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日本・アメリカ・フィンランドからみる 障害者虐待の実態と構造 増田 公香(著) - 明石書店
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日本・アメリカ・フィンランドからみる 障害者虐待の実態と構造 (ニホンアメリカフィンランドカラミルショウガイシャギャクタイノジッタイトコウゾウ) 今われわれ社会に求められることとは (イマワレワレシャカイニモトメラレルコトトハ)

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発行:明石書店
A5判
224ページ
上製
価格 3,600円+税
ISBN
978-4-7503-5292-3   COPY
ISBN 13
9784750352923   COPY
ISBN 10h
4-7503-5292-6   COPY
ISBN 10
4750352926   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年5月26日
書店発売日
登録日
2022年4月14日
最終更新日
2022年6月13日
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紹介

やまゆり園事件発生以前にある知的障害者施設で起きた職員による障害者虐待事件を契機に著者が行った調査、その後の全国調査を中心に、海外の施設との比較も交え、日本の障害者虐待の深刻な状況を分析し、問題解決にむけた政策提言を行う。

目次

 はじめに

第1章 ある障害者虐待事件、そして生まれかわったA園
 第1節 ある障害者虐待事件、そして生まれかわったA園
 (1)A園での障害者虐待事件――インタビュー調査をとおしてみえてきたこと
 (2)そして生まれかわったA園
 (3)現在のA園から学ぶこと
 第2節 B県内の施設支援者のアンケート調査をとおしてみえてきたこと
 (1)はじめに
 (2)研究方法
 (3)結果
 (4)考察
 (5)まとめ
 第3節 生まれかわったA園の方策
 (1)A園のインタビュー調査及びアンケート調査からみえてきたこと
 (2)A園の支援現場において改善した方策
 (3)まとめ

第2章 現状における障害者虐待を取り巻く実態把握
 第1節 障害者支援事業所で支援に関わる支援者に対する意識調査――全国3,000名からの声をもとに
 (1)調査の方法と概要
 (2)労働環境に対する満足度及び状況
 (3)先輩職員から受けた助言
 (4)利用者に対する不適切な行為
 (5)事業所の権利擁護に対する取り組み
 (6)性別による不適切な行為に対する意識の相違
 (7)利用者に対する不適切な行為への関連要因
 (8)全国の調査結果から明らかになったこと
 (9)今後に向けて求められる支援施策
 第2節 C県における特別支援学校教員の意識調査からみえてきたこと
 (1)C県における特別支援学校の教員に対する意識調査の概要
 (2)回答者の基本的属性
 (3)回答者と障害のある人々との関係
 (4)回答者の教育現場における状況
 (5)教育現場における困難な状況
 (6)児童に対する不適切な行為の経験
 (7)将来について
 (8)障害者虐待防止法の通報対象に関する見解
 (9)まとめ

第3章 障害者虐待の動向――海外の例を中心に
 第1節 障害者虐待に関する研究
 (1)日本における研究の動向
 (2)海外における研究の動向
 (3)先行研究から明らかになったこと
 第2節 アメリカにおける障害者虐待施策――カリフォルニア州における施策 ランターマン発達障害者サービス法を中心に
 (1)カリフォルニア州における障害者施策
 (2)カリフォルニア州における障害者虐待対応施策
 (3)考察
 第3節 フィンランドにおける障害者虐待施策
 (1)フィンランドの概要
 (2)フィンランドの障害者福祉政策
 (3)フィンランドにおける障害者虐待対応
 (4)フィンランドにおける支援員の労働環境
 (5)フィンランドにおける障害のある児童への教育
 (6)まとめ

第4章 そして今われわれ社会に求められることとは
 第1節 支援者・支援の現場に求められること
 (1)障害の理解
 (2)エビデンスに基づいた支援
 (3)ストレングスモデルの導入
 (4)可視化による支援
 第2節 組織に求められること
 (1)セルフチェックの導入
 (2)マニュアルの作成と情報の共有化
 (3)スタッフの専門性の重視
 (4)先輩や上司からの適切な助言
 (5)プリセプター・メンター制度の導入
 (6)適切なガバナンス体制と予防的視点を取り入れたチームワーク
 (7)地域に開かれた施設へ――密室化の打破
 (8)スーパービジョン・ピアスーパービジョン体制の構築
 第3節 社会に求められること
 (1)職員配置の増加
 (2)有資格者の増加
 (3)障害者虐待通報窓口の機能
 (4)第三者評価機関等による外部からのチェック機能
 (5)支援者がおかれている状況への理解――利用者からの不適切な行為 クライエントバイオレンス
 (6)所得や休暇等の労働環境の保障の構築
 (7)異業種間の交流
 (8)障害者虐待防止法の改正
 (9)虐待概念の拡大
 (10)地域住民への啓蒙
 (11)まとめ

むすびに代えて

 文献一覧

 おわりに

 資料
  障害福祉サービス事業所 責任者 の皆様方へ
   アンケート(調査)協力のご依頼
  アンケート調査
   「支援者の環境と不適切な行為等との関連性」
   「特別支援教育現場における教員の意識調査」アンケート

 索引

前書きなど

はじめに

 私自身が学生という立場で障害者虐待の事象に遭遇して30年以上の月日が流れた。くる日もくる日も繰り返される状況を目の当たりにしながらも、何もできなかった当時の私は「いつか障害者虐待の事象を客観的にとらえたい」と強く考えたものだった。その後さまざまな調査や先行研究を踏まえ、前著『当事者と家族からみた障害者虐待の実態把握─数量的調査が明かす課題と方策』(明石書店、2014年)を出版した。
 そしてある障害者虐待事件にかかわらせていただいた。虐待の背景が明らかになっていく中で、人間関係やガバナンス体制等さまざまなことが明らかとなっていった。だがそこには先行研究等には記載されていない可視化できないさまざまな問題が複層化し存在していた。はたしてこのような問題をどのように解決するのだろうか、と暗闇の日々だった。しかしながら時を経た2021年の秋、A園を再訪させていただくと、現施設長や若い支援者たちが中心となり見事に問題解決をし、大きな変貌をとげていた。理論ではなく現場において施設長や若い支援者たちの努力と発想で、さまざまな取り組みが展開されていた。その変貌ぶりをみて、障害者虐待の解決の糸口は構築されたと深く感動した次第である。
 またここ数年科学研究費基盤研究(C)「障害者虐待に関する国際研究~日本・アメリカ・フィンランドの比較~ 研究課題番号:15K04009」を基軸に、さまざまな調査を展開させていただくことができた。
 2018年には日本全国の知的障害者支援現場で働く支援者1万人余りを対象に、障害者支援現場で働く支援者の労働環境と障害者虐待との関連性の実態把握を行った。そのデータを数量的に分析していく中で、新たな知見が明らかになっていった。そして支援者の多くは、“支援”という仕事に大変やりがいをもって臨んでいるということが改めて確認された。その一方で利用者からの不適切な行為、いわゆるクライエントバイオレンスの事実も明らかになった。
 2020年には特別支援学校の教員に対して障害者虐待に関する意識調査を実施することができた。これは私のここ数年間で悲願の研究だった。そしてその結果、大変前向きな意見をいただくことができた。本当に勇気をもって教育現場の実態を教えていただけたことは大変感謝している。
 さらにその間、アメリカ・カリフォルニア州やフィンランドの視察を行うことができた。カリフォルニア州においてはランターマン発達障害者サービス法という州独自の法律のもと、地元の大学の研究機関で考案されたエビデンスに基づいた支援がアウトリーチの方法で活発に展開されており、効果的な支援展開が行われていたことに大変驚いた。フィンランドでは、労働時間をはじめ夏季を中心とした長期休暇の保障が整備され、施設で働く支援者はもとより国民全体にゆとりある労働環境が保障されていることに、改めて多くのことを学ばせていただいた。
 カリフォルニアもフィンランドも日本から飛行機でわずか約10時間で移動できる。この同じ地球上でわずか10時間移動するだけで、これほど価値観の異なる社会が存在することに改めて驚いた次第である。
 本著は、私自身のここ数年間の障害者虐待に関する調査研究を多角的にとらえ包括的にまとめたものである。
 この結果をどうか障害のある方々、殊に知的障害のある方々の支援現場で還元していただければ幸甚である。
 そのうえで今後障害のある方々の支援において、われわれ日本社会に求められる環境構築について考えていく一助になれればと願う次第である。

著者プロフィール

増田 公香  (マスダ キミカ)  (

九州看護福祉大学社会福祉学科 教授。
日本女子大学文学部社会福祉学科卒業。日本女子大学大学院文学研究科博士課程前期社会福祉学修了(社会学修士)。
ワシントン大学ジョージウォーレンブラウン社会福祉大学院修士課程修了(M.S.W. :Master of Social Work)。
淑徳大学大学院社会学研究科博士課程後期社会福祉学専攻修了。
博士(社会福祉学)。
聖学院大学人間福祉学部・山口県立大学社会福祉学部・横浜市立大学国際教養学部・都市社会文化研究科教授を経て現職。
主要著書に、『当事者と家族からみた障害者虐待の実態――数量的調査が明かす課題と方策』(明石書店、2014)、『ダウン症をめぐる政治――誰もが排除されない社会へ向けて』共訳(明石書店、2018)、「カリフォルニア州における障害者虐待対応システムに関する考察」『横浜市立大学論叢社会科学系列』Vol.69 No.3, 2017、「障害者権条約の実行状況の評価と論点――26か国への総括所見から――差別禁止(第5条)」『リハビリテーション研究』45(3)8-12, 2015、その他『相談援助実習・相談援助実習指導 第3版』(共編著、弘文堂、2018)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。