿』の映画性――流動する〈記号〉/イメージの生成
2 エクリチュールの時空――相対性理論と文学
3 文字・身体・象徴交換――流動体としてのテクスト『上海』
初出一覧
あとがき
増補 百年目の『こころ』――言葉の時差のサスペンス
1 百年目の『こころ』――言葉の時差のサスペンス
増補版あとがき
解題 「歴史の詩学」を求めて 林少陽
版元から一言
文学作品の作者とは何者であり、読者とは、また何者なのか。
〈作者〉と〈読者〉の相互作用としての〈書く〉ことと〈読む〉ことを捉え返すことを通じて、エクリチュール(文字表現)の文字の連なりのなかに埋もれた意味やイメージをたどる。近代文学研究の泰斗のデビュー作を増補して復刊。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を呼び水にして、近代小説を築き上げた二葉亭四迷の『浮雲』や坪内逍遥『小説神髄』、森鴎外『舞姫』、夏目漱石『坊っちゃん』、さらには横光利一『蝿』、にいたるまでのさまざまな作品を、クリステヴァやボードリヤール、バルトらの文学論も援用しながら多元的で重層的に読み込み、近代日本文学の〈語りの構造〉を解明する記念碑的な論文集。
上記内容は本書刊行時のものです。