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船旅の文化誌 富田 昭次(著) - 青弓社
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船旅の文化誌 (フナタビノブンカシ)

社会一般
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発行:青弓社
A5判
縦210mm 横148mm 厚さ18mm
重さ 429g
240ページ
並製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-7872-2093-6   COPY
ISBN 13
9784787220936   COPY
ISBN 10h
4-7872-2093-4   COPY
ISBN 10
4787220934   COPY
出版者記号
7872   COPY
Cコード
C0021  
0:一般 0:単行本 21:日本歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年4月20日
書店発売日
登録日
2022年2月16日
最終更新日
2022年4月18日
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紹介

夢と期待を乗せた客船が行き交った洋行の時代を小説やエッセー、絵はがきや旅行パンフレットほかの史料から紹介して、異国文化への憧憬と交流、華やかな出港とその後の苦難の道中、長期間の船上生活を再現する。発掘した140点の図版が旅情をかき立てる。

目次

はじめに
「洋行」という言葉が生きていた時代/福沢諭吉が書いた「船中の模様」/華やかな出港のなかの孤独と別離/にぎやかな出港を演出したお別れのテープ/大揺れの船で発見した耐震壁理論/人生の幕開けを飾ってくれた船旅/外国人との交流で気づかされたこと/近代文学に新しい流れをつくった日本郵船型/階級社会の縮図をみて決意する/片道の航海で終わる人々

序 タイタニック号、いまだ色褪せず
忘れられない悲劇/深海探査装置から送られてきた衝撃映像/海底に散乱するタイタニック号のはらわた/超大型客船で他社を圧倒するWSL/紳士的な振る舞いを見せた大富豪/実は安全性を最も重視した船だった?/ただ一人の日本人乗客が残した手記/石炭庫の火災という「新たな真実」/沈没を早めた?隔壁の歪み/氷山よりも燃料不足の立ち往生を恐れた?

第1話 船の旅、苦しみから楽しみへ
船酔いに苦しんだ歴史上の知名士/船に弱い者同士、同病相憐れむ/船に強い人を見て腹を立てた昆虫学者/酔い止めの薬で救われた野上弥生子/船上の食事に閉口した幕末の留学生/口に合わない食べ物でも威厳を崩さず/無聊に苦しめられた永井荷風/船旅をすると寿命が延びるという人も/船上から見える家々の小さな明かり/船旅の魅力が詰まった瀬戸内海航路/「人は船の旅のたのしさを忘れてゐる。」/船で日本を離れる者の感傷「さらば祖国よ」

第2話 礼儀作法と社交の振る舞い
乗船時の注意あれこれ/多額のチップを手渡してしまう日本人/見栄っ張りの人が周囲に迷惑をかける/チップを先に渡す人、ごまかす人/日本船なのに、なぜ西洋の風習に倣うのか/服装を整えるのは自尊心のため/欧米人の振る舞いに感心した日本人/人生を方向づけてくれた言葉を得て/チャプリンとコクトーの出会い/句会を開いたり、議論を戦わせたり/競売で寄付金を集める慈善活動も/船の上も「旅は道づれ、世は情け」

第3話 「風俗画報」の日本郵船特集号を読む
汽船からの眺めは絵画のようだ/パリの花を詠み、ロンドンの月に嘯く/今日の旅客船は海に浮かぶ一大旅館/当時は外国人船長も少なくなかった/無事到着できれば、一等も三等も同じ/家族や知人に「一片の雁信」を書き送るべし/一等食堂は華麗なる人々の祭典/豚の点眼に、タンサンとシガレット競走/舟遊の快や、実に甲板運動場裡にあり

第4話 豪華客船の第一号、天洋丸出航
歓声に沸き立つ横浜港/客船史を飾る出来事が相次ぐ明治末期/内航は過去のもの、舞台は海外だ/巨船の注文にたじろいだ造船所/欧米の水準に最も近づいた客船/一等船客の外国人を自邸に招いて茶会を開く/「豪華の夢破れて 海の女王空し」/船旅は軽やかなジャズのリズムとともに/豪華客船は音楽も最先端を走っていた

第5話 「優秀客船」とは何か
科学と文化と芸術の結晶/全長が東京駅に匹敵したマジェスティック号/一等大食堂の天井高は九メートル超/ブルーリボンの獲得競争/世界を圧倒するドイツの最優秀船/ドイツ船を手放しで褒める日本人/法学者・高柳賢三のブレーメン号印象記/乗船して感じた階級社会と重大事件/日本でも相次いで優秀客船を建造/客船の規模は市場の規模に比例

第6話 覇を競う二人の女王の物語――ノルマンディ号とクィーン・メリー号
海に浮かぶ美術館の誕生/高度な贅と美が結合した装飾/二等船客として乗り込んだ正宗白鳥/浮気心を起こさせないおもてなし/スピードで対決する二人の女王/巨船の外見・中身をイラスト解説/運命の波に翻弄される二人の女王/幽霊保険に加入したクィーン・メリー号

第7話 乗客の最大の楽しみは食事だった
生演奏の音楽が雰囲気を優雅に演出/ホテル王リッツの名声が客船にも及ぶ/鏡のような海で最後の晩餐/瀬戸内海航路でもお目当てはご馳走/一航海で同じメニューは厳禁/いちばん頭を痛めたのは食事時の席次/浅草海苔を勧められたアメリカ人/ホテルの料理人が客船で修業/乗客には懇切丁寧な配慮が/『給仕の執務心得』、その中身とは/喜劇王チャプリンを獲得した秘策/食通の外国人にも愛された「スキヤキ・パーティ」/メニューのデザインも楽しみの一つ/調理師学校の校長を感動させた料理長

第8話 客船だからこそのおもてなし
太平洋横断百三十二回の事務長、大いに語る/乗客を片時も飽きさせないために/余興の域を超越した船員たちの隠し芸/船好きだった大谷光瑞の愉快な逸話/新しい設備導入もサービスの一つ/「世界的創造」の冷房装置/タウトが感銘を受けた花毛布/サービスに対するチップ、その裏事情/日本人が船内装飾を手がける時代に/客船設計者・和辻春樹のサービス論/船客自身が配慮する「他人へのサービス」

第9話 ゲーテも夢想した二大運河を通航
岩倉使節団も通航したスエズ運河/スエズ運河で命拾いした本多静六/フランスへ引き返したかった天皇の料理番/スエズ運河通航中にカイロ観光/パナマ運河の工事に携わった日本人/生まれて初めて見る光景に騒然

第10話 旅情の波間を進む連絡船
稚泊連絡船は霧のなか、汽笛を鳴らして/国鉄連絡船の時代/デッキで食べた讃岐うどん/連絡船から海底鉄道へ/日本と韓国の歴史を運んだ連絡船/中国とつながっていた門司/上海へは下駄を履いて

第11話 世界一周という壮大な旅のなかで
世界初の世界一周クルーズ船が日本に寄港/一種の流行になる世界一周クルーズ/百歳の乗客が気炎を吐いて話題を提供/国際親善に役立った小学校訪問/日本最初の団体世界一周、その様子は/三日間にわたって大運動会を開催/巨船を見て西洋への興味が勃然と湧く岡本一平/最も苦心したのはあるぜんちな丸/美しい流線型で好かれた客船/「外国の人はどんなに驚くだろうと、僕は愉快に思います」/世界一周の航程は八十九日間

第12話 悲喜こもごもの移民船
自由の女神像を見て歓声を上げた人々/三等船客であっても、心は錦/移民には無意味な船中生活/活躍する移民船の山城丸/笠戸丸の数奇な生涯/移民たちの負担を減らした政府援助/移民を輩出したその裏事情とは/移民たちに欠かせなかった移民宿/終生忘れられない仮装大会

第13話 「南洋の島々」という新しい世界へ
ペリー提督が訪れた無人島/歴史の海に漂う小笠原諸島/小笠原旅行に勝るものなし/東京・芝浦から四日目に父島へ/著名士が関心を寄せた南洋群島/日本の統治下に入って移住者も急増/石川達三は未知の土地への好奇心を抱いて/南洋で見た美しさと哀しみ

第14話 活字が伝える船旅の魅力――新しい書物と怪事件と白昼夢
海に出て新しい書物を開こう/巨大な密室で起きる事件の数々/豪華カジノ船という新しい試みのなかで/現実と虚構が錯綜する奇妙な出来事/日本文学者は海に無関心だという意外な批判/旅行雑誌として充実していた英文PR誌/船旅の時代を象徴する言葉の数々

おわりに
建造中の火災事故、そして新型コロナウイルスの感染/新技術を導入した最先端のクルーズ船/徹底的に追求された食品衛生の安全性/常連客の賢い“航海術”

版元から一言

江戸末期に洋行した福沢諭吉、ニューヨークからナポリに向かった有島武郎、ハイカラなフランスをめざして「船旅文学」を打ち立てた島崎藤村。大使館に赴任する家族に同行した女性、新天地に将来をかけた移民たち、あるいは船旅で寿命が延びる感覚を受けたという鶴見和子と俊輔の父・祐輔、船中を和服で通した新宿中村屋の創業者・相馬愛蔵……。

夢と期待を乗せた客船が洋上を駆け巡った洋行の時代、「海の外に出る」ことは生きることそのものだった。暮らしが船旅と結び付いていた時代の営みを、小説やエッセー、絵はがきや旅行パンフレットほかの史料を示しながら、さらには造船現場や客船を運航した人たちの視点も交えて、いまや笑い話のような逸話、想像を超える苦難の道中の数々を紹介する。

決死の覚悟で乗船した時代から150年後の現在、客船は最新テクノロジーで操舵され、長い日数を退屈させないイベントも用意されていて、まるで高級ホテルで移動するようだ。
著者が長年をかけて収集した珍しい図版140点が、まだ見ぬ海外への往時の旅情をかき立てる。

著者プロフィール

富田 昭次  (トミタ ショウジ)  (

1954年、東京都生まれ。ホテル・旅行・歴史作家。著書に『「おもてなし」の日本文化誌――ホテル・旅館の歴史に学ぶ』『絵はがきで楽しむ歴史散歩――日本の100年をたどる』『ホテル百物語』『ホテル博物誌』『旅の風俗史』『ホテルの社会史』『絵はがきで見る日本近代』『ホテルと日本近代』(いずれも青弓社)、『サービスはホテルに学べ』『おひとりホテルの愉しみ』『東京のホテル』(いずれも光文社)、『ノスタルジック・ホテル物語――明治・大正・昭和』(平凡社)など。

上記内容は本書刊行時のものです。