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取引情報
思想・文化空間としての日韓関係
東アジアの中で考える
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年3月30日
- 書店発売日
- 2021年4月19日
- 登録日
- 2021年3月19日
- 最終更新日
- 2021年4月27日
紹介
日韓関係が悪化し、嫌韓と反日のスローガンが騒がしいなか、日韓の研究者が両国の対話の糸口を見出そうとシンポジウムを開催した。本書は、思想的、文化的、歴史的な開かれたコンテクストに日韓関係を接続させ、台湾・沖縄といったより広く東アジア、またジェンダーの視点から考える論集である。
目次
まえがき
第1部 日韓関係という思想空間
第1章 〈十七条憲法〉の和と元暁の和諍――真の対話のために[朴奎泰]
第2章 ポストコロアニアルな視角から眺めた戦後の日韓関係――1990年代以降を中心に[佐野正人]
第3章 日韓関係を歪める言葉――ねじ曲げられた「恨」[真鍋祐子]
第4章 歴史から見た韓日関係――『海東諸国紀』と『看羊録』の視角から[朴秀哲]
第2部 東アジアという文化空間
第5章 「わたしが一番きれいだったとき」――茨木のり子と文貞姫の詩的コミュニケーション[金貞禮]
第6章 日本の物語と韓流ドラマにおける〈背負い(おんぶ)〉のナラティブ[平林香織]
第7章 海を渡る記憶と遠ざかる身体――金在南「鳳仙花のうた」と崎山多美「アコウクロウ幻視行」[呉世宗]
第8章 東アジアにおけるレズビアン・フェミニズムの運動・理論・文学――その歴史と経験の共有は可能か?[橋本恭子]
あとがき
前書きなど
まえがき
(…前略…)
そのような日韓関係を開かれたコンテクストに接続させて考えていくという意図のもとに、本書は第1部「日韓関係という思想空間」、第2部「東アジアという文化空間」の二部によって構成されている。
第1部「日韓関係という思想空間」では、日韓関係を主に他者理解やコミュニケーションの問題として捉え返そうとする4本の論文からなっている。それぞれ思想史や歴史学、マスメディア研究といった多様なバックグラウンドを持ったものだが、いずれも「貿易紛争」に象徴的に表れたような日韓のコミュニケーションのあり方に向き合うアクチュアルな問題意識を持った論考である。第1章の朴奎泰「〈十七条憲法〉の和と元暁の和諍――真の対話のために」は2020年の全南大シンポジウムでの基調講演として発表されたもので、十七条憲法の「和」と元暁の「和諍」とに表れた両国の「和」思想を比較しながら、それをコミュニケーションの問題に接続させ、多声的な声の響く「ポリフォニー」としての「和」のあり方を和解のヴィジョンとして提出している論文である。第2章の佐野正人「ポストコロニアルな視角から眺めた戦後の日韓関係――1990年代以降を中心に」は、2019年の「貿易紛争」に表れた日韓のコミュニケーションの齟齬の問題を、1990年代以降の日韓のマスメディアの変化の中で照明していく。(……)真鍋祐子による第3章「日韓関係を歪める言葉――ねじ曲げられた『恨』」は、「恨(ハン)」という韓国に独特の情緒が、戦後の日韓関係の変動と紛糾の中で「理解できない韓国」を解釈する上での日本的な解釈の枠組みを規定するキーワードとして浮上してきたことを論じる。(……)
第2部「東アジアという文化空間」は、日韓の問題をより広い東アジアという文化空間の中から捉え返そうとする4本の論考からなっており、特にジェンダー的な問題を扱った論が中心となっている。第5章の金貞禮「『わたしが一番きれいだったとき』――茨木のり子と文貞姫の詩的コミュニケーション」は、戦後に「わたしが一番きれいだったとき」という同じタイトルで詩を書いた日本の茨木のり子と韓国の文貞姫という二人の女性詩人を取り上げ、戦争と独裁、愛と革命が相互に交差する日韓の戦後女性史の一ページを描き出す。(……)平林香織の第6章「日本の物語と韓流ドラマにおける〈背負い(おんぶ)〉のナラティブ」は、『善光寺縁起』に現れる阿弥陀如来を背負う説話や『伊勢物語』の「芥河」の段に現れる「女」を背負って逃げる「男」のナラティブなどに基づいて、「背負い」の持つ聖なる性格を通文化的視点から描き出している。(……)第7章の呉世宗「海を渡る記憶と遠ざかる身体――金在南『鳳仙花のうた』と崎山多美『アコウクロウ幻視行』」は、いずれも慰安婦をテーマとした金在南「鳳仙花のうた」と沖縄出身の崎山多美の「アコウクロウ幻視行」という二つの小説を取り上げ、韓国と沖縄、南洋をまたいだ空間的移動の中で遠ざかった身体と記憶とにどのように出会い直していくかという問題を扱っている。(……)橋本恭子の第8章「東アジアにおけるレズビアン・フェミニズムの運動・理論・文学――その歴史と経験の共有は可能か?」は、近年台湾で盛んとなっているLGBT文学(台湾では「同志文学」と呼ばれる)をテーマとして取り上げ、その民主化運動との関わりや他の社会運動との連帯関係といった背景について詳細に掘り下げている。(……)
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。