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ネーデルラント美術の宇宙
ネーデルラントから地中海世界、パリ、そして神聖ローマ帝国へ
原書: COSMOS ARTIS NEDERLANDIENSIS:Ex Nerderlandis ad Mundum Maris Interni, Lutetiam et Imperium Sacrum Romae
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2020年11月10日
- 登録日
- 2020年10月16日
- 最終更新日
- 2020年11月5日
紹介
ロベール・カンパンやファン・エイク兄弟に始まる初期ネーデルラント派の名声は一五世紀当時からヨーロッパ中に広まっていた。その初期の、ヤン・ファン・エイク作品の「驚くべき技巧」やロヒール・ファン・デル・ウェイデンの《十字架降架》に表わされた「悲嘆と涙」の描写などが絶賛され、受容されていく。これら北方美術の進展を、個別の事例やテーマの検討を通して、作者や仲介者の動き、あるいは受容者や社会へと投げかけられる波紋を浮かびあがらせ、ネーデルラントを中心に織りなされた美術の国際交流──イタリア、スペイン、フランス、そして神聖ローマ帝国──の意義/宇宙を明らかにする。さらに、当時の画家たちがいかに頻繁にヨーロッパ内を移動し美術を伝播していったかという点についての具体的なイメージを明らかににし、ネーデルラントとイタリアという二大潮流の狭間で培われたフランス美術のアイデンティティや、神聖ローマ帝国において直接的・間接的に受容されたネーデルラント美術のモティーフと表現方法について明らかにする。これらの具体的な事例──ヒューホ・ファン・デル・フースの《ポルティナーリ祭壇画》からマティアス・グリューネヴァルトの《イーゼンハイム祭壇画》まで──を通して、地中海世界やパリ周辺、そして神聖ローマ帝国へと広がっていったネーデルラント美術の宇宙をつかむための手がかりを示すことができた。ネーデルラント美術がこのように広く伝播していくことができたのは、作品の一点一点が美術としての質の高さと魅力を具えていたからにほかならない。尽きることのない魅力を放つネーデルラント美術は、一六世紀後半以降も、ヨーロッパ各地でくりかえし受容され、変奏され、融合されていったのである。
目次
プロローグ ネーデルラント美術の宇宙の中に──ミクロコスモスとマクロコスモス 木川弘美
第1章 ヒューホ・ファン・デル・フース《ポルティナーリ祭壇画》──ネーデルラントとフィレンツェのはざまで 杉山美耶子
第2章 稀代の収集家マルグリット・ドートリッシュ──プラド美術館ネーデルラント絵画コレクションの知られざる功労者 木川弘美
第3章 芸術家の移動──ルネサンス期のヨーロッパにおける文化伝達の諸相 ティル = ホルガー・ボルヒェルト
第4章 変容する肖像画──ジャン・クルーエの肖像画を中心に 田中久美子
第5章 マティアス・グリューネヴァルト《イーゼンハイム祭壇画》と初期ネーデルラント絵画 今井澄子
エピローグ ネーデルラント美術の宇宙を超えて 今井澄子
註
あとがき 今井澄子
人名索引
上記内容は本書刊行時のものです。