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SDGs時代にみる教育の普遍化と格差 澤村 信英(編著) - 明石書店
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SDGs時代にみる教育の普遍化と格差 (エスディージーズジダイニミルキョウイクノフヘンカトカクサ) 各国の事例と国際比較から読み解く (カッコクノジレイトコクサイヒカクカラヨミトク)

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発行:明石書店
A5判
408ページ
上製
価格 4,800円+税
ISBN
978-4-7503-5600-6   COPY
ISBN 13
9784750356006   COPY
ISBN 10h
4-7503-5600-X   COPY
ISBN 10
475035600X   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年5月31日
書店発売日
登録日
2023年4月21日
最終更新日
2023年6月23日
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紹介

SDGsゴール4達成に向けて進む教育の普遍化と格差は、現在どのような状況にあるのか。教育が普遍化する過程にある途上国と、一定の教育普遍化を実現した先進国の事例を横並びに議論した上で、国家間の格差、「格差」の多義性、さらに「格差」是正の政策課題を明らかにする。

目次

 はしがき

序章 教育の普遍化と格差に関わるフィールド研究と国際比較はなぜ必要か――「SDGs時代」が意味すること[坂上勝基]
 1.教育の普遍化と格差をめぐる諸問題とSDGs
 2.教育の普遍化と格差に関する先行研究との関連
 3.マクロデータにみる教育の普遍化と格差の現状
 4.本書の目的と構成

第Ⅰ部 教育の普遍化と格差(アフリカ)

第1章 西アフリカ地域における創り出される「教育」の格差――イスラーム教育と公教育の共存を目指して[清水貴夫]
 1.創り出される教育の格差
 2.西アフリカにおける伝統教育への人々の信頼と困難
 3.近代化とイスラーム教育
 4.教育の裨益者としての人々とイスラーム教育

第2章 幼児教育の「質」と「格差」を問い直す――ザンビア都市インフォーマル居住地における低学費私立園の台頭に着目して[興津妙子]
 1.動き出したザンビアのECEC政策
 2.ECEナショナル・カリキュラムとザンビアの子ども観・発達観
 3.ルサカ市ムテンデーレ地区におけるECEの展開状況
 4.私立園の台頭をECEの質と包摂の両面からどう評価すべきか

第3章 周縁化された子ども間に生じる教育格差の中にある格差――マラウイにおける障害のある児童の就学状況を事例に[川口純]
 1.子どもの特性と就学に関する先行研究
 2.マラウイの初等教育の概要と就学状況
 3.データからみる教育格差の中にある格差
 4.教育省職員への聞き取りに基づく分析結果――格差を生じさせる要因と構造

第4章 マダガスカル農村部における学校から仕事への移行――社会経済的地位による家族の意思決定に着目して[F・R・アンドリアリニアイナ、A・R・ラスルナイヴ、園山大祐]
 1.教育制度をめぐる政治的変遷とその特徴
 2.教育の普遍化過程における格差の課題
 3.マダガスカル農村世帯における学校から仕事への移行
 4.結果――農村世帯の社会的背景と意思決定
 5.考察――家族を中心に将来を考える

第5章 中国の大学におけるアフリカ人学生の留学動機――高等教育の機会の多様化がもたらす新たな格差[羅方舟・小川未空]
 1.アフリカ人学生の留学動向と中国への留学
 2.留学動機に関する先行研究の検討
 3.フィールド調査の概要――厦門大学と浙江師範大学
 4.調査結果――留学動機と留学に至る経緯
 5.留学の機会と新たな格差

第Ⅱ部 教育の普遍化と格差(アジア)

第6章 バングラデシュ農村の社会経済格差縮減と教育開発――EFAからの30年[日下部達哉]
 1.縦断的研究によるバングラデシュ村落の地域教育研究
 2.調査対象村と時系列比較による経年変化観察
 3.カラムディ村における農村経済の変化
 4.調査対象村の教育格差縮減に関する縦断調査結果

第7章 カンボジアにおける教育普遍化と教育の質の向上「コーン・オッ・チェ(しんどい子)」に注目して[荻巣崇世]
 1.カンボジアにおける教育普遍化と「格差」
 2.「コーン・オッ・チェ」の含意
 3.「しんどい子」に関する二つの言説――「子どもにやさしい学校」政策から
 4.しんどい子にとっての「子どもにやさしい学校」政策

第8章 タイにおける教育格差と是正措置――「公正な教育のための基金」の設置と事業展開[牧貴愛]
 1.基礎教育改革による学校教育の多様化
 2.中等学校の地域間格差と教育行政官の認識
 3.公正な教育のための基金――教育格差是正の実施主体
 4.「地元を愛し、地元を守る教員」――EEFによるへき地教員養成事業

第9章 日本における教育格差とその克服――教育機会確保法をめぐって[志水宏吉]
 1.日本の教育の歴史的流れ
 2.現在日本の教育格差
 3.教育機会確保法の成立
 4.教育機会確保法成立以降の動き

第Ⅲ部 教育格差をめぐる国際比較

第10章 中所得国入りを目指すアフリカ諸国の教育普遍化と格差の展望――ケニア、ウガンダ、およびタイの比較研究[小川未空、坂上勝基、牧貴愛]
 1.教育普遍化と格差に関する概況
 2.国家・社会像と教育政策・施策の方向性
 3.教育政策・施策の展開
 4.格差の是正と公正観

第11章 中等教育カリキュラムと修了試験にみる「格差」概念の探索――南アフリカ、ケニア、マダガスカルの比較[坂口真康、小川未空、A・R・ラスルナイヴ、園山大祐]
 1.経済的観点から社会福祉的観点へと格差の是正を展開する南アフリカ
 2.格差を批判し分配による平等を目指すケニア
 3.「マダガスカルらしさ」を推進しバランスのとれた社会を目指すマダガスカル
 4.3か国における格差概念の比較検討からみえてくること

第12章 インクルーシブ教育政策と学校現場での取り組み――マラウイとエチオピアでの事例研究[川口純、利根川佳子、大塲麻代]
 1.インクルーシブ教育の成立過程とアフリカにおける導入状況
 2.マラウイとエチオピアにおけるインクルーシブ教育政策と導入の経緯
 3.教育省担当官の視点からみるインクルーシブ教育の実施過程における課題
 4.インクルーシブ教育に関わる取り組みの両国比較からみえてきたこと

第13章 すべての子どもが共に学ぶ教育の諸相と課題――日本とスコットランドの事例から[伊藤駿]
 1.インクルーシブ教育と格差をめぐる先行研究
 2.日本とスコットランドの事例を比較分析する視点とデータの概要
 3.日本の事例――「分離」を前提とするインクルーシブ教育
 4.スコットランドの事例――通常学校への全員就学を目指すインクルーシブ教育
 5.両国におけるインクルーシブ教育を比較することでわかること

第14章 低学費私立学校をめぐる脱国家的な動向――公正で質の高い教育を求めて[小原優貴、興津妙子、大塲麻代]
 1.LFP学校の拡大と支持ネットワークの国際的展開
 2.BIAと支援組織に対する国際的な批判の展開
 3.RBAによる教育を受ける権利の保障
 4.途上国の教育における民間関与と「国家主導」の問題

第Ⅳ部 コロナ禍の学校教育と格差

第15章 アフリカ諸国のコロナ禍における学習機会の格差――ケニアとウガンダの事例から[坂上勝基、小川未空、澤村信英]
 1.コロナ禍の学習機会格差についての先行する実証研究
 2.ケニアとウガンダにおけるコロナ禍に対応した学校閉鎖関連政策
 3.高頻度電話調査データの概要と統計方法
 4.家庭での学習従事状況の格差に関する分析結果

第16章 マダガスカルの大学における緊急的な遠隔教育による格差の生成――コロナ禍の教員養成課程学生の日常に着目して[F・R・アンドリアリニアイナ、澤村信英]
 1.マダガスカルにおける新型コロナウイルス感染症拡大への教育機関の対応
 2.先行研究の検討――遠隔教育がもたらした変化
 3.研究の対象と方法――アンタナナリボ大学高等師範学校
 4.結果――コロナ禍での学生生活と遠隔教育の経験
 5.考察――緊急的な遠隔教育が生み出す格差の要因

第17章 コロナ禍の日本における教育格差への対応――教育行政にみるマイノリティ支援の語られ方[中丸和]
 1.教育行政による新型コロナウイルス対応の概観
 2.文科大臣会見で言及された「格差」――自治体間格差と家庭間格差
 3.障害のある子どもに対する休校中の支援
 4.格差はコロナ禍で拡大したのか

第18章 格差是正に向けたデジタル教育普及をめぐる諸課題――コロナ禍のフランスにおける平時の教育支援政策の活用[園山大祐]
 1.パンデミック宣言から1年間の取り組みに関する国際比較
 2.パンデミック後の政策動向にみるフランス的特徴
 3.新たな教育政策としてのデジタル資本格差とデジタル植民地の回避に向けて
 4.フランスの遠隔・デジタル教育から得られた示唆
 5.コロナ禍に学校教育が浮き彫りにした課題

終章 教育の普遍化と格差をめぐる国際比較研究――公正の視点から問い直す[小川未空]
 1.本書が試みたこと
 2.各章のまとめ
 3.本書の成果
 4.まとめにかえて――「格差」の「是正」のために

 あとがき
 索引

前書きなど

はしがき

 持続可能な開発目標(SDGs)は、2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに世界で達成すべき目標である。17のゴールから構成され、「誰一人取り残さない」ことを誓約している。また、SDGsはそれまでのミレニアム開発目標(MDGs)とは異なり、発展途上国のみならず、日本を含め先進国も取り組むべき普遍的なものである。教育に関しては、ゴール4として「すべての人々に包摂的かつ公正で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」ことが謳われている。
 今この時期に本書を上梓した最大の理由は、SDGsゴール4達成に向けて、アフリカやアジアの発展途上国において、初等・中等教育の量的な普遍化が進むなかで、逆に様々な形で格差が広がっているのではないかというフィールドで感じた思いがあったからである。ちょうど2022~2023年が目標達成の中間年になる。その格差は、普遍化の陰に隠されてきた場合もあるであろうし、普遍化が進むがために増幅されていることもあるかもしれない。ここでいう「格差」は、是正が必要だと価値判断される集団間の不平等である。
 本書は4部18章および序章と終章から構成されている。その目的は、多様な社会、様々な教育の発展段階において、教育と格差をめぐって、いかなる課題があるのか、それぞれの執筆者が得意とするテーマと研究の方法で、あぶり出すことである。困難な状況にある一人ひとりのリアリティを把握するため、アフリカおよびアジアでのフィールド研究を中心としているが(第Ⅰ部および第Ⅱ部)、国際比較から格差を多面的に捉え直すことを試みた章もある(第Ⅲ部)。さらに、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は、格差に関わる大きな問題を浮き彫りにしており、コロナ禍の教育と格差に特化した章も設けた(第Ⅳ部)。
 本書の特徴は、「途上国」「先進国」あるいは「アフリカ」「アジア」「ヨーロッパ」というような、各国の総所得(経済レベル)や地域により分類し俯瞰するのではなく、共通の課題として、それぞれの国で起こっている格差の実態や格差の是正、縮減に向けての取り組みについて、当事者性をもって理解しようとしている点である。したがって、日本や他の先進国を扱った章も含まれる。本書の各章は、人々の生活感を共有しながら、フィールドデータを駆使して、教育の普遍化へ向けた、あるいは達成した中での格差の実態を立体的に描き出そうとするものである。
 各章の対象(者)は異なるかもしれないが、そのような表面的な差異の下には、通底する重要な事象が横たわっていると思う。就学率に代表される教育指標は、様々な格差を覆い隠す。我々の知識を増やし注意深く観察しなければ、誤解してしまうこともある。残念ながら、多くの社会は不平等にできている。我々が追い求めるSDGsゴール4にある「包摂的かつ公正で質の高い教育」とは、いったい何なのだろうか。
 各章を横糸で結ぶという重要な意味を持つ序章と終章は、比較的若い2人の編者に託すこととした。これは、伸び盛りの2人であれば、本書をめぐって3人でたびたび交わした議論と各自が持つ知見をもとに、読者を本書が描く世界に迷うことなく導き、各章を総括し、全体の議論を収束させてくれると確信したからである。次の世代の研究者にバトンタッチするような気持ちにもなった。
 ユニークな本に仕上がったと思っているが、読者の皆さまからの忌憚のないご意見、ご感想などをいただければ幸いである。SDGs時代の中間点を迎え、本書を通して、教育をめぐる格差や公正について、読者と一緒に考えることができれば、このうえない喜びである。

著者プロフィール

澤村 信英  (サワムラ ノブヒデ)  (編著

大阪大学大学院人間科学研究科教授、博士(人間科学)。
愛媛大学理学部地球科学科卒業後、青年海外協力隊(マラウイ、理数科教師)を経て、大学院理学研究科修士課程に進学。国際協力事業団(JICA)職員、英国エディンバラ大学アフリカ研究センター(M.Phil.)、広島大学教育開発国際協力研究センター/大学院国際協力研究科准教授・教授を経て現職。
主な著作に「発展途上国の学校と学びの成果」『シリーズ人間科学4 学ぶ・教える』(中澤渉・野村晴夫編、大阪大学出版会、2020)、『発展途上国の困難な状況にある子どもの教育――難民・障害・貧困をめぐるフィールド研究』(編著、明石書店、2019)、『アフリカの生活世界と学校教育』(編著、明石書店、2014)など。

小川 未空  (オガワ ミク)  (編著

大阪大学大学院人間科学研究科助教、博士(人間科学)。
広島大学教育学部卒業後、大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程・後期課程修了。日本学術振興会特別研究員(DC1)、広島大学大学院国際協力研究科研究員を経て現職。
主な著作に“Emerging inequality in Kenyan secondary schools: dilemmas of educational expansion and quality improvement”, Prospects 52, 453-468, 2022、「ケニアの中等教育における低学費私立校の公共性――教育格差に果たす役割」(『未来共創』9号、143-171、2022)、『ケニアの教育における格差と公正――地域、学校、生徒からみる教育の質と「再有償化」』(単著、明石書店、2020)など。

坂上 勝基  (サカウエ カツキ)  (編著

神戸大学大学院国際協力研究科助教、博士(学術)。
京都大学農学部および関西学院大学総合政策学部卒業。神戸大学大学院国際協力研究科博士課程修了後、ユネスコバンコク事務所・アジア太平洋地域教育局プログラムオフィサー、日本学術振興会特別研究員(PD)(大阪大学大学院人間科学研究科)、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科講師(任期付)を経て現職。
主な著作に“Effects of including refugees in local government schools on pupils' learning achievement: evidence from West Nile, Uganda”, International Journal of Educational Development 90, Article 102543, 2022 (co-author)、“Informal fee charge and school choice under a free primary education policy: panel data evidence from rural Uganda”,International Journal of Educational Development 62, 112-127, 2018、「ウガンダ北部南スーダン難民居住地の生活と学校――開発志向の難民政策下における教育提供」(共著、『アフリカレポート』56号、50-62、2018)など。

上記内容は本書刊行時のものです。