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認知臨床心理学の父 ジョージ・ケリーを読む フェイ・フランセラ(著) - 北大路書房
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認知臨床心理学の父 ジョージ・ケリーを読む (ニンチリンショウシンリガクノチチジョージケリーヲヨム) パーソナル・コンストラクト理論への招待 (パーソナルコンストラクトリロンヘノショウタイ)
原書: GEORGE KELLY

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発行:北大路書房
四六判
360ページ
並製
価格 3,000円+税
ISBN
978-4-7628-2956-7   COPY
ISBN 13
9784762829567   COPY
ISBN 10h
4-7628-2956-0   COPY
ISBN 10
4762829560   COPY
出版者記号
7628   COPY
Cコード
C1011  
1:教養 0:単行本 11:心理(学)
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2017年2月
書店発売日
登録日
2017年1月12日
最終更新日
2017年2月17日
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紹介

精神分析と行動主義が心理学で隆盛を極めた1950年代,G.A.ケリー(1905-1967)は,認知と感情,そして行動を分割せずに「統合的」にとらえる枠組みを提唱した。認知に焦点を当てた各種の心理療法のほか,パーソナリティ心理学,ナラティヴ心理学などに強い影響を与えた,彼のパーソナル・コンストラクト理論とは何か,その誕生と展開を丹念にたどり,現代的な意義を浮き彫りにする。

* ジョージ・A・ケリーの主著“The Psychology of PERSONAL CONSTRUCTS VOLUME ONE: A Theory of Personality” は,小社から『パーソナル・コンストラクトの心理学【第1巻】: 理論とパーソナリティ』として発刊しております。
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784762829130

◆主な目次
監訳者まえがき
序文
●第1部 ジョージ・ケリーの人生
第1章 ケリーの遍歴
第2章 ケリーの複雑さ
●第2部 理論への貢献
第3章 心理学の理論
第4章 心理療法の理論
●第3部 方法への貢献
第5章 心理測定法
第6章 心理療法の技法
●第4部 ジョージ・ケリーの評価と影響力
第7章 批判と反論
第8章 ケリーが与えた影響
監訳者あとがき

目次

 監訳者まえがき
 序文
 謝辞

●第1部 ジョージ・ケリーの人生
第1章 ケリーの遍歴
 第1節 多次元的な人物
 第2節 証拠や証言とその解釈
 第3節 幼少期の生活と教育
 第4節 大学時代
 第5節 大学院時代
 第6節 教員時代
 第7節 人と業績

第2章 ケリーの複雑さ
 第1節 ケリーと社会的相互作用
 第2節 ケリー自身の理論から見たケリー


●第2部 理論への貢献
第3章 心理学の理論
 第1節 パーソナル・コンストラクト心理学の哲学
 第2節 全体としての人間
 第3節 明確な人間モデル
 第4節 能動的存在としての人間
 第5節 動機づけという概念の放棄
 第6節 弁証法の強調
 第7節 予期的な行動
 第8節 最小限の価値観
 第9節 リフレクシヴな理論
 まとめ

第4章 心理療法の理論
 第1節 医学モデルに対するオルタナティヴ
 第2節 「診断」の性質
 第3節 臨床的コンストラクトの下位システム
 第4節 心理療法のプロセスと変化の性質
 第5節 セラピストに求められるスキル
 第6節 クライエントとの関係性
 第7節 心理療法の目標
 第8節 個人史の位置づけ
 第9節 文化的視点から見た価値
 第10節 抵抗の性質
 第11節 カウンセリングと心理療法との区別
 まとめ

●第3部 方法への貢献
第5章 心理測定法
 第1節 仕事のツールを作る自由
 第2節 心理測定学の束縛の打破
 第3節 個人にとっての意味の測定:レパートリー・グリッド
 第4節 数字を用いないアセスメント

第6章 心理療法の技法
 第1節 治療プロセスを補助する方法
 第2節 再構築のプロセスを補助する方法
 第3節 特定の行動へのアプローチ
 まとめ

●第4部 ジョージ・ケリーの評価と影響力
第7章 批判と反論
 第1節 論争点
 第2節 パーソナル・コンストラクト理論の有用性
 第3節 情動と感情へのアプローチ
 第4節 パーソナル・コンストラクト理論は認知理論か?
 第5節 社会の役割
 第6節 子どもの発達
 第7節 パーソナル・コンストラクト理論と構成主義
 まとめ

第8章 ケリーが与えた影響
 第1節 個人としての影響
 第2節 科学界におけるケリーの理論と哲学
 第3節 心理療法のアプローチへの影響
 第4節 心理療法の実践への影響
 第5節 方法と実践の発展
 第6節 特定の心理的問題への応用
 まとめ


 監訳者あとがき
 付録1 ジョージ・A・ケリーの年表
 付録2 レパートリー・グリッドの見本
 文献
 索引

前書きなど

◆監訳者あとがき(一部抜粋)
 心理学は、その歴史をとおして、認知・行動・感情というトライアングル・モデルで「心」を理解しようとしてきた。心理療法に当てはめると、行動療法では行動を制御し、認知療法などは認知を修正し、人間性心理療法では広義の感情の次元に焦点化することでアプローチしてきた。こうした「心」のモデルは、歴史をとおして推進され、今日の心理学でも、行動、認知、感情の分割はますます強化され、自明のこととなっている。
 ケリーは、半世紀以上も前に、この三分割モデルに異議を唱え、そのオルタナティヴとして、「パーソナル・コンストラクト」を提唱した。しかし、現在もなお、この三分割モデルは支配的であり、それゆえに、パーソナル・コンストラクトも、それが認知的か、感情的か、行動的かという分割モデルで捉えられることが多かった。つまり、今日の心理学でさえ、ケリーが提唱したパーソナル・コンストラクト心理学を十分に理解できるほどには発達していない。
 たしかに、コンストラクトには、明らかに認知的な要素がある。そのため、ケリーの貢献の一部にすぎないことを踏まえたうえで、「認知心理学の先駆者」や「認知臨床心理学の父」と呼ぶことに異論はない。しかし、ケリーのアイデアの本質は、後に展開される認知心理学、パーソナリティ心理学、認知行動療法、ナラティヴ・アプローチの考え方を、すでに洗練された形で先取りしたものであったと言ったほうが正確であろう。
 認知行動療法やナラティヴ・プラクティスの一部について、「認知の修正」や「物語の書き直し」という発想に見るセラピストの特権性や先験的な価値観が問題視されることがある。だが、ケリーが強調したのは、再構成(reconstruct)であり、再理解(reconstruing)であって、正したり直したりすることではない。それは、あくまでオルタナティヴ、すなわち代わりになり得るものを手に入れることであり、世界とのかかわり方、あるいは人生の選択肢を増やすことである。
 コンストラクトとは、人間に関して言えば、認知・行動・感情にまたがり、それらが統合されたものである。リアルタイムに組織化される認知・行動・情動の総体といってもよい(菅村、2002)。有機体のふるまいを方向づけるプロセスを指している。伝統的な心理学の視点に依って立つ限り、ケリーが言わんとしていたことを正しく理解し、評価することは難しい。
 ケリーは、パーソナル・コンストラクト理論を指して、「神が人間の目をとおして現実を見るために人間の眼鏡をかける試み」だと話したことがあるようである。これはある意味で傲慢な発言ともとられるだろうし、躁うつ的な研究者特有の一時的な誇大妄想と見ることもできるだろう。牧師の父をもつ敬虔なキリスト教徒であるケリーが、このような発言をしたことは興味深い。
 ごく最近になって、人工知能研究が飛躍的に進展した。科学が神の領域に近づいたと言う者もいるほどである。四半世紀以上前に、人工知能の研究チームがケリーの理論を詳細に検証したことがある。それは非常に有益な知見を生み出したが、あと一歩のところで頓挫した。今日の人工知能の進歩は、ディープ・ラーニングによるところが少なくないが、その観点からパーソナル・コンストラクト理論に今一度注目すると、「人間の眼鏡をかけた人工知能」を作れる可能性があるような気がしてならない。ケリーの理論が正当に評価されるのは、もう少し先の未来の話なのかもしれない。

著者プロフィール

フェイ・フランセラ  (フランセラ フェイ)  (

フェイ・フランセラ(Fay Fransella)
 1925年10月1日にイギリスに生まれる。
 1971年には,“Inquiring Man: Theory of Personal Constructs”(Routledge)を出版。1977年には,パーソナル・コンストラクト心理学の国際会議をオックスフォードで開催し,それ以降,1 年おきに続けられている。
 1980年には,University of London の医学部に上級講師として赴き,臨床心理学分野の名誉教授に選出される栄誉も受ける。1981年には,ジョージ・ケリーの理論と実践を普及させることを目的としたパーソナル・コンストラクト心理学センターを設立し,会長を務める。
 2011年1月14日逝去。

菅村 玄二  (スガムラ ゲンジ)  (監訳

菅村 玄二(すがむら・げんじ)
関西大学文学部准教授。早稲田大学大学院で修士(人間科学)を取得後,渡米。ノーステキサス大学やセイブルック大学院で,構成主義の泰斗である故マイケル・J・マホーニー博士らに心理学における身体性の問題とその臨床応用を学ぶ。帰国後,早大大学院で博士(文学)を取得。関西大学文学部助教を経て2010年より現職。
邦語のおもな著作としては,『身体心理学』(川島書店,2002年),『身体性・コミュニケーション・こころ』(共立出版,2007年),『エマージェンス人間科学』(北大路書房,2007年),『ナラティヴと心理療法』(金剛出版,2008年),『ロジャーズ』(日本評論社,2015年),『マインドフルネス:基礎と実践』(日本評論社,2016年),『新版 身体心理学』(川島書店,2016年)などの分担執筆,共著の『カウンセリングのエチュード:反射・共感・構成主義』(遠見書房,2010年),『認知行動療法と構成主義心理療法』(金剛出版,2008年),『マインドフルネス瞑想ガイド』(北大路書房,2013年)などの翻訳がある。

上記内容は本書刊行時のものです。