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生涯学習のインクルージョン 津田 英二(著) - 明石書店
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生涯学習のインクルージョン (ショウガイガクシュウノインクルージョン) 知的障害者がもたらす豊かな学び (チテキショウガイシャガモタラスユタカナマナビ)

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発行:明石書店
A5判
240ページ
並製
価格 2,400円+税
ISBN
978-4-7503-5580-1   COPY
ISBN 13
9784750355801   COPY
ISBN 10h
4-7503-5580-1   COPY
ISBN 10
4750355801   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0037  
0:一般 0:単行本 37:教育
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年4月30日
書店発売日
登録日
2023年3月16日
最終更新日
2023年5月23日
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紹介

学ぶ能力が欠如しているとされ「学び」から排除されてきた知的障害者の生涯学習にはどのような意味があり、いかにして可能なのか。インクルーシヴな生涯学習について、政策や制度の検証、インフォーマル/ノンフォーマル教育の実践事例、基礎教育保障、文化芸術等を通した「学びの原理」の検討をもとに知見を積み上げた一冊。
すべての人が参加し協働して課題を解決し、よりよい社会を共同で創造していく未来を思い描きながら、そうした未来に向けて教育はどうあるべきか、個々人はどのような力を得ていく必要があるのか、多様な能力を前提にした協働はいかにありえるのか、といったテーマを社会に問いかける。

目次

 はじめに

第1部 障害者の生涯学習推進の背景と実際

第1章 障害者の生涯学習推進の前提
 1.誰にとっても身近な問題
 2.障害の概念をめぐって
 3.合理的配慮
 4.学ぶ機会の拡充と多様化
 5.葛藤への焦点化

第2章 公民館は障害者の学びに貢献してきたか
 1.谷間に落ち込んできた領域
 2.障害者の生涯学習推進政策の登場
 3.公民館の先駆的な事例
 4.どこから手を着けるか

第3章 障害者の生涯学習推進政策の概念枠組みと未来社会
 1.政策動向とその背景
 2.障害者の生涯学習推進政策をめぐる概念の整理
 3.政策の構造的把握と考察
 4.人口減少社会における障害者の生涯学習推進政策

第4章 障害者の生涯学習推進政策のリージョナルな取り組み
 1.障害者の生涯学習推進の具体的な課題
 2.リージョナルな取り組みとその重要性
 3.障害者の生涯学習連携コンソーシアムの挑戦――兵庫県の場合

第2部 さまざまな形の学びの場づくり

第5章 教育と学びを重層的に捉える
 1.社会教育と生涯学習の概念と理念
 2.フォーマル教育、ノンフォーマル教育、インフォーマル教育

第6章 インフォーマルな学びの場の教育力
 1.インフォーマル教育実践における「場のちから」
 2.「場のちから」を示すデータの収集
 3.「配慮」はどのように共有されたか

第7章 インフォーマルな学びの場としての都市型中間施設
 1.緩やかな公共空間
 2.「のびやかスペースあーち」10周年調査
 3.インフォーマルな学びはいかに機能したか
 4.都市型中間施設の可能性と課題

第8章 ノンフォーマルな学びの場の多様性――大学教育の挑戦
 1.「難しいけど楽しい」学び
 2.国内外の大学教育プログラムの展開
 3.「学ぶ楽しみ発見プログラム」の概要
 4.ノンフォーマル教育としてのKUPI

第9章 知的障害学生との合同授業を経験した大学生の葛藤と学び
 1.大学生の体験型福祉教育
 2.授業の内容と学生の学びの記録
 3.学びの構造
 4.間主観的学びの萌芽

第10章 ノンフォーマル教育の公教育性――障害者青年学級をめぐって
 1.障害者青年学級の歴史と現在
 2.障害者青年学級の公教育性

第3部 学びの原理

第11章 「障害者の基礎教育保障」は「共生保障」になりえるか
 1.「障害者の基礎教育保障」をどう把握するか
 2.「共生保障」としての障害者の基礎教育

第12章 生命の豊かさを支える実践としての知的障害者の音楽活動
 1.オルタナティヴな価値の創造過程を探る
 2.〈たんぽぽ〉の音楽活動の描写
 3.相互作用に開いていく心と身体
 4.他者・自然と出会う身体的経験へ
 5.知的障害者の音楽活動の意味再考

第13章 語りが意味をもつ場の創出へ
 1.語りと教育の境界
 2.障害者の主観的な経験への着目
 3.障害の人間化
 4.無条件の歓待が起こる場
 5.「小さな声」を聞くとはどういうことか
 6.「小さな声」をめぐるコミュニティ

 あとがき
 引用・参考文献一覧
 索引

前書きなど

はじめに

 (…前略…)

 本書は、インクルーシヴな社会の形成を最終的な目標としつつ、その形成過程で重要な要素となる「学び」を取り上げる。しかもその「学び」の主体として、特に知的障害者に焦点を当てる。
 知的障害者に焦点を当てるのは、知的障害者は学ぶ能力が欠如している人たちとして分類されており、最も本質的に「学び」から排除されていると捉えることができるからだ。イギリスでは、学習困難(learning difficulties)という言葉で知的障害を表現することが定着している。学ぶ能力が欠如しているとされてきた知的障害者は、生涯学習の機会が保障されないこと、学びの場に現れないことが、最も「当たり前」のこととされてきた人たちなのだ。それゆえ、知的障害者の学びに着目することで、この「当たり前」をいかに崩していくかということを検討したり、知的障害者が学びの場に現れることによって何が変わるのかということを検討したりすることができるはずだ。
 本書は、国内外で障害者の生涯学習を推進する流れを背景として、知的障害者の学びに焦点を当て、インクルーシヴな生涯学習の原理・制度・実践についての知見を積み上げることを目的とする。そのために、次のように本書を構成した。まず、障害者の生涯学習推進政策の背景と実際について実践的・理論的に捉えるとともに、社会教育行政や社会教育施設の課題を取り上げる(第1部)。そのうえで、知的障害者の学びの現場をノンフォーマル教育―インフォーマル教育の観点から分類して捉え、それぞれ実践論の視点からインクルーシヴな学びの理論構築をめざす(第2部)。そして最後に、基礎教育保障、文化芸術、語りといったトピックを据えてインクルーシヴな学びを原理的に検討する(第3部)。当座は、さまざまな社会資源を動員しながら障害者が学ぶ機会の拡充を図っていくとしても、即座に、どのような社会のあり方を前提としたどのような学びを創造していくべきなのか、という具体的なイメージについての議論が求められることになろう。したがって筆者は、すべての人が参加し協働して課題を解決し、よりよい社会を共同で創造していく未来を思い描きながら、そうした未来に向けて教育はどうあるべきか、個々人はどのような力を得ていく必要があるのか、多様な能力を前提にした協働はいかにありえるのか、といったテーマを問いとして浮かび上がらせることにする。

 (…後略…)

著者プロフィール

津田 英二  (ツダ エイジ)  (

東京大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(学術)。神戸大学大学院人間発達環境学研究科教員。専門は社会教育論、生涯学習論。インクルーシヴな社会の創成に関わる多様な実践に関与しながら、文化と人を育てる実践研究を試行錯誤している。主な著書に、『知的障害のある成人の学習支援論』(学文社、2006年)、『物語としての発達/文化を介した教育』(生活書院、2012年)、『生涯学習の支援論』(編著、学文社、2003年)、『インクルーシヴな社会をめざして』(編著、かもがわ出版、2011年)、『社会教育・生涯学習研究のすすめ』(編著、学文社、2015年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。