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続・アーカイブズ論 スー・マケミッシュ(編) - 明石書店
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続・アーカイブズ論 (ゾクアーカイブズロン)
原書: Archives: Recordkeeping in Society

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発行:明石書店
A5判
304ページ
上製
価格 3,500円+税
ISBN
978-4-7503-5547-4   COPY
ISBN 13
9784750355474   COPY
ISBN 10h
4-7503-5547-X   COPY
ISBN 10
475035547X   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年2月20日
書店発売日
登録日
2023年2月1日
最終更新日
2023年4月3日
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紹介

現用文書から非現用文書へという直線的なライフサイクル論に代わる、レコード・コンティニュアム論とは――生まれると同時に多層的な性格を備える今日の情報社会における記録と、社会全体の記憶との関係を議論する。

目次

 翻訳にあたって
 日本語版に寄せて

第1章 ドキュメント
 私たちはドキュメントの網の目のなかで生きている
 ジャンルの概念
 ドキュメント分析:遠いものと近いもの,となり合うもの
 証拠としてのドキュメントと記録
 ドキュメント,情報オブジェクトおよびメタデータ
 ドキュメント・コンピューティング
 結論

第2章 レコード
 はじめに
 レコードとドキュメント
 信頼性あるレコードと不確定なオブジェクトとしてのレコード
 レコード・システムのなかにドキュメントを位置づける
 事例研究:登録システム
 メタデータ
 アクセス
 評価選別
 結論:静的オブジェクトあるいは動的オブジェクトとしてのレコード

第3章 アーカイブ
 はじめに
 アーカイブの観念
 コンテクストのなかのアーカイブ:組織と業務活動
 組織のニーズ
 組織構造の変化とアーカイブ
 業務管理の伝統と実務
 レコード作成主体とレコード・マネジメントの方針
 組織とレコードキーピング・システムとの関係
 個人と家
 アーカイブおよびアーカイビングの過程に関する視点
 アーカイブのアイデンティティ:境界と意味
 おわりに

第4章 アーカイブズ
 アーカイブズのシステム,枠組み,規模の可変性
 信頼されたシステムと多元化
 記述
 評価選別
 保存
 公共アクセスのための枠組み
 これからのアーカイブズ・システム
 結び

第5章 レコード・コンティニュアム
 はじめに:活動ベースの情報の保存
 時空の遠隔化と情報管理のプロセス
 行為の証:フランス哲学を旅する
 時空の遠隔化と膨張する宇宙
 結論

第6章 アーカイブズと記憶
 アーカイブズと記憶:疑いようのない関係
 関係の誇張
 より幅広く,より適格な表現
 実際問題としての資質
 忘却とアーカイブズの不在
 結論

 次の本について
 Introduction to the Japanese Edition
 事項索引
 人名索引
 著者紹介
 監修者・訳者紹介

前書きなど

翻訳にあたって

 (…前略…)

 原著出版の意図については,編著者自身が記した文章を前巻で紹介したのでくり返さないが,一言でいえば,文化や組織や歴史など,人間社会のあらゆる場面でアーカイブズが果たす役割を,レコード・コンティニュアムという概念的な枠組みを使って考察し,アーカイブズを現代社会に活かす新しい指針を示そうとするものである,ということになろうか。
 もともと1冊の体系的な論文集である原著を,やむをえず二つに分割し,しかも翻訳出版にこれほどの年数がかかったのは,ひとえに私たち訳者の力量不足によるものである。ただ,分冊にあたってはいちおう次のような方針を立て,原編著者の了解を得たうえで作業を進めた。
 まず,上巻にあたる前巻には,総論的な意味合いをもつ第1章のあと,社会におけるアーカイブズ機関とアーカイブズ専門職の位置,レコードキーピングとアカウンタビリティ,法制度との関係など,アーカイブズが現代社会において果たす役割を正面から論じた六つの章を集めた。それに対して続巻にあたる本書には,レコード・コンティニュアム論にいう「ドキュメント」「レコード」「アーカイブ」「アーカイブズ」について順に論じた四つの章を中心に,レコード・コンティニュアム論そのものを解説した章と,アーカイブズと記憶の関係を論じつつ原著全体のまとめとしての性格をあわせもつ最終章を加え,全6章を収載した。
 レコード・コンティニュアム論の最大の特徴は,従来のライフサイクル論のように,記録の一生を,現用文書→半現用文書→非現用文書,もしくはドキュメント→レコード→アーカイブズというように,時の経過とともに性格が段階的に変化していくものと考えるのではなく,記録が発生した瞬間に,生まれながらにして「ドキュメント」「レコード」「アーカイブ」「アーカイブズ」という四つの性格が同時的かつ多層的に備わる,とみるところにある。いいかえれば,「ドキュメント」「レコード」「アーカイブ」「アーカイブズ」の四つは,直線上の時系列的な流れではなく,中心点からまわりに向かって一瞬に広がる同心円状の四つの次元とみるのである。したがって,記録がどの性格を表出するかは,どの次元=観点から記録をとらえ,活用しようとするかによる。たとえば,どんなに古い過去の記録であっても,第1の発生次元の観点から,現場で進行中の業務に再利用しようとすれば,たちどころに現用の「ドキュメント」に戻るのだし,逆に発生したばかりの新しい記録であっても,第4の社会化の次元からその普遍的価値に着目し,社会全体の共有財産と位置づければ,その途端に「アーカイブズ」としての性格が立ち現れてくる,ということなのである。「ナノセカンド(10億分の1秒)でもミレニアム(千年紀)でも記録は記録」―レコード・コンティニュアム論の記録観を論者の一人が表現したことばだが,言い得て妙である。
 レコード・コンティニュアム論の登場は,明らかにデジタル情報社会の広がりを契機としている。デジタル記録は紙資料のように段ボール箱に入れて書庫に移す必要がなく,時間の経過とともに劣化することもない。文字どおり「時空を超えた」存在であり,これまでの紙をベースとした記録管理論やアーカイブズ論だけでは,これを適切に管理し,必要な情報を未来に伝えることが困難になってきたのである。レコード・コンティニュアム論は,現在のところ,この課題に対処するもっとも先進的で実効性の高い理論だと考えられている。ただこの理論は,現代のデジタル情報だけを念頭に置いているのではなく,紙やフィルムなど伝統的な記録世界をも視野に入れていることを見逃してはならない。その意味で本書は,デジタル情報に関連ないしは関心のある読者だけでなく,行政,企業,学術,芸術など,あらゆる分野で新旧さまざまな媒体の記録を生み出し,これを未来に伝えようと努力しているすべての人々にとって,何らかの新しい示唆を与えてくれるはずである。なお,レコード・コンティニュアム論を理解するには,もちろん本書を通読していただくのがいちばんなのだが,初めての読者には,導入としてあらかじめ前巻『アーカイブズ論――記録のちからと現代社会』の「翻訳にあたって」に掲載した「レコード・コンティニュアムとは」(坂口貴弘執筆)に目を通すことをお勧めしたい。

 (…後略…)

著者プロフィール

スー・マケミッシュ  (スー マケミッシュ)  (

モナッシュ大学アーカイブズ・システムの初代主任で,情報管理システム大学院の研究科長。乳がん知識オンラインプロジェクト,クレバー・レコードキーピング・メタデータ・プロジェクトなど,クレバー・レコードキーピング・メタデータ,アーカイブズ記述,リソース発見に関する大型の研究プロジェクトや標準開発に関わっている。InterPARESプロジェクトのオーストラリア・チームの代表者であると同時に,記述研究チームの共同代表。モナッシュ大学で記録とアーカイブズに関する大学院教育プログラムの責任者でもある。社会におけるレコードキーピングの役割,レコード・コンティニュアムの理論と実践,レコードキーピング・メタデータ,アーカイブズ・システムに関する多数の論考を発表している。アーカイブズ・システムに関する研究で博士号を取得。オーストラリア・アーキビスト協会の栄誉賞を授与された。

マイケル・ピゴット  (マイケル ピゴット)  (

1998年よりメルボルン大学の大学アーキビスト,ならびにアーカイブズ特別コレクションおよびグレンジャー博物館部長を務めてきた。それ以前には,オーストラリア国立公文書館,オーストラリア戦争記念館,オーストラリア国立図書館に勤めた。図書館学,歴史学およびアーカイブズ学における大学院レベル資格をもつ。専門職としての研究関心は,評価,アーカイブズ学教育,アーカイブズ史にある。彼は雑誌Archives and Manuscriptsの編集に携わったことを含めて長くオーストラリア・アーキビスト協会とのつながりをもち,1997年に協会賞を受賞した。また,協会の編集理事会,Kluwer Academic PublishersのシリーズThe Archivist's Library編集理事会のメンバーである。2003年,モナシュ大学情報管理・システム大学院の名誉リサーチ・フェローとなった。

バーバラ・リード  (バーバラ リード)  (

株式会社レコードキーピング・イノベーションの取締役・主任コンサルタント。15年以上にわたり記録・アーカイブズ・情報分野のコンサルティングに従事してきた。特にレコードキーピング・メタデータ,標準に準拠したレコードキーピングの枠組みと方針,ウェブ技術を活用したトランザクション管理,レコードキーピング・システムの機能要件を専門とする。記録管理のISO15489の制定を担当するTC46/SC11のオーストラリア代表委員の責任者,オーストラリア標準化機構の記録管理委員会IT21のメンバーである。リソース・ディスカバリーのためのメタデータ標準に関するAGLSワーキング部会の専門アドバイザーを務める。レコードキーピング・インスティテュートではレコードキーピングの教育・研修も担当している。レコードキーピング・メタデータの事業に関する国際集団アーカイビング・メタデータ・フォーラムのメンバーである。1994年から1998年まで,モナッシュ大学情報管理システム大学院の上級講師を務めた。

フランク・アップウォード  (フランク アップウォード)  (

政府部門におけるアーキビスト,データ・マネジャー,情報マネジャー,レコードキーピング・システム・アナリストとして,またコンサルタントとして勤務(1975~1988年)。その後,モナッシュ大学のアーカイブズ,記録,情報管理,ナレッジ・マネジメントの専門課程で講義。研究では1990年代初期のアカウンタビリティとレコードキーピングに関するスー・マケミッシュとの共同研究,およびレコード・コンティニュアムの理論家として最も著名であり,そのレコード・コンティニュアム・モデルは教師や実務家が広く参照し活用している。メルボルン大学で歴史学と教育学の大学院課程を修了。

安藤 正人  (アンドウ マサヒト)  (監修

国文学研究資料館名誉教授,元学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻教授。著作に『記録史料学と現代:アーカイブズの科学をめざして』(吉川弘文館,1998年),『アジアのアーカイブズと日本:記録を守り記憶を伝える』(岩田書院,2009年)など。

石原 一則  (イシハラ カズノリ)  (

元神奈川県立公文書館資料課長,元日本アーカイブズ学会会長。著作に『記録史料の管理と文書館』(北海道大学図書刊行会,1996年,共著),「記録の評価選別とレコード・スケジュール」(『アーカイブズ学研究』第13号,2010年)など。2016年没。

大木 悠佑  (オオキ ユウスケ)  (

独立行政法人国立公文書館統括公文書専門官室公文書専門官。学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻博士後期課程単位取得退学。著作に「アカウンタビリティを支える公文書管理制度とレコードキーパー:Australasiaの公記録法の視点から」(『アーカイブズ学研究』第29号,2018年)など。

坂口 貴弘  (サカグチ タカヒロ)  (

創価大学創価教育研究所講師。学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻修了。博士(アーカイブズ学)。著作に『アーカイブズと文書管理:米国型記録管理システムの形成と日本』(勉誠出版,2016年),『アーカイブズ情報の共有化に向けて』(岩田書院,2010年,分担執筆)など。

塚田 治郎  (ツカダ ジロウ)  (

日本アーカイブズ学会会員。著作に『入門アーカイブズの世界:記憶と記録を未来に』(日外アソシエーツ,2006年,分担翻訳)。2020年没。

平野 泉  (ヒラノ イズミ)  (

立教大学共生社会研究センターアーキビスト。学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻博士後期課程単位取得退学。著作に『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』(日外アソシエーツ,2016年,編訳)など。

保坂 裕興  (ホサカ ヒロオキ)  (

学習院大学文学部教授(大学院アーカイブズ学専攻担当)。日本アーカイブズ学会会長。著作に『岩波講座日本歴史第21巻 史料論』(岩波書店,2015年,分担執筆),「アーキビスト養成の国際的動向――能力保障型の人材育成」(『アーカイブズ学研究』第27号,2017年)など。

森本 祥子  (モリモト サチコ)  (

東京大学文書館准教授。著作に『アーカイブズの構造認識と編成記述』(思文閣出版,2014年,分担執筆),『レコード・マネジメント・ハンドブック:記録管理・アーカイブズ管理のための』(日外アソシエーツ,2016年,編訳),Do Archives Have Value?(Facet Publishing,2019年,分担執筆)など。

上記内容は本書刊行時のものです。