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描かれる他者、攪乱される自己
アート・表象・アイデンティティ
原書: ALIUS PICTUS, EGO DISTURBATUS: Ars, Repraesentatio, Identitas
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2018年1月
- 書店発売日
- 2018年1月9日
- 登録日
- 2017年12月28日
- 最終更新日
- 2018年1月11日
紹介
一四九二年にクリストファー・コロンブスがアメリカ大陸そばのカリブ諸島にあるひとつの島、現在ではサン・サルバドル島と呼ばれる地に到着したとき、彼はそこがインドの近くの島であると信じていた。そのため、そこに暮らす人々は「インディアン(インド人)」と呼ばれることになり、カリブ海域の島々も「西インド諸島」と名づけられた。アメリカの先住民は、「インディアン」と白人に呼ばれることによって「インディアン」となったのである。このときインディアンは白人によって「発明」されたとも言えるであろう。……美術作品などの視覚文化は、他者を典型的な他者の図像(たとえば「凶暴で野蛮なインディアン」)に表現することによって、支配者の思想や価値観の確立や保持のために機能する。だが他方ではまた、表象を変異させていくことによって、その思想や価値観を攪乱することもある。他者とされた人々が主体的に自らを表象するようになったとき、そこにはある種の攪乱が拭いがたくあったはずである。以下の各章では、さまざまな他者が描かれた多様な作品を見ていくことによって、それがどのように自己と他者のイメージをつくりだし、あるいはそれを解体しているのかを解き明かしていく。
目次
プロローグ 「他者」を描くということ 田中正之
第1章 ジョージ・カトリンの「インディアン・ギャラリー」──消えゆく他者と救出する画家の自己成型 横山佐紀
第2章 フレデリック・エドウィン・チャーチのオリエント 瀧井直子
第3章 メアリー・カサットの自画像──シカゴ万博女性館壁画《モダン・ウーマン》に描かれたモダニティと「新しい女」のイメージ第4章 ヘンリー・オサワ・タナー《バンジョーのレッスン》をめぐって──黒人画家による黒人表象 田中正之
第5章 沈黙のリアリズム──エドワード・ホッパーが視たもうひとつの「自己」 小林剛
エピローグ 描かれる「他者」、攪乱される「自己」 田中正之
註
あとがき 田中正之
人名索引
上記内容は本書刊行時のものです。