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はじめてみよう!これからの部落問題学習 ひょうご部落解放・人権研究所(編) - 解放出版社
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はじめてみよう!これからの部落問題学習 (ハジメテミヨウコレカラノブラクモンダイガクシュウ) 小学校、中学校、高校のプログラム (ショウガッコウチュウガッコウコウコウノプログラム)

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発行:解放出版社
B5判
縦257mm 横182mm 厚さ11mm
重さ 420g
169ページ
並製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-7592-2164-0   COPY
ISBN 13
9784759221640   COPY
ISBN 10h
4-7592-2164-6   COPY
ISBN 10
4759221646   COPY
出版者記号
7592   COPY
Cコード
C0037  
0:一般 0:単行本 37:教育
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2017年3月
書店発売日
登録日
2017年3月10日
最終更新日
2022年10月11日
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書評掲載情報

2017-05-15 解放新聞  第2810号  全国版
評者: 阿久澤麻理子(大阪市立大学大学院教授)
2017-04-25 月刊「同和教育」であい  2017年4月号/No.661
評者: 受信送信欄 本の紹介
2017-04-23 神戸新聞
評者: 「ひょうご選書」欄 評者=宮沢之祐
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重版情報

4刷 出来予定日: 2023-04-30
3刷 出来予定日: 2020-08-20
2刷 出来予定日: 2018-01-30
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紹介

被差別部落の「いま」をとらえ、血筋幻想にとらわれず、誤解や偏見を批判できる力を獲得することをめざした新しい部落問題学習のプログラムを具体的に示す。高校ではアクティブ・ラーニングを用いた指導案を紹介する。

目次

はじめに

第1部 同和教育の意義と課題

 Ⅰ なぜ部落問題を教えるのか
  1 これまでの同和教育は何をしてきたのか
   大学院生からの質問/部落に対する異質視/暗い、貧しい、閉鎖的

  2 なぜ部落問題を教えるのか
   忌避される部落問題/見えにくい部落差別/差別に加担する側に立たないために/新たな人との出会い/なぜ部落問題を学ぶのか/人権の語られ方

 Ⅱ 部落問題の何を伝えるのか
  1 部落とは何か、部落民とは誰なのか
   部落の定義/何が部落となったのか/血筋の違いは差別の根拠ではない/〈われわれとは違う〉という異質視

  2 部落の多様性
   部落はどこにあるのか/同和地区人口・世帯と同和関係人口・世帯/同和地区の分布と世帯数規模/多様な産業

  3 高度経済成長期における就労の変化
   高度経済成長と労働需要の増大/安定化する若年層の就労/就労の安定化傾向

  4 1990年代以降の新たな問題の顕在化
   就労の安定化傾向の鈍化/経済的安定層の流出/救貧事業としての同和対策事業/流入人口の性格

  5 差別事象の現状
   増え続ける部落外出身者との結婚/なぜ部落外出身者との結婚が増えているのか/就職差別の現状/増加する顔の見えない差別事象/「変化」と「いま」を教える教育

 Ⅲ 部落の歴史を学ぶ、部落の歴史から学ぶ
  1 なぜ、部落の歴史を学ぶのか?

  2 中世
   村と都市の自治―異質な他者への差別と排除を前提として/庭園づくりで活躍した河原者―「穢多」の初出と被差別民が担った文化/各地で争う戦国大名―戦国大名と被差別民

  3 近世
   身分制社会での暮らし―被差別身分の担った役目/島原・天草一揆と宗門改め―宗門人別帳によって確立された身分制度/国学と蘭学―『解体新書』と被差別身分/諸藩の改革―抵抗運動としての渋染一揆/攘夷の失敗と倒幕運動―攘夷戦争と被差別身分

  4 近現代
   古い身分制度の廃止―「解放令」と「解放令」反対一揆/米騒動と政党内閣の成立―部落の窮乏化と反発/解放を求めて立ち上がる人々―全国水平社と水平社運動/新憲法の制定―日本国憲法に明記された部落問題/同和対策審議会答申―「国民的課題」としての部落問題

第2部 小学校、中学校、高校のプログラム

 Ⅳ 小学校―同和教育を核にした学級づくり
  1 小学校編を執筆するにあたって
   「部落」を語る必要性/現場に寄り添い、応援するプログラム/人と人とをつなぐネットワーク

  2 同和教育発の学級づくり
   子どもたちとつながる交換ノート/核を据えた学級づくり―子どもの現実を深く知るための家庭訪問/保護者とつながる学級通信

  3 小学校における部落問題学習の進め方
   江戸時代を生きた人々―新しい学問を切り開く/食肉の仕事をとおして/命をつなぐ
  4 まとめ

 Ⅴ 中学校―社会科の教科書を使って
  1 中学校現場の悩み―問題意識はあるのだが…
   「部落差別は過去のこと?」―教職員の世代交代のなかで/差別は、社会のあり方、自分の生き方に関わる問題―教職員の関心の高い人権課題/「時間がない」「資料がない」「地区がない」―部落問題学習を妨げるもの

  2 中学校の歴史教科書を使った「人権の歴史」(『新編 新しい社会 歴史』〈東京書籍、平成28年度、中学校〉を使って)
   河原者たちの優れた技術―「ケガレ(穢れ)」の差別意識/江戸時代、ピラミッド型の身分制度はなかった/1871年8月28日太政官布告(いわゆる「解放令」)と部落差別/人の世に熱あれ、人間に光あれ/個人の尊重(個人の尊厳)―日本国憲法の制定/部落差別の撤廃は、国民的な課題

  3 歴史を学ぶのは?―今を考え、未来を語ろう

 Ⅵ 高校―アクティブ・ラーニングの手法を用いた部落問題学習の進め方
  1 高校現場がかかえる問題点
   時間がたりない/部落問題学習は「特別な授業」/部落差別の解決方法は愛、やさしさ、思いやり?/教員(指導者)に学習経験がない/リアリティ(現実感)の希薄さ

  2 参加型(参加体験型)学習の広がりは何だったのか

  3 アクティブ・ラーニング型学習の必要性
    アクティブ・ラーニングとは

  4 アクティブ・ラーニングを用いた部落問題学習―兵庫県立加古川東高校における実践例をもとに
   はじめに/「ジグソー法」とは何か

指導案A 部落の歴史 1(中世~江戸時代)―差別の源流を探る
教員用マニュアルA/教員用レジュメA/生徒用プリントA/記録シートA/生徒用レジュメA/チェックテストA

指導案B 部落の歴史 2(明治~現代)
教員用マニュアルB/生徒用レジュメB/記録シートB/チェックテストB

指導案C 発展的学習 部落差別をなくすために必要なもの(こと)を明らかにする
教員用マニュアルC/記録シートC/提言シートC

  5 教員も能動的学びを

コラム
1 部落差別はもうなくなっている?
2 「寝た子を起こすな」論とは
3 結婚差別―私の場合
4 「差別をしない」教育ではなく、「差別をなくす」教育を
5 部落と同和地区は、どう違うのか
6 部落差別が解消した社会とは?
7 地域教材を活用しよう
8 「気にしない」から「つながる」へ
9 「どこに部落があるの?」との質問にどう答えるか
10 立場を自覚していない部落の子どもをどう支えるか
11 血筋が違う? 自分の祖先をたどってみよう
12 部落は閉鎖的? 親に居住歴を聞いてみよう
13 「部落差別はもうなくなっているのだから、取り組まなくていい」という当事者に出会ったときの対応は?
14 逆差別って何?
15 少数者に対するステレオタイプ
16 部落に近親結婚は多いのか?

用語解説
学習をさらに深めるための図書紹介

前書きなど

はじめに

 関西のいくつかの自治体で、ここ数年に実施された人権意識調査によると、高校までに差別や人権に関する教育を受けたことがあるという人は、50歳以上に比べて50歳未満の年齢層で急増している。つまり、50歳の人が小中高生であった1970年代後半~80年代前半以降、学校で人権教育が広く行われるようになったのである。そして、その教育でどのようなことを習ったのかという設問では、やはり部落問題が多いのであるが、年齢別でみると、部落問題を習ったという人は、30歳代、40歳代に比べて、20歳代で大幅に減少している。
 このように、人権教育は広く行われるようになったのであるが、近年、人権教育で部落問題を扱うことが少なくなってきているのである。同和対策事業に関する法律が終了した2002年以降、人権教育で部落問題が扱われなくなったものと考えられる。
 そして、人権教育における部落問題学習の後退の時期と団塊の世代の教員が大量に退職しはじめた時期が重なってしまったため、それまでの同和教育の実践の蓄積が若い教員たちに受け継がれず、部落問題をどう教えていいのかわからないという若い教員が多くなっているという。
 もし、部落差別が解消し、部落問題が解決済みの過去の課題となってしまったのであれば、上記の傾向も問題ではないが、部落差別はいまなお存在し、現代の大きな社会問題の一つであることに変わりがない。また、児童や生徒たちが家庭や学校などにおいて、家族や友人との会話のなかで、被差別部落(以下、部落という)に対する誤解や偏見に根差した発言に接することもあるだろうし、現にインターネットの世界では、部落や部落民に関して事実にもとづかない情報が飛び交っている。こうしたなかで、部落問題に関する正しい知識をもたなければ、それらの誤解や偏見を批判することはできないであろうし、それどころか、それらの捏造された情報をたやすく受け入れてしまうかもしれない。それゆえ、現在の小中高校生が部落問題を学ぶ意義はけっして小さくないどころか、かえって大きくなってきているともいえるのである。
 本書はこれから小中高で児童・生徒に部落問題を教えていこうと考えている教員の方々に、授業を進めていくうえでのさまざまな手がかりを提供しようという目的のもとに編まれたものである。2014年4月、一般社団法人ひょうご部落解放・人権研究所の指定研究「『これからの部落問題』学習プログラム作成研究事業」として、これまで小中高、そして大学で同和教育に取り組んできた教員6名に、部落解放同盟兵庫県連合会事務局員1名を加えた7名による研究会が立ち上げられ、2016年9月まで24回にわたる研究会がつづけられた。そこでの成果を取りまとめたものが本書である。
 本書の編集にあたっては、つぎの3点を基本方針とした。
 第1に、これまでの同和教育のなかには、部落差別の厳しさを強調するあまり、部落に対して悲惨・惨めといったイメージを児童・生徒にもたせてしまうという傾向が一部にみられた。また、抽象的に部落差別の厳しさを強調することは、それだけ部落が差別されるのだったら、部落というところはよほど周囲とは違ったところなのだろうという異質視を児童・生徒にもたせてしまった点も指摘できる。本書では、1960年代以降の部落の生活実態の変化と、いま現在の部落の実態を正確に児童・生徒に伝えるという語り方に努めた。
 第2に、これまでの同和教育では前近代の被差別身分の歴史を中心に語ることが多く、前近代から近代への変化、近代から現在に至る部落の歴史があまり扱われなかった。そのため、現在の部落は江戸時代の被差別身分の人たちの子孫が代々固まって住んでいるところだという「部落民=血筋の違う人たち」という血筋幻想を児童・生徒にもたせてしまったのではないか。本書では、血筋は部落差別の根拠になっていないことを示し、血筋幻想にとらわれない、部落の歴史の語り方に努めた。
 第3に、部落に対する誤解や偏見は根強く存在しており、日常生活のなかでこうした内容の発言や情報に接したとき、部落問題に関する正しい知識をもっていなければ、それを批判することはできないし、そうした誤解や偏見を容易に受け入れてしまう恐れもある。そのため、部落に対する誤解や偏見を批判できる力を児童・生徒につける教育の進め方を提示することに努めた。いわゆる「寝た子を起こすな」という主張は依然として根強いが、こうした主張は、部落に対する誤解や偏見が現に存在する以上、部落差別の再生産につながるだけで、百害あって一利もないのである。部落問題を教え、児童・生徒に部落に対する誤解や偏見を批判できる力をつけなければ、部落差別の再生産を断ち切ることはできないのである。
 本書は第1部と第2部からなる。第1部では上記の3つの基本方針を具体化し、さまざまなデータを用いて、児童・生徒に部落問題をどう語っていけばいいのか、その方向を示すことに努めた。そして、第2部では小中高それぞれで同和教育に取り組んできた現役教員が各自のこれまでの実践にもとづいた学習プログラムについて詳述することに努めた。そのため、学習プログラムは、必ずしも上記の3つの基本方針を具体化した内容にはなっていない。3つの基本方針は、本書の各執筆者がこれから取り組むべき方向であり、それは第1部で具体化されているが、第2部で示したプログラムは、これまでの実践をもとに組み立てられているので、学習プログラムにおける3つの基本方針の具体化は、私たち執筆者の今後の実践において実現していくべき課題である。したがって、第1部と第2部は、それぞれ独立したものとして読んでいただきたい。
 実践編である第2部は、小中高それぞれの学習プログラムとして構成されているが、各プログラムに重複している部分もみられる。これは筆者である各教員がそれぞれ自分の問題意識を語った結果である。そのため、たとえば中学校の学習プログラムだけに目を通すという読み方もできるようになっているが、小中高と通して読んでいただければ、より一層理解が進むものと考える。
 また、本書では16のコラムを掲載した。これらは同和教育を進めていくなかで、教える側がもつことが多い困難や疑問に答えるように執筆した。部落問題の理解を深めるとともに、教材としても活用していただきたい。
 学習プログラムは、経験豊富な教員のこれまでの実践にもとづいている。より効果的な同和教育にこれから取り組もうと考えておられる教員の方々は、これをそのまま自らの授業実践に入れ込むというのも、ひとつの方法ではあるが、学習プログラムの一部だけを活用したり、小中高校の各学習プログラムからそれぞれ取り出した部分を組み合わせて活用したり、それにコラムを加えるなり、多様な方法で本書の学習プログラムを利用していただきたい。
 2016年12月、部落差別解消推進法が成立した。この第5条には、国と地方公共団体は必要な教育と啓発を行うとある。しかし、部落の実態を具体的に示すことなく、ただ部落差別の厳しさを強調するだけなら、部落差別の解消を推進することにはならないであろう。同和教育の再出発に向けて、第1部の基本方針の具体化をベースにして、小中高校それぞれの学習プログラムを参考にしながら、各地で授業実践が始められることを期待している。

2017年2月「これからの部落問題」学習プログラム作成研究会

著者プロフィール

ひょうご部落解放・人権研究所  (ヒョウゴブラクカイホウジンケンケンキュウショ)  (

部落問題と人権問題の歴史や文化、教育に関する調査研究並びに教育啓発活動を行い、部落問題と人権問題のすみやかな解決に寄与することを目的とし、調査・研究、啓発、出版などの事業を行う一般社団法人。

上記内容は本書刊行時のものです。