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梅崎春生研究
- 書店発売日
- 2018年2月5日
- 登録日
- 2017年12月19日
- 最終更新日
- 2018年1月30日
紹介
日本の戦後の世相を皮肉な視線で捉え続けた作家・梅崎春生の社会諷刺の方法を実証的に探究。
日中戦争下で執筆された習作「微生」からデビュー作「桜島」を経て遺作「幻化」に至るまでの諸作品を取り上げ、〈戦争〉〈偽者〉〈戦後社会〉をキーワードに、梅崎文学の同時代性とモチーフを考察する。
日米関係や米軍基地問題、精神の病(うつ状態)など、梅崎が小説で取り上げたテーマは、21世紀に入って十数年を経た現在においてなお、解決すべき重要な課題として日本社会に残されている。
目次
凡例
序
第一章 梅崎春生文学の出発
「微生」論―「偽」のモチーフ、国家批判と「紀元二千六百年」―
はじめに
「偽」のモチーフ
日中戦争下の日本社会
会社の「創立記念日」と日本国「紀元二千六百年」
おわりに
第二章 梅崎春生における戦争
第一節 「桜島」論―戦争批判と自然美―
はじめに
「私」の生きる姿勢―戦争への無言の抵抗―
「情緒」「感傷」と自然美―人間性の回復―
おわりに
第二節 「眼鏡の話」論―『きけわだつみのこえ』を一方に置いて―
はじめに
〈眼鏡の話〉から〈学校出の人間の話〉へ
「学校出」への不信
学徒兵への異論
おわりに
第三節 「狂い凧」論―「戦争」「家父長制」そして「天皇制」―
はじめに
矢木家の設定
城介の死
伯父幸太郎
城介と幸太郎
天皇制下の日本社会
エッセイ「天皇制について」
おわりに
第三章 梅崎春生における「偽」
第一節 「贋の季節」とは何か―「偽者」たちによる戦争―
はじめに
偽者
戦争批判
黄色の城壁
おわりに
第二節 「蜆」論―「偽者」から「生物」へ―
はじめに
ニセモノ・釦・蜆
〈良識や教養〉による〈偽物の善〉
〈釦〉と〈蜆〉―その象徴的役割―
黄色への嘔吐感―梅崎春生の身体感覚―
おわりに
第四章 梅崎春生が描く戦後社会
第一節 戦後社会と国際情勢
I「侵入者」論―戦後日本と米軍基地―
はじめに
自分のものと自覚できない「家」、「中継地」にされる「庭」
米軍基地問題への関心
アメリカ合衆国という〈侵入者〉
おわりに
II「ボロ家の春秋」論―東西冷戦、朝鮮戦争を背景に―
はじめに
「意地」の張り合い
姉妹作「雀荘」
東西冷戦、朝鮮戦争
おわりに
III「つむじ風」における三組の男女―戦後の〈男女平等〉そして日米関係―
はじめに
三組の男女関係とモデル
男女平等
塙女史―欧米的「合理主義者」―
〈アメリカ文化〉の侵入
日本の未来像
おわりに
第二節 戦後社会の構造
I「砂時計」論―重層表現による社会諷刺―
はじめに
物語構成の破綻と社会諷刺
「カレエ粉対策協議会」と〈バイ煙公害〉〈人権争議〉
「夕陽養老院」と「聖母の園養老院」火災
野犬
おわりに
II「つむじ風」における「明治生れ」批判―「太陽族」批判を背景として―
はじめに
年長者批判
「明治生れ」への不信
文壇諷刺
「太陽族」批判への批判
おわりに
第三節 戦後社会と精神世界
I「凡人凡語」における二つのモチーフ―遺作「幻化」への導入として―
はじめに
「ぼく」の生活信条
「隣組」のごとき人間関係
「欝」と「妄想」
戦後社会における精神の病
おわりに
II「幻化」論―久住五郎の精神世界―
はじめに
久住五郎の一人称的視点
梅崎春生の神経科入院
精神病院ブーム
精神病―誰もが内に秘める身近な病―
おわりに
結に代えて
上記内容は本書刊行時のものです。