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東南アジアと「LGBT」の政治
性的少数者をめぐって何が争われているのか
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年4月15日
- 書店発売日
- 2021年4月6日
- 登録日
- 2021年2月8日
- 最終更新日
- 2021年5月19日
書評掲載情報
2021-06-05 | 毎日新聞 朝刊 |
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紹介
東南アジアでは多様なジェンダーや性が歴史的に存在してきた一方で、西洋発のLGBT運動は彼らの多くを支配的な規範に包摂されつつ周縁化するきらいがある。本書はそのような現状を議論し、欧米の規範に画一化されない性の多様性への新たな理解を開く。
目次
序章 性的少数者をめぐって何が争われているのか――東南アジアの視座から[日下渉・伊賀司]
第一部 性的少数者の名前と表象
第一章 性の多様性を表す語彙――少数派の名づけと名乗り[今村真央]
第二章 現代東南アジアにおける性的少数者映像、その類型化の試み[坂川直也]
第二部 国民・宗教・家族による排除
第三章 反LGBT運動化するインドネシアの精神医学[岡本正明]
第四章 希望連盟政権下のセクシュアリティ・ポリティクス――「新しいマレーシア」の下でも進まなかった性的少数者の政治・社会的包摂[伊賀司]
第五章 「侵略者」と戦うフィリピン・カトリック教会――「性・生殖・家族」をめぐるナショナリズム[宮脇聡史]
第三部 資本主義による条件付き包摂
第六章 冷戦期タイにおける性的少数者の空間形成――パッタヤー歓楽街を事例として[日向伸介]
第七章 シンガポールにおける性的少数者の人権と市民社会[田村慶子]
第四部 家族・国民への条件付き包摂
第八章 ベトナムは「性的少数者に寛容」なのか?――同性婚と性別変更にみる政策変容と社会規範[小田なら]
コラム ラオスの首都ビエンチャンにおける、男性同性愛的欲望を持つ人々に関する研究へ向けて[大村優介]
第五部 「公式の政治」が招く齟齬・分断・排除
第九章 現代ミャンマーにおけるLGBT権利擁護運動の展開と性的少数者の地位の変容[小島敬裕]
第一〇章 公共の権利、日常の尊厳、親密な悲しみ――フィリピンにおける「LGBT」と「バクラ」[日下渉]
第一一章 排除される「人権」/包摂される「ダイバーシティ」――大阪市における「同性パートナーシップ宣誓制度」の制定過程から[新ヶ江章友]
第六部 「日常の政治」によるもう一つの「解放」
第一二章 カンボジアの性的少数者たち――外からの影響と内から生み出される運動[初鹿野直美]
第一三章 教会にかかる虹――インドネシアキリスト教会と性的少数者[北村由美]
終章 性的なことは政治的The Sexual is Political――市場・国家・宗教・人権・生存を問う「LGBT」[青山薫]
あとがき[日下渉]
索引
著者情報
前書きなど
序章 性的少数者をめぐって何が争われているのか――東南アジアの視座から[日下渉・伊賀司]
(…前略…)
4 本章の構成
最後に、これらの議論を支える各章の内容を紹介しよう。まず第一部では、性的少数者の呼び名と映像表象をめぐる政治に焦点を当てる。(……)
各国の事例研究は、多様な読みに開かれているが、ここでは性的少数者への包摂と排除の動態に着目して、グループ分けをした。
第二部では、支配勢力が、国民・家族・宗教を絡み合わせて「善き市民」を定義し、性的少数者を排除する論理と実践を取り上げる。(……)
第三部では、資本主義が、いかに「善き市民」を包摂的にするのかに着目する。(……)
第四部では、家族を構成する「愛」やナショナリズムを訴えて、「善き市民」への参画を求めるLGBT運動に焦点を当てる。(……)
第五部では、性的少数者の権利を求める公式の政治が、当事者のニーズから乖離したり、新たな分断や排除を生み出す危険に着目する。(……)
終章(青山薫)は、主に地域研究者の手による各章の議論を、ジェンダー・セクシュアリティ研究の視座から整理する。そして、「LGBT」という言葉が様々な形で政治利用され、承認と権利の希求と獲得が性的少数者の間でも不均衡に行なわれてきた結果、そこに従来込められていた「連帯」の意味が「分断」を象徴するものにかわりつつあると論じる。(……)
上記内容は本書刊行時のものです。