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異世界への憧憬 木川 弘美(著) - ありな書房
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異世界への憧憬 (イセカイヘノショウケイ) ヒエロニムス・ボスの三連画を読み解く
原書: DESIDERIUM MUNDI ALII: Intellegere tripticam apud Hieronymus Bosch

芸術
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発行:ありな書房
A5判
縦216mm 横152mm 厚さ20mm
352ページ
上製
価格 4,800円+税
ISBN
978-4-7566-2384-3   COPY
ISBN 13
9784756623843   COPY
ISBN 10h
4-7566-2384-0   COPY
ISBN 10
4756623840   COPY
出版者記号
7566   COPY
Cコード
C0070  
0:一般 0:単行本 70:芸術総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年2月
書店発売日
登録日
2023年1月13日
最終更新日
2023年10月6日
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紹介

ヒエロニムス・ボスの四つの三連画──婚礼を言祝ぐ《快楽の園》に、浄罪の苦しみの《快楽の園》に、化生のものたちが招く《聖アントニウスの誘惑》に、地獄へと堕ちる魂の《最後の審判》に、贖罪と救済の《干草車》──は、いずれ劣らぬ傑作として時代や地域を問わず人びとを惹きつけてきた。左翼パネルにはエデンの園、右翼パネルには地獄、これらの場面にはいずれも魔物たちが多数描かれ、「悪魔の創造主」としてのボスの名を体現するものであるが、それぞれの作品のもつ──とくに中央パネルに描かれた──世界観や役割は少しずつ異なっている。
 《快楽の園》の中央パネルを埋めつくす裸体の男女は、あまりにも屈託のないその様子から、本当に肉欲の罪を戒めるために描かれたのか、という素朴な疑問は誰しももつであろう。左翼パネルに描かれた人類最初のカップルの隣には「黄金時代」を思わせる楽園が広がっている。しかしボスは楽園風景で終わらせない。右翼パネルに描かれた音楽地獄はいずれアダムとエヴァが犯す罪を暗示するかのように対置され、懲罰を受ける魂たちの中央で樹木人間が青白い顔を観者に向ける。子孫繁栄と肉欲の罪は紙一重であるが、それもまた神の御心のままであるかのように『詩篇』の言葉「主が仰せになると、そのように成り/主が命じられると、そのように立つ」が外翼パネルの閉扉時に表わされる。
エデンを左翼にもつほかの二つの三連画、すなわちウィーンの《最後の審判》と《干草車》では、異時同図法によって『創世記』の原罪から楽園追放までの物語が示されており、天国というよりも人間の罪への言及ととらえられ、罪の戒めという性質をみいだすことができる。
 同じくエデンを左パネルにもつ《干草車》は、開扉時全面に人の罪とかかわる場面が広がっている。まさしく原罪そのもののエデンの楽園では、天空に堕天使の墜落が描かれ、神に反逆した天使たちが天から落ちて魔物となっていく様子は、地上での出来事の布石となっている。楽園を追われたアダムとエヴァが向かう中央パネルは現世の罪と結びつき、神の諫めを顧みない人びとが大量になだれこむ地獄は、拡大すべく魔物たちによって増築されている。《干草車》はまるですべての人びとが地獄に導かれていくかのように見えるものの、《快楽の園》と異なり、地獄でさいなまれる人びとの姿はわずかである。そして救済への道は閉扉時に神の似姿の「放浪者」として残されているのである。

目次

プロローグ 〈魔〉の世界へ
第1章 時代の寵児か異端者か──ヒエロニムス・ボスという画家
第2章 神の視線が意味するもの──婚礼画としての《快楽の園》
第3章 浄罪か永劫の苦しみか──《快楽の園》の右翼パネルが示すもの
第4章 魔物はどこから──リスボンの《聖アントニウスの誘惑》
第5章 誰のための「審判」か──ウィーンの《最後の審判》
第6章 人の罪を描く──《干草車》に示された贖罪と救済への道
エピローグ 〈魔〉の世界から

人名索引

著者プロフィール

木川 弘美  (キガワ ヒロミ)  (

清泉女子大学文学部教授/ネーデルラント美術史

石井 朗  (イシイ アキラ)  (企画構成

表象芸術論

上記内容は本書刊行時のものです。