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ふしぎな時間
テレビプロデューサーのしなやかな審美眼
- 出版社在庫情報
- 在庫僅少
- 初版年月日
- 2011年5月
- 書店発売日
- 2011年4月25日
- 登録日
- 2010年10月6日
- 最終更新日
- 2015年8月26日
目次
目次
ことばの重さ 1996年1月~1999年12月
愛の映画 劇団梁山泊 正月雑感 芝居三昧 北京再訪 眼の話 音楽会 放送番組
葉月 詩 演劇評 歌舞伎 リトアニア 戦後 地球の青さ 彫刻家 船が好き
静かな演劇 俳優 マリアの眼 文人の死 砂の女 テレビ
倚りかからず 2000年1月~2001年12月
新世紀 小林秀雄 能楽堂 演劇の芸術性 船旅 晩秋 映画「タイタス」 遺伝子
小林秀雄2 中村歌右衛門 テレビドラマ 取材旅行 番組制作 夏休み 焼き物
狂牛病 小さな舞台 NY貿易センタービル
「無音」を視る 2002年1月~2004年12月
鎌倉 花 朗読 那智大滝 眼 表現の自由 真夏の落語 エーゲ海と政治 拉致
白川郷 出会い 温泉 暴力 季節 ドラマ 梅雨 小津安二郎 映画審査
ブレヒトの唄 放送 秋景 別れ 石垣島 文化 書評 桜 冬のソナタ 書評
三島由紀夫 時間 NHK
ふしぎな時間 2005年年1月~2006年12月
愛の無償 永井荷風 新緑の頃 高村光太郎 恨(ハン) 慶州 バルト海船旅報告
異能の人 無邪気な罪 近代化と自由 春 福沢諭吉 金儲け 夢と記録と記憶
ポーランド ペット参上
韓流ドラマ「チャングムの誓い」から学べること
人間の尊厳とは何か
アンジェイ・ワイダの国、ポーランド
特別寄稿 ◎ふしぎな時間の狩人 松岡正剛(編集工学研究所所長)
前書きなど
【特別寄稿】松岡正剛 編集工学研究所所長
不思議な時間の狩人
加藤さんのことはほとんど知らない。数年前に美輪明宏さんの番組にゲストとして呼ばれたときに顔見知りになり、それから半年ほどして「松岡さんをホストとした一週間たてつづけの番組をつくりたい」と言われ、それはそれで終わって、そのあとはめったに顔を合わせていないのだ。
それが本書の“解説”をぼくに依頼するとは、いったい加藤さんは何を期待しているのか、その魂胆が見えないのだが、ゲラを一気に読んで、うーん、むむむと感じた。
この本の中にはたしかに表題通りの「不思議な時間」が行きつ戻りつしている。その時間には裏地があって、そこには光景や言葉やらが何かの符牒のようにくっついている。おまけに時間はどこかでツイストもしているし、切れ目も入っている。だからこの時間を折り畳んで鞄に入れれば、どこかに運んでもいける。本書にはそういう時間の按配と加藤さんとの付き合いがぴったり綴られていた。なるほど、これって、ぼくが好きな付き合いかただ。
それにしても、こういう「変な時間」をNHKの仕事をしながら平気で遊べてきたというのは、加藤さんが長年にわたって四角い電子函のあれこれを通してドラマやドキュメンタリーの虚実皮膜を相手にしてきたせいなのかとも思うけれど、それなら評判のいいテレビ屋はおおむね加藤さんのようになるはずだろうに、それはどうやらそうでもないから、ここには別な理由があるに決まっている。
それは思うに、永井荷風、小林秀雄、高田博厚、茨木のり子、鈴木孝夫にのめりこみ、ジャン・ジュネ、アンジェイ・ワイダ、歌右衛門、シルヴァーノ・マンガーノ、毬谷友子、イ・ヨンエにぞっこんになっていることにすでにあらわれている。これらの表現者たちは「選択と抵抗と官能」をどこかで一緒にできる才能をもっている。とりわけ郡司正勝さんが好きだった「年齢性別越え」のようなもの、つまりは「時間超え」ができる人々なのである。おそらくは加藤さんはそういう人たちがたまらなく愛しいという日々をおくってきたわけなのだ。
そういう加藤さんを、三阿弥や青山二郎ばりの“昭和平成の目利き”だなんて持ち上げるのは、つまらない。この人は絶対矛盾的自己同一こそを信用していて、名人たちの至芸を見ているときにもその「不在の行方」を遠望するような人なのである。今後ももっともっと片寄った好みでニッポンをおもしろくしてほしい。メディアリテラシーなど壊していってもいただきたい。
上記内容は本書刊行時のものです。