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慶應義塾大学商学会商学研究叢書21

会計と社会 公共会計学論考

社会科学 ラノベ

黒川 行治(著/文)
発行:慶應義塾大学出版会

A5判   760頁 
定価 4,700円+税

ISBN 978-4-7664-2468-3   C3034

書店発売日 2017年10月6日
登録日 2017年9月14日

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紹介

▼「みんなを幸せにする会計」を求めて――
 ――誠実な勤労者が損をしない社会を実現するために、会計は存在する

経済のグローバリゼーション、金融資本主義の蔓延、勤労者の地位低下・富の偏在、地球環境への負荷増大、政府財政破綻の危機に直面し、会計は、どのように対処してきたのか、どのような役割を果たすべきなのか。
本書は、公共哲学、社会政策論などの知見を踏まえ、「社会と会計」「市場と会計」「個人・組織と会計」「環境と会計」「公共・政府と会計」という五つの視点から、この問いに挑む。
それはまた、会計制度・政策設計の第一線で「あるべき会計」を探究し続けてきた一研究者の思索と討論の軌跡でもある。

目次

序 文
図表一覧

  <u><b>第1部 社会と会計</b></u>

<b>第1章 資本主義精神の終焉</b>
<b>――公共会計学の勧めの背景――</b>
 1.自然の猛威と科学・技術の限界の認識
 2.科学・技術に対する社会科学の干渉
 3.生物種としての人間と環境思想
 ――「二元論」・「一元論」と「環境主義」・「エコロジズム」
 4.自然物と人工物
 5.人間の特性――科学・技術の探求と共同社会の形成
 6.社会システム――資本主義が問題
 7.資本主義に内在する発展・成長という思想
 8.近代資本主義を成立させた精神とは何か
 9.公共会計学の勧めの背景

<b>第2章 会計・監査社会の変容のインプリケーション</b>
 1.会計・監査社会の現状
 2.会計情報の変容の背景
  (2-1) 科学の進歩に応じた新たな要求――将来の可視化
  (2-2) 企業価値の構成要素の変化
 3.企業評価とイデオロギーの変化
  (3-1) 企業価値の理論値と市場価値
  (3-2) 会計とイデオロギー
  (3-3) 社会的責任と会計(報告)の対応
 4.監査社会の進展の含意
  (4-1) 監査の進展の1つの解釈
  (4-2) 監査の質と監査市場
  (4-3) 監査の質の判定が不明確なままでの監査の拡大に伴う現象
 5.会計プロフェッションの位置付けの変化
  (5-1) 会計プロフェッションの消滅
  (5-2) プロフェッションの意義と特徴
  (5-3) 会計プロフェッションの労働者化
 6.可視化の圧力と監視の社会的受容

<b>第3章 利益情報の変容をもたらした要因は何か</b>
 1.利益情報の変容と経済社会のグローバリゼーション
 2.会計情報の供給プロセスと影響要素の仮説
  (2-1) 社会的選択
  (2-2) 私的選択
  (2-3) 私的選択の前提としての会計基準の設定
 3.国際会計基準の特徴
  (3-1) 国際会計基準が想定する会計の役割や会計に対する期待の特
      徴
  (3-2) 公正価値評価志向をめぐる議論
  (3-3) 公正価値の重視と原則主義の影響
 4.経済社会のグローバリゼーションがもたらした変化
  (4-1) グローバリゼーションとは
  (4-2) 資本主義社会の変化
 5.経済社会のグローバリゼーションと会計社会の変容についての仮説
  (5-1) 経済社会における主導権争いの一環としての会計基準の統一
      化の加速
  (5-2) 世界統一会計基準のメリット
  (5-3) 短期的投機による利潤追求に役立つ会計情報の生産
  (5-4) 労働市場の変容による「分配可能利益算定志向と付加価値概
      念」の減退
  (5-5) 組織改革投資(IT投資)の重視によるプロジェクトごとの採
      算性の測定と組織の売却に役立つ情報の生産
  (5-6) 資本市場および実物市場の変容と公正価値測定の重視
 6.仮説の検証努力――上場企業に対する意識調査の紹介
  (6-1) 体系仮説の設定と意識調査に対応する仮説への変換
  (6-2) アンケート調査の目的、対象と方法の概要
  (6-3) 一次集計結果から得られた知見

<b>第4章 非金融負債の公正価値測定の含意</b>
 1.IASB の志向
 2.改定案の提案――蓋然性要件の削除と期待値法のみの採用
 3.蓋然性に問題ありとする従来の論拠
 4.会計志向(アプローチ)の違い
 5.市場参加者の取引価格決定要素
 6.非金融負債の公正価値測定が意味するもの
 7.経済社会のグローバリゼーションがもたらした変化
 8.公正価値志向の会計の需要要因

<b>補論1 会計基準統一化の転機の記憶</b>
 1.日本の会計社会が直面した「黒船」
 2.世界統一会計基準導入の長所と短所
  (2-1) 長 所
  (2-2) 短 所
 3.会計基準の世界的統一化の概略
  (3-1) 国際会計基準委員会から国際会計基準審議会へ
  (3-2) 国際会計基準審議会の構成
 4.日本のコンバージェンスに関する取組み
 5.IFRSs 強制適用の可能性の現出
 6.金融クライシスとFASB,IASB および企業会計審議会・ASBJの対
   応
 7.IFRSs の強制適用の回避
 8.エンロンの会計不祥事以降の監査をめぐる規制の強化

<b>補論2 会計と社会との相互干渉</b>
 1.郵政公社の財務会計基準と高速道路の資産評価・会計基準
 2.社会的選択と私的選択との相互干渉
 3.会計と経営との相互干渉
 4.会計と社会との相互干渉
 5.会計と市場との相互干渉
 6.会計と公共財の効率性との相互干渉
 7.研究余滴

<b>第5章 社会企業モデルと会計主体論</b>
 1.企業の社会的責任と説明責任
 2.企業の社会的責任論の概要
  (2-1) 社会的責任の伝統的な基本思想
  (2-2) 企業の社会的責任論争
  (2-3) 経済的責任、法的責任、そして、社会的責任のバランス
  (2-4) 企業市民
 3.会計主体論と社会企業モデル
  (3-1) 3つの会計主体論
  (3-2) 社会企業モデルが想定する会計主体
  (3-3) 「(株)ミツトヨ」のケース――会社設立の目的が社会的貢
      献
 4.企業の主たる構成員がいなくなったらどうなるのか
  (4-1) ハッカーのアメリカン・エレクトリック
  (4-2) 取締役に代わり人工知能が経営
  (4-3) 企業の存続の意義と取締役の役割
  (4-4) ステークホルダーの利害を意識しない説明責任の履行
 5.グローバルな社会的課題とグローバル社会企業
  (5-1) グローバリゼーションとその背景
  (5-2) グローバリゼーション下で企業に生じた新たな課題
  (5-3) グローバルな社会的課題
 6.企業市民モデルと拡張された説明責任

  <u><b>第2部 市場と会計</b></u>

<b>第6章 市場の質と会計社会の対応</b>
 1.会計情報の変容と市場の論理
 2.市場の質とは何か
 3.資本市場における競争の質
 4.資本市場における製品(企業経営)の質
 5.資本市場における情報の質
 6.市場参加者の合理的判断
 7.契約の不完備性と公平性

<b>補論3 会計情報の市場の規制論</b>
 1.財務報告規制の経済学
 2.規制のない市場を支持する議論
  (2-1) エージェンシー理論
  (2-2) 資本市場の競争圧力とシグナリングの誘因
  (2-3) 私的契約の機会を支持する議論
 3.会計情報の市場への規制の擁護論
  (3-1) 市場の失敗
  (3-2) 社会目標としての市場の公平性
  (3-3) 基準設定への成文化アプローチの根拠
 4.規制支持論と自由市場論の比較
  (4-1) 自社情報に関する独占的供給者としての企業
  (4-2) 資本市場の競争圧力
 5.会計規制の不完全性
 6.規制のプロセス
 7.利害関係者の行動の特徴
 8.会計基準の経済的帰結

<b>第7章 機関投資家と市場を非効率にする要因</b>
<b>――解説文献の要約――</b>
 1.情報の主たる利用者としての機関投資家
 2.投資関連業界(ファンド・マネジャー,アナリストなど)の構造問
   題
  (2-1) 長い委託・受託関係の連鎖
  (2-2) 経済的動機
 3.市場の効率性とファンダメンタル分析
  (3-1) ファンダメンタル分析の前提
  (3-2) 効率的市場理論の前提
 4.ファンダメンタル分析に関する諸議論
  (4-1) ファンダメンタル分析がうまくいかない理由
  (4-2) 証券アナリストが予想を誤る要因
  (4-3) 効率的市場理論に基づく投資――リスク尺度の多様化
 5.行動ファイナンス理論と投資の心理学の仮説
  (5-1) 効率的市場仮説と行動ファイナンス理論の前提
  (5-2) ヒューリスティックスに起因するバイアス
  (5-3) フレーム依存性
  (5-4) 非効率的市場仮説の例示
  (5-5) 機関投資家による市場予測
  (5-6) 業績発表への偏った反応
  (5-7) 企業買収と勝者の呪い
  (5-8) 新規株式公開のアンダープライシングとその後のアンダーパ
      フォーマンス
  (5-9) アナリストの利益予測と株式推奨における楽観主義
  (5-10) アナリストの利益予測を悲観的にさせるための経営者の試
       み

<b>第8章 「利益の質」の概念をめぐる諸議論と監査の意義</b>
 1.利益の質をめぐる検討課題
 2.会計情報の供給プロセスとその影響要素
 3.「利益の質」の概念(constructs)の再整理
  (3-1) 社会的選択と利益の質
  (3-2) 私的選択と利益の質
  (3-3) 事業活動の評価と利益の質
 4.非効率な市場と利益の質との関係
  (4-1) 非効率な市場
  (4-2) ヒックス流の利益と非効率な市場――社会的選択
  (4-3) 経営者の行動と市場の非効率――私的選択
  (4-4) 利益の変動と会計操作のメリット
 5.利益の質の概念と監査との関連
  (5-1) 会計情報の供給プロセスと監査の意義
  (5-2) 利益の質の構成要素と監査の意義
 6.利益の質と市場の質との相互関係

<b>補論4 わが国の資本市場の実態および会計の役割に関する検証例</b>
 1.資本市場に関する諸仮説の背景
  (1-1) 資本市場の実態とファンダメンタル分析
  (1-2) ファンダメンタル分析と財務情報
  (1-3) 機関投資家の影響力の増大とエージェンシー関係
 2.アナリストなどに対するアンケート調査の結果 その1
  (2-1) 設定した仮説の概要
  (2-2) 資本市場の実態と機関投資家の役割
  (2-3) 企業評価を行う場合に重視する財務情報・非財務情報
  (2-4) 経済社会のグローバリゼーションと会計の役割や会計に対す
      る期待の変化
  (2-5) 資本市場・企業の経済環境・事業環境・事業戦略の変化と会
      計の役割や会計に対する期待の変化
  (2-6) 利益情報の変容と経済的実質の測定・利益調整の可能性・監
      査の保証水準
  (2-7) 利益情報の質と会計基準の利益測定指向
  (2-8) 利益情報の変容と投資対象会社の経済環境・事業環境・事業
      戦略
  (2-9) IFRSsのわが国への導入の是非および運用の有り方
 3.アナリストなどに対するアンケート調査の結果 その2

<b>第9章 予測要素がもたらす確率的利益測定の概念</b>
 1.確率的測定と利益の質
 2.認識基準と確率的推定
 3.測定基準と確率的推定
 4.会計測定値の意思決定論的な解釈
 5.監査の情報提供機能の再評価
 6.予測要素の影響の増大

  <u><b>第3部 個人・組織と会計</b></u>

<b>第10章 取引における公正性の源泉</b>
 1.取得原価の二面性と合理的な取引決定の条件
 2.消費者保護と中古米国車の購入事例
  (2-1) 消費者保護の意義
  (2-2) 中古米国車の購入事例に見る公正な取引の条件
  (2-3) 信頼感の創出
  (2-4) 即決した原因の考察
  (2-5) 信頼される側の行為
  (2-6) 信頼の創出の功利主義による解釈
  (2-7) 個人の高潔な倫理性と公正な取引
 3.富の追求は終わり,労働は喜びをもたらす
  (3-1) 豊かになると貪欲さは消えるのか
  (3-2) 労働は祝福をもたらす
 4.国家の繁栄の源は悪徳なのか公正なのか
 ――バーナード・マンデヴィルとアダム・スミス
  (4-1) 悪徳は国家の繁栄の源――マンデヴィル
  (4-2) 共感と公正な競争――アダム・スミス
 5.相互性と情報

<b>第11章 個人の行為の判断基準と組織の内部道徳</b>
 1.会計不祥事と企業および個人の道徳(倫理)
 2.善行(善人)とは何か――ロールズの解釈
  (2-1) 善行と悪行
  (2-2) 善行の動機――自尊の存在
  (2-3) 卓越と後悔、恥辱
  (2-4) 罪責と恥辱
 3.美徳倫理
 4.道徳的発達の段階
  (4-1) 権威の道徳性――道徳的発達の第1段階
  (4-2) 連合体の道徳性――道徳的発達の第2段階
  (4-3) 原理の道徳性――道徳的発達の第3段階
  (4-4) 義務以上の道徳性
  (4-5) 経営管理者の道徳性発達
  (4-6) 企業文化および倫理的風土
 5.公共倫理の主張――公共哲学の代表的な所論
  (5-1) 功利主義と形式的功利主義
  (5-2) 自由至上主義
  (5-3) 格差原理の応用
  (5-4) 行為の意志――定言命法
 6.官僚制組織と内部道徳
  (6-1) 基本的人権と自己の行為の制御権の譲渡
  (6-2) 2つの支配関係
  (6-3) 官僚制組織と職位(地位)による支配
  (6-4) 支配システム(組織)の内部道徳
  (6-5) (株)東芝の会計不祥事と内部道徳
 7.道徳的判断規準を持つことの大切さ
  (7-1) 杉原千畝氏の行ったユダヤ人へのビザ発給
  (7-2) 反ユダヤ人主義とユダヤ人の移住の手段としてのカナウス領
      事館での懇請
  (7-3) 杉原千畝氏の人道的判断から学ぶもの

<b>第12章 企業統治と経営者報酬・従業員給料の公正な分配</b>
 1.会計の利害調整機能と労働対価の分配
 2.企業はどのように統治されているのか
  (2-1) 取締役会の位置付けをめぐる3つのモデル
  (2-2) 自然人とは区別される企業(近代的団体行為者)の社会的出
      現
  (2-3) 取締役会と社外取締役の役割
 3.役員報酬の公正性をめぐる議論
  (3-1) 役員報酬と一般従業員の賃金格差
  (3-2) 高額報酬・大きな所得格差を肯定する見解
   (1) バランスを欠いた相互性の容認
   (2) 功績原理と自然権
   (3) 形式的功利主義とインセンティブ契約
  (3-3)高額報酬・大きな所得格差を否定する見解
   (1) ニーズの原理
   (2) 格差原理
  (3-4) 納税という社会貢献
   ――条件次第で賛否が分かれる見解
  (3-5) 新しいバランスを欠いた相互主義
 4.結 論
  (4-1) 報酬が高い理由と社会的正義
  (4-2) コーポレートガバナンス・コードと取締役会の位置付けに関
      する3つのモデル
  (4-3) 会計の利害調整機能
   (1) 会計情報と労使賃金交渉
   (2) 役員報酬の開示の役割
    ――バランスのとれた相互性の発現

<b>第13章 企業の決算行動を決定する要因</b>
 1.ポジティブ・アカウンティング指向の会計研究の特徴
 2.仮説の前提条件と日米の相違
  (2-1) 経営者と従業員との共同利益追求による賃金水準を仲介とす
      る報告利益と経営者報酬との関連性
  (2-2) コーポレートガバナンスと主たるステークホルダー
 3.説明変数の追加
  (3-1) 社会学の理論と会計行動
  (3-2) アカウンティング・ポリシー
 4.社会的選択としての各国の会計基準の相違を決定する要因
 5.私的選択としての企業の決算行動の説明要因の体系
 6.決算行動を説明する社会的・文化的・哲学的要因

<b>第14章 人的資産の認識と測定</b>
 1.リストラ問題と非正規雇用政策の効果の類似性
 2.従来の研究――人的資源の測定方法と勘定記入
  (2-1) 人的資源の測定方法の類型
  (2-2) 人的資源の勘定記入
  (2-3) 貸借対照表、損益計算書上での人的資源に関する取引勘定
 3.いくつかの問題点
  (3-1) 支出原価法――能力開発費の資産性
  (3-2) 効益価値法――人間資産に関する増価・減価
 4.既提案の物的資産の認識・測定に類似する会計処理方法
  (4-1) 物的資産と人的資産
  (4-2) 将来の純利益流列の測定
  (4-3) 人的資産の会計認識の問題点
  (4-4) 勘定記入
 5.提 案
  (5-1) レブ=シュワルツのモデルの適用例
  (5-2) 人的資産関連勘定の認識・測定
  (5-3) 会計処理の解釈
 6.議 論
  (6-1) 会計認識上の問題
  (6-2) 会計測定上の問題
 7.会計の機能・役割との関連

<b>第15章 創造会社法私案と人的資産・労務出資の会計</b>
 1.20 世紀末のわが国の経済状況
 2.ベンチャー企業待望論と創造会社法私案
 3.会計測定対象としての創造会社の特徴
 4.会計測定方法の提案
  (4-1) 金銭出資による設立
  (4-2) 出資金と利益剰余金との区分
  (4-3) 優れた技術・能力を持った創業者の存在
  ――労務出資のオンバランス
  (4-4) 労務出資の相手勘定
  (4-5) 有限の存続期間と株式会社への組織変更
  ――人的資産の償却の効果
  (4-6) 労務出資者の退社
  (4-7) 構成員の追加加入
 5.人的資産と労務出資のオフバランス
 6.人的資産・労務出資の計上と人的資産償却の意義
 参考 パートナーシップ会計,組合会計および合名会社会計の検討

<b>第16章 企業結合会計方法の論点と解決策</b>
<b>――フレッシュスタート法の勧め――</b>
 1.企業結合会計基準の一大転機
 2.株式交換・移転制度の意義
 3.企業結合会計基準に見る企業結合の意味と類型
  (3-1)企業結合の意味
  (3-2)企業結合会計の類型
 4.プーリング法の変遷と論理の検討
  (4-1) プーリング法が意図するそもそもの取引
  (4-2) プーリング法の適用要件の変遷
  (4-3) 持分プーリングの実質的禁止の提案(ワイアット)
  (4-4) プーリング法の要件の細分化
  (4-5) 経済的実質によるプーリング法の要件の再整理
  (4-6) 支配会社の識別不可能性の強調
 5.プーリング法の禁止とフレッシュスタート法の強調
  (5-1) プーリング法の禁止の論理
  (5-2) フレッシュスタート法の根拠と未解決の問題
 6.企業会計審議会「企業結合に係る会計基準」(2003 年)の検討
  (6-1) プーリング識別要件
  (6-2) 企業結合に係る会計基準の論理の検討
 7.企業統合・再編とフレッシュスタート法の是非
  (7-1) 持株会社の新設
  (7-2) 分社化とプッシュダウン会計
  (7-3) 合併と公正価値プーリング法
 8.フレッシュスタート法の論点の検討
  (8-1) 企業結合と「実質的な変容」の意義
  (8-2) フレッシュスタート法は同規模の会社同士の企業結合に限ら
      れるのか
  (8-3) 継続企業においても実質的な会計の基礎の変更があるのでは
      ないか
  (8-4) 相互パーチェス法か公正価値プーリング法か
 9.独自性ある企業結合会計基準の可能性
  (9-1) パーチェス法、プーリング法、フレッシュスタート法の併用
      基準
  (9-2) 「対等の精神」という日本的風土に基づく会計基準は存在す
      るのか
  (9-3) 会計と経営との相互干渉
  (9-4) 公共政策(弱者保護)としてのフレッシュスタート法

<b>第17章 京セラとヤシカの合併――フィールド・スタディ――</b>
 1.救済ではあったが,シナジー効果を期待した積極的異業種合併
 2.合併会社(京セラ)の状況
  (2-1) 会社の沿革
  (2-2) 京セラフィロソフィー
  (2-3) アメーバ経営
  (2-4) 高株価と資金調達
  (2-5) 多角化の推移
 3.被合併会社(ヤシカ)の状況
 4.合併時点の意思決定
  (4-1) 合併の経緯
  (4-2) 合併の背景と期待
  (4-3) 合併時の財務内容
  (4-4) 合併比率の決定と合併会計処理
 5.合併後の評価――ヤシカ・岡谷工場
  (5-1) ヤシカ・岡谷工場の再構築策
  (5-2) 光学機器部門の業績
  (5-3) 従業員の処遇
 6.合併後の評価――京セラおよび全社的視点
  (6-1) シナジー効果はあったか
  (6-2) 人材の確保
  (6-3) 国内生産拠点の追加
  (6-4) 財務上のメリット
  (6-5) 海外生産拠点の確保
  (6-6) 都心にまとまった土地が確保できたこと
 7.成功事例であると結論

<b>第18章 企業結合に関するのれんの会計の論点</b>
 1.償却処理から非償却処理への転換
 2.のれんとその他の無形資産との峻別
 3.従来から検討されている論点
  (3-1) 情報の有用性の識別基準に照らしたのれんの各会計処理の長
      所、短所
  (3-2) のれんの測定属性
  (3-3) 少数株主持分の保護と全部のれん説、買入れのれん説
 4.新たな論点の提起
  (4-1) 「市場の質」と全部のれん説から波及する問題
  (4-2) 企業評価を経営者が行う問題
  (4-3) 経営者の事業戦略とのれんの会計処理
  (4-4) 利益情報の性質と情報利用者の効用関数の変化

<b>第19章 退職給付会計基準の論点</b>
 1.新たな退職給付会計基準の設定
 2.資産・負債,費用・収益の総額・両建て計上方式と純額・差額計上
   方式
  (2-1) 内部引当・外部積立併用の例示
  (2-2) 設例から得られた知見
  (2-3) 資産・負債(費用・収益)の差額計上と両建て計上の論拠
  (2-4) 「支配(統制)」と基金資産の理解
  (2-5) 貸借対照表表示額が意味するもの
  (2-6) 差額計上方式と両建て計上方式の比較の結論
 3.現在価値計算における割引率とリスクの考慮
  (3-1) 負債の現在価値とリスクの一般論
  (3-2) 退職給付会計基準と無リスク利子率
  (3-3) デフォルト・リスクと割引率
  (3-4) 資産の運用利回りと割引率
 4.発生給付評価方式の意義と影響
  (4-1) 発生給付評価方式と期末要支給額方式との関係
  (4-2) 退職給付の発生時の従業員による受領
  (4-3) 予測単位積増―定額制方式と予測単位積増―給与・支給倍率
      加味方式の比較
 5.数理計算上の差異の処理方法
  (5-1) 即時認識方式の論拠
  (5-2) 遅延認識方式の論拠
  (5-3) 回廊アプローチ
  (5-4) 重要性基準と回廊方式との関係

  <u><b>第4部 環境と会計</b></u>

<b>第20章 パリ協定前文の願意と会計責任の拡張</b>
 1.環境問題をめぐる3 つの対立軸
 2.温暖化対策の合意成立
 3.前文の願意――ロールズの「公正としての正義―格差原理」の想起
 4.科学・技術開発による解決
 ――持続可能な発展の含意は何か
 5.自主的目標設定・業績測定,社会企業,トリプル・ボトムライン
  (5-1) 各国の自主的目標設定・業績測定
  (5-2) シングル・ボトムラインとトリプル・ボトムライン
  (5-3) 経済的パフォーマンス、自然環境への影響、社会的インパク
      トの3つの指標の理想的関係
  (5-4) 経済的パフォーマンス最大化が目的関数、自然環境への影響
      と社会的インパクトの2つの指標が制約式
  (5-5) 自然環境への影響と社会的インパクトの2つの指標のポジテ
      ィブ量最大化が目的関数、経済的パフォーマンスが制約条件
      の会社経営は成立するのか
 6.「統合報告」の思想は経済的パフォーマンス以外の目標を掲げる企
   業を促進するか
  (6-1) 6つの資本と価値創造プロセス
  (6-2) なぜ統合報告の情報は主として財務資本のステークホルダー
      に有用なのか
 7.経済的パフォーマンス最大化目標を転換させる手段としての会計責
  任の拡張
 8.「豊かさ」の別指向――環境問題は公共社会の有り方の問題でもあ
  る

<b>第21章 持続可能な発展と会計の転換</b>
 1.持続可能な発展の問題
 2.外部性と共有資源問題
 3.公共政策の概観
 4.環境マネジメント
 5.環境保全コストと環境保全努力に対応する効果の測定
  (5-1) 環境会計の測定対象と3つの測定要素
  (5-2) 環境保全コストの測定
  (5-3) 環境保全効果
  (5-4) 環境保全対策に伴う経済的効果
  (5-5) 環境保全コストと環境保全努力に対応する効果の測定上の留
      意点
 6.認識の転換と社会会計モデル
 7.コストとベネフィット,費用と収益の意味するもの
  (7-1) 企業と顧客・消費者
  (7-2) 企業と従業員
  (7-3) 企業と地球環境
  (7-4) 企業と地域環境・住民社会
  (7-5) 企業と政府
 8.ミクロ社会会計の再認識と利害関係者への付加価値の分配

<b>第22章 温室効果ガス排出量取引をめぐる会計上の論点</b>
 1.京都メカニズム第1 約束期間の始まりと日本の状況
 2.資産の特質を中心とする排出量取引会計の検討
 ――収益・費用アプローチの残像
  (2-1) 「排出削減における会計および認定問題研究委員会」報告
  (2-2) 経済産業省「産業構造審議会」案から企業会計基準委員会実
      務対応報告第15号へ
 3.排出クレジットの法的性質の検討
  (3-1) GISPRI「京都メカニズム促進のための法的論点等に係る調
      査研究委員会」報告
  (3-2) 経済産業省「産業構造審議会」案
  (3-3) 「京都議定書に基づく国別登録簿の在り方に関する検討会」
      報告
 4.排出クレジット引渡義務を中心とする会計処理
 ――資産・負債アプローチの適用
  (4-1) フランス会計処理案の概要および特徴
  (4-2) イギリス会計処理案の概要および特徴
  (4-3) 国際財務報告解釈委員会解釈指針(IFRIC)第3号「排出
      権」の概要
 5.設例によるGISPRI 案の拡張とIFRIC 案の会計処理の例示
  (5-1) GISPRI案の拡張
  (5-2) IFRIC案の代替的会計処理方法
 6.環境省「クレジット会計処理検討委員会」案
 7.未解決の問題の解釈と展望――4 タイプの会計処理方法の意義
  (7-1) コスト・オブ・グッズの認識・測定とGISPRI拡張案・オフ
      バランス案
  (7-2) 会社(事業所)と国との契約と排出削減義務当初認識法
  (7-3) バッズの認識・測定とCO2の排出費用認識法

<b>補論5 国際財務報告解釈委員会解釈指針第3 号「排出権」の検討</b>
 1.解釈指針第3 号「排出権」の公開草案と成案
 2.設例の前提の変更と会計処理
  (2-1) 設例の前提
  (2-2) 無形資産に関する原則的処理方法
  (2-3) 無形資産に関する代替的処理方法(再評価モデル)
  (2-4) 収益と費用の対応の検討
 3.成案の結論の検討
  (3-1) 論点と結論
  (3-2) 資産と負債の両建て処理の根拠
  (3-3) 排出枠の金融資産としての把握の否定
  (3-4) 排出枠は償却すべきか
  (3-5) 負債はいつ認識され、どのように測定すべきか
  (3-6) 政府補助金について
  (3-7) ペナルティ
  (3-8) 減 損

<b>補論6 試行排出量取引スキームにおける会計上の取扱いの検討</b>
 1.わが国の排出量取引の実験――試行排出量取引スキームの開始
 2.実務対応報告第15 号改定の検討経緯
 3.検討にあたっての基本方針と主たる課題
  (3-1) IASBの検討状況とEUの現状
  (3-2) ASBJの基本方針と主たる課題
 4.事前交付により取得した排出枠の会計処理に関するASBJ の提案
 5.K 案の考え方
 6.設例によるA 案とK 案の違い
 7.参加企業の最終目標年度一括処理
  (7-1) 事後清算により無償で排出枠を取得する場合の会計処理に
      「実績が未確定」の視点を拡張
  (7-2) 設例に関するA案の仕訳の変更
  (7-3) 排出枠不足が確実に見込まれる場合の費用処理の削除
  (7-4) 設例に関する仕訳:原則
 8.課 題

<b>補論7 京都議定書第1 約束期間後の空白問題の危惧</b>
<b>――東日本大震災前(2010―2011年3月)の日本――</b>
 1.環境問題に対処する姿勢
 2.排出クレジットの発生と排出既得権の人為的設定
 3.京都メカニズム継続に対する憂慮すべき状況と公共哲学の復権
 4.空白問題と共通善の維持
 5.「共通善」の心得と経済産業省「二国間オフセット・クレジット制
   度」および東京都「総量削減義務と排出量取引制度」の登場

<b>補論8 京都メカニズム脱退後のJCM の意義</b>
<b>――東日本大震災後(2014年3月)の日本――</b>
 1.グランド・デザインの重要性
 2.JCM プロジェクトの案件――発展途上国のエネルギー対策の支援
 3.外部性と温室効果ガス排出防止対策
 4.将来の日本国の有り方・目標という観点

<b>第23章 資産除去債務をめぐる会計上の論点</b>
 1.資産除去債務の会計基準設定の経緯
 2.資産除去債務の認識の範囲
  (2-1) 資産除去債務の定義の留意点
  (2-2) 特別修繕引当金との関係
  (2-3) 法律上の義務に準ずる債務の解釈
 3.資産除去債務の測定
  (3-1) 資産除去債務専門委員会と引当金専門委員会の共通検討課題
  (3-2) 分散リスクの測定について
  (3-3) 信用リスク・プレミアムを加算するのか否か
 4.時間経過に伴う利子費用の意義
 5.資産・負債両建て計上と引当金処理の意義

  <u><b>第5部 公共・政府と会計</b></u>

<b>第24章 企業の海外戦略と国民の経済的繁栄</b>
 1.サントリー社のビーム社買収
 2.経済社会の繁栄度の指標――国民経済計算とわが国の現状
  (2-1) GDPの意味――財貨・サービスの産出と需要、要素所得
  (2-2) 国民所得とGDP(国民生産)との概念の違い
  (2-3) 社会負担と所得の再分配
  (2-4) 海外取引と経常対外収支
 3.「わが国の企業(日系企業)」とは何か
 4.自由の尊重と市場経済重視
 5.カール・ポラニーの「自己調整的市場」に関する洞察
  (5-1) 19世紀の自己調整的市場の進展と20世紀初頭の反動の原因
  (5-2) 現在も妥当とする自己調整的市場のユートピア性
  (5-3) 自己調整的市場の特徴
  (5-4) 労働、土地(自然資産)、貨幣の擬制商品性
 6.経営者の使命は何か

<b>第25章 納税行為の意義</b>
 1.わが国財務状況の確認と増税の必要性
 2.租税による歳入と公的支出に見る国の役割
  (2-1) 租税の2つの機能
  (2-2) 公的支出の内容
 3.社会的正義の諸説再述
 4.公私分割と社会的正義の諸説
  (4-1) 功利主義による見解について
  (4-2) 自由至上主義による見解について
  (4-3) 平等主義的自由主義による見解について
  (4-4) 「自律」と自由至上主義からの反論
 5.納税行為をどのように理解して財政健全化に対処するべきか

<b>第26章 公共社会とディスクロージャー</b>
 1.ディスクロージャーに関する研究の役割
 2.ディスクロージャー課題の例示
 3.分析の手順――利害に関する構成要素の特定
 4.情報(ディスクロージャー)の利害への影響の検討
  (4-1) 絶望的な巨大隕石の衝突
  (4-2) ゴジラの出現
  (4-3) 国債価格および円通貨の暴落
  (4-4) 地震の発生と地盤情報
  (4-5) 医療サービスへの不満(訴訟)と医師の階層別モデル賃金
 5.キーとなる概念,観点,論理
 6.企業行動に関連した研究課題設定の例示

初出文献一覧
索 引

著者プロフィール

黒川 行治(クロカワ ユキハル)

黒川 行治
慶應義塾大学商学部教授
1975年慶應義塾大学工学部管理工学科卒業、77年同大学大学院工学研究科修士課程修了、79年同大学大学院工学研究科博士課程中途退学(商学部助手任用のため)、1982年同大学院商学研究科博士課程単位取得退学、1999年慶應義塾大学博士(商学)。1979年慶應義塾大学商学部助手、助教授を経て1992年より現職。この間、1986~1988年、米国イリノイ大学訪問研究員。
日本ディスクロージャー研究学会会長、日本経営分析学会副会長、日本会計研究学会評議員などを歴任。さらに、金融庁「企業会計審議会」委員、国土交通省「道路資産評価・会計基準委員会」委員長、財務省「財政制度等審議会財政制度分科会」委員兼「法制・公会計部会」部会長、(一財)地球産業文化研究所「京都メカニズム促進のための会計・税務論点調査委員会」委員長、企業会計基準委員会「排出権取引専門委員会」委員、「公認会計士第2次試験」試験委員などを歴任。
著書に、『政府と非営利組織の会計(体系現代会計学9)』(編著、中央経済社、2012年)、『利益情…

上記内容は本書刊行時のものです。