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統治不能社会 グレゴワール・シャマユー(著) - 明石書店
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統治不能社会 (トウチフノウシャカイ) 権威主義的ネオリベラル主義の系譜学 (ケンイシュギテキネオリベラルシュギノケイフガク)
原書: La société ingouvernable: une généalogie du libéralisme autoritaire

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発行:明石書店
四六判
472ページ
並製
価格 3,200円+税
ISBN
978-4-7503-5387-6   COPY
ISBN 13
9784750353876   COPY
ISBN 10h
4-7503-5387-6   COPY
ISBN 10
4750353876   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年4月20日
書店発売日
登録日
2022年4月8日
最終更新日
2022年5月6日
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紹介

すべての権力を市場の統治下に取り戻せ! フーコー、マルクス、ハイエクから対労組マニュアル、企業CM、経営理論まで、ネオリベラリズムの権力関係とその卑しい侵食の歴史を鮮やかに描き出し、現代の社会構造と市場の問題をえぐり出す名著、待望の刊行。

目次

序章

第Ⅰ部 言うことを聞かない労働者たち

第1章 労働者の不服従
第2章 人的資源
第3章 治安の悪化
第4章 組合との戦い

第Ⅱ部 マネジメント革命

第5章 神学的危機
第6章 倫理的マネジメント主義
第7章 マネージャを規律訓練する
第8章 カタラルシー

第Ⅲ部 自由企業への攻撃

第9章 私的統治の拠点
第10章 観念の闘争
第11章 どう反応するか?
第12章 企業は存在しない
第13章 警察的な会社理論

第Ⅳ部 異議申立者たちの世界

第14章 企業の活動家対抗策
第15章 支配的対話の産物
第16章 問題解決マネジメント
第17章 ステークホルダー

第Ⅴ部 新たな規制

第18章 ソフト・ロー
第19章 コスト・ベネフィット
第20章 政治的エコロジー批判
第21章 責任化する

第Ⅵ部 統治不能社会

第22章 民主主義の統治性の危機
第23章 チリでのハイエク
第24章 権威主義的リベラル主義の諸々の出自
第25章 政治にご退位ねがう
第26章 民営化のミクロ政治学

結論

シュミット=ハイエク主義の時代――訳者あとがきにかえて

 原注
 索引

前書きなど

はじめに

 本書はさまざまな軸から編まれている。こうした軸がさまざまに交わって、当時論じられた企業の統治性の危機が作りあげられる。ビジネス界を擁護する人びとからしてみれば、そのひとつひとつが取り組むべきあらたな難問、あらたな最前線なのである。
一 一企業が統治するのはまず労働者である。一九七〇年代初頭のマネジメントが直面したのは大規模な労働者の不服従運動だった。それにどう立ち向かうのか? 失われた規律をどう再建するのか? 以前の段取りが陳腐化したのであれば、なにがあたらしい労働ガバナンスの手法となりうるのか? さまざまな戦略が構想され論議された(第一部)。
二 しかし、服従関係の時間軸をさらにさかのぼると、こんどは株主-経営陣の関係に第二の危機が見えてくる。昔の経営者とオーナーならば、利潤の最大化が共通の利害関係だったろうが、株式会社といまや他人のビジネスのたんなる管理運営者となったマネージャとのあいだには、もはや共通の利害関係はない。それを念頭に、かれらには「マネジメント革命」への熱意が欠けているのではと危惧する者もいる。いかにマネジメント側を規律訓練し、あらためて株主価値に同調させるのか(第二部)。
三 時をおなじくして、会社の社会的・政治的環境には、過去に類を見ない脅威がちがう側面から浮かび上がってきた。資本主義に対する文化的・政治的な拒否感が強まるなか、諸々のあたらしい運動が巨大グループの経営陣に直接勝負をしかけたのだ。「自由企業体制に対する攻勢」として登場してきたものにいかに反応するか。用いるべき戦略について道は分かれる(第三部)。
四 とりわけ多国籍企業にたいする大規模なボイコットを皮切りに、「攻勢」が勢いを増し世界に広がっていくと、会社は新顔のコンサルタントに着目するようになる。従業員だけでなく、会社の外の告発者まで含めて、いかにマネージするのか。さらにはその先にある、ひどく混乱してきた「社会環境」にたいしては? あらたなアプローチとコンセプトが開発される(第四部)。
五 新興のエコロジー運動を中心とするイニシアティヴによって、あらたな社会・環境規制が制定される。社会運動の側面支援を受けたことで、垂直圧力、つまり公的介入にもあたらしいかたちが加わった。これらの規制案をいかに潰すか。理論面・実践面でなにをそれに対抗させるか(第五部)。
六 より根本的に言えば、異議申し立てが広まり、政府が介入するという二重の現象はなぜ当たり前のように頻繁にみられることになったのか? 民主主義-福祉国家の衰退によって、両者の合致は安定するにはほど遠く、むしろみずからの墓穴を掘ることになることが確認される。ネオコン主義から見てもネオリベラル主義から見ても、国家自体が統治不能に陥りつつあったのだ。ここからつぎの問いが発せられる。いかに政治を引きずり下ろすか。いかに民主主義を制約するか(第六部)。
 この探究を進めるにあたって、わたしはさまざまな分野にかんする雑多な情報源を拾い集めた。参照資料には「上品な」ものから「卑俗な」ものまで取り混ぜることにしたのだ。たとえば、ノーベル経済学賞が組合「スナイパー」のスペシャリストと並べてある、といった具合である。こうした資料は、「なにをなすべきか」という問いにたいし、それぞれなりのやり方で応える、戦いの文献であるという点で共通している。方法論や技法、戦術が披露されたこれらの文献は、あるものは非常に具体的である。たとえばマネージャ向けの実践ガイドやマニュアルに載っているようなものだ。またあるものはもうすこし綱領に近い。雑然とした戦略や全体的な実践について思いを巡らしたものだ。資料は全体的に、英語圏の出典を基本にして構成されている。マネジメント思考や会社の経済理論については、アメリカこそが急速に世界に広がるあたらしい概念の源だからである。
 文献が頻繁に参照されているが、それは引用を切り貼りすることで寄せ集めのテクストを再構築するためである。このようなテクストに含まれる諸々の断片は、だれかひとりの著者の手によるというよりは、さまざまな立場に特徴的な発言だという意味合いが強い。わたしはこうした発言に語らせたいと思っている。

 (…後略…)

著者プロフィール

グレゴワール・シャマユー  (グレゴワール シャマユー)  (

1976年、ルルド生まれ。バシュラール、カンギレム、フーコーというフランス認識論者の系譜に連なる科学技術の思想史家。高等師範学校フォントゥネ・サン・クルー校を卒業。リヨン、エコール・ノルマル・シュペリウールCERPHI(修辞・哲学・思想史研究所)に哲学研究員として所属。現在はパリ大学ナンテール校ほかで講義を担当。ラ・デクーヴェルト社の叢書「ゾーン」編集長も務める。本書の他、邦訳に『ドローンの哲学』(明石書店、2018)、『人体実験の哲学』(明石書店、2018)、『人間狩り』(明石書店、2021)がある。

信友 建志  (ノブトモ ケンジ)  (

2004年京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。
現在、鹿児島大学医歯学総合研究科准教授。専門は思想史、精神分析。
訳書にE.アリエズ、M.ラッツァラート『戦争と資本:統合された世界資本主義とグローバルな内戦』(杉村昌昭共訳、作品社、2019)、W.シュトレーク『資本主義はどう終わるのか』(村澤真保呂共訳、河出書房新社、2017)、イグナシオ・ラモネほか『グローバリゼーション・新自由主義批判事典』(杉村昌昭ほか共訳、作品社、2006)など。

上記内容は本書刊行時のものです。