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歌集 暁の星
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2022年5月30日
- 書店発売日
- 2022年5月27日
- 登録日
- 2022年3月15日
- 最終更新日
- 2022年6月1日
紹介
テロリストと呼ばれしわれは秋ならば桔梗コスモス吾亦紅が好き
元日本赤軍リーダー・重信房子が21年に及ぶ刑期を終え、この5月に出獄する。本書は獄中で書き溜めてきた短歌をまとめた第二歌集。著者は革命の日々を、連合赤軍事件で粛清された友・遠山美枝子を、現在の世界の悲惨を、二十数年にわたり詠み続けて来た。本書の歌は、著者の踠きと葛藤の発露であると同時に、歴史の証言でもある。
「海外で暗躍すること四半世紀を超え、国内での潜伏と獄中の日々、重信は一体、この斬新で清潔な文体をどこで獲得してきたのだ。……戦い死んでいった同志への哀悼に、柔らかな心の襞を涙で濡らし続けてきたのだろう。」(福島泰樹「跋」より)
アネモネの真紅に染まる草原に笑い声高く五月の戦士ら
空港を降り立ち夜空見上げればオリオン星座激しく瞬く
雪中に倒れし友の命日に静かに小さな白き鶴折る
津波燃え人家逆巻き雪しきり煉獄の闇 生き延びし朝
パレスチナの民と重なるウクライナの母と子供の哀しい眼に遭う
目次
序章 2019.5,2022.5
五月の戦士たち-リッダ闘争五十年
ナクバの日-ナクバとは「大惨事の日」
Ⅰ 2022.1~2022.2
暁の星
ウクライナ
Ⅱ 2021.1~2021.12
一月尽
早春賦
老囚
星一つ
ガザ
砂漠
空襲
百日紅
財
秋
胸底
喉仏
Ⅲ 2020.1~2020.12
逆夢
雪山
棺
鉄格子
友
黄昏
行進
蟬時雨
一炊の夢
星座
獄二十年
コロナ
Ⅳ 2019.7~2019.12
反逆の子
埋め火
彼岸花
逆光
或る秋
黒い字
オリオン
終章 2019.3,2022.3
三月哀歌
跋 戦士たちはわが胸に棲み 福島泰樹
あとがき 重信房子
栞(挟み込み)
足立正生 革命の言霊を詠む!
田中綾 愛のゆくたて
四方田犬彦 死と再生の歌
前書きなど
あとがき 重信房子
人が短歌を詠み始めるきっかけは何だろう、と思うことがあります。人各々に動機がある筈です。
私は有名・無名の人々の歌を何かの折に読んで共感する時、ノートに書き記し、この人はどんな気持からこの歌を詠んだのだろうと考えるのが好きです。この人の初めの歌はどんな歌で、どんなきっかけだったのだろう、そんな想像は気持を豊かにしてくれます。私が獄に囚われているせいかもしれません。想像はどこまでも自由に広がり、軽々と鉄格子を越え監視や規則の獄から私を解放してくれます。
私は獄に囚われて初めて短歌を詠むようになりました。二〇〇〇年の逮捕以来、文通も面会も「接見禁止」の状態が約七年続き、監視と規則の中で自由に向かって弁護士に手紙を書く日々。獄という緊張の包囲の中、心に抱いたもどかしい本音や記憶のなかの情景が、自然にことばとなって零れはじめました。三十一文字が一番自由に記憶や問題意識を形象(かたち)にしてくれるような気がして、二〇〇一年から短歌を詠み始めたのです。
以来、一日一首以上何首も零れるままに書き留めて、短歌は獄中生活の一部となり、心の拠り所にもなって いきました。……(以下略)
上記内容は本書刊行時のものです。