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心の病理学者 アドルフ・マイヤーとアメリカ精神医学の起源
原書: Pathologist of the Mind: Adolf Meyer and the Origins of American Psychiatry
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年4月20日
- 書店発売日
- 2021年4月30日
- 登録日
- 2021年4月6日
- 最終更新日
- 2021年5月20日
紹介
20世紀前半の精神医学界でもっとも権威と影響力を持っていたものの、現在では忘れ去られた精神科医アドルフ・マイヤー。診療記録や書簡などの膨大な資料を渉猟し、彼の半生や臨床実践、そして現代精神医学への影響を解き明かし、歴史の空白を埋める1冊。
目次
謝辞
はじめに
アドルフ・マイヤーの自己表現は光る霧
資料と範囲
アドルフ・マイヤーという人物
アドルフ・マイヤーの文化的・科学的背景
各章の概略
第1章 方法としての病理学――アドルフ・マイヤーの精神医学という臨床科学の構想
医学教育
移住
イリノイ州カンカキー
マサチューセッツ州ウースター
ニューヨーク州
第2章 生物学としての心――アドルフ・マイヤーの精神生物学の概念
精神生物学の背景
実験科学としての精神生物学
科学哲学としての精神生物学
臨床科学としての精神生物学
第3章 ボルチモアのユニークな土壌――ジョンズホプキンス病院フィップス精神科クリニック
ジョンズホプキンスのための精神科クリニック
アドルフ・マイヤーにとっての精神科クリニック
病人のためのクリニック
精神生物学のための精神科クリニック
第4章 アメリカ精神医学の洗礼を受けた子ども――マイヤー派の病歴
人生を開ける
自然内実験
データの解釈と精神医学の知識への変換
反応型
第5章 最高の矯正医療センター――アドルフ・マイヤーの治療実験
「習慣訓練」と「作業療法」
レクリエーション
水治療
拘束、鎮静、隔離
食事、排泄、睡眠
第6章 意識下の適応――マイヤー派精神医学の精神療法と精神分析
意識下の思考、医療化された精神療法、精神分析
置換反応と習慣障害
マイヤー派の精神療法
症例研究――ヘンリエッタとアーヴィング
結論
訳者あとがき
原注
索引
前書きなど
はじめに
(…前略…)
各章の概略
本書の初めの2章はタイトルの説明である。第1章は病理学者としてのマイヤーと精神病院の医療を精神医学という臨床科学に変えようとした彼の努力に焦点を当てている。精神医学という科学の種が果実を実らせるために、彼はこの専門分野はまず土壌をきれいにして耕す地道な作業をしなければならないと考えていた。(……)
第2章はマイヤーの心についての生物学的理論を扱う。彼が臨床科学としての精神医学を操作するために考案した概念である、精神生物学について詳しく説明する。それは精神医学の理論と臨床を病的な脳から混乱したパーソナリティへと転換するものだった。(……)
精神生物学の基本的な前提条件は、身体の神経器官(解剖学的でもあり生理学的でもある)の活動とその精神活動と行動としての表出は、人体の単一の適応反応を構成するというものだった。生物学者が適応機制と呼んだこのような適応を、マイヤーは精神生物学的反応と名づけ、それを分析の基本単位にした。(……)
残りの章では、1913年から1917年にかけてジョンズホプキンス大学で、マイヤーがどのように方法としての病理学を生物学としての心と結びつけたのかを探求する。第3章のテーマは、彼の権力の主たる道具となったヘンリー・フィップス精神科クリニックである。フィップスクリニックは、マイヤーの指示で建築家グロスブナー・アタベリーが設計した88床の教育・研究病院だった。その母体施設と同様に、無料、一部補助、私費の患者を性別で分けた病棟で治療した。(……)
第4章では、フィップスクリニックでマイヤーが行った研究と診療を分析する。エミール・クレペリンの方法を参考にした彼の診療システムには、心の生物学的な視点から科学的医学の方法と期待を調査しようとした試みが表れている。(……)
第5章では、観察、記録、分析、精神生物学のデータの応用が果てしなく繰り返されて実践された、実際のマイヤー派精神医学を分析する。筆者はこの革新的な方法をマイヤーの「治療実験」と呼ぶ。20年前にアメリカの精神病院で彼を驚かせた施設の状況とは対照的に、フィップスクリニックでマイヤーは医学研究と治療を単一の臨床活動に統合した。(……)
第6章のテーマであるマイヤー派の精神療法は、アメリカのプラグマティズムの道具主義原則に基づいている。マイヤーは精神療法を有機体(精神科患者)とその環境(治療者はその一部)の動的な相互作用だと考えた。そのため、その目標は患者の生活体験と適応習慣が中心だった。彼は、精神療法を精神科医と患者の共同作業だと考えた。彼の目標は、その精神病理の原因になった出来事を再構成し、そして理想としては、その後の展開を回復の方向に修正することだった。(……)
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。