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日本のオンライン教育最前線
アフターコロナの学びを考える
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年10月1日
- 書店発売日
- 2020年10月1日
- 登録日
- 2020年9月23日
- 最終更新日
- 2021年4月13日
紹介
コロナ休校で明らかになった日本のデジタル教育の遅れ。子どもたちの学びを止めないために今何をすればよいのか。世界の動向、国内の先進自治体や学校現場、民間の教育産業の取組を通して、AI×データ時代の本格到来を前に急激に変化する学びの最前線をお伝えする。
目次
プロローグ 動き始めた日本のデジタル教育[石戸奈々子]
Chapter1
学校でICTを使うのが当たり前の社会に――GIGAスクール構想の課題と展望[インタビュー:高谷浩樹]
Chapter2
コロナ休校で、海外の学校はどう動いたか?――世界各国の取組から学ぶ[インタビュアー:石戸奈々子]
2-1 中国のオンライン授業
2-2 アメリカのオンライン授業
2-3 オランダのオンライン授業[吉田和充]
2-4 ドイツのオンライン授業
2-5 マレーシアのオンライン授業
Chapter3
コロナ休校で、日本の学校はどう動いたか?――日本各地の取組から学ぶ
3-1 [広島県]緊急時だからこそ、長の決断でできることをやる[平川理恵]
3-2 [熊本市]できることからなんでも取組む、できないことをできるようにする[遠藤洋路]
3-3 [尼崎市]生徒の学習支援にクラウドサービス「Box」を活用[松本眞]
3-4 [京都市]「1人1台」の端末環境を整備し、子どもたち全員に届く学習支援を[在田正秀]
3-5 [青森市]遠隔授業が不登校の子どもにどう影響をもたらしたか[成田一二三]
3-6 [千葉大学教育学部附属小学校]休校初日から全校児童にオンライン学習を実施[大木圭/小池翔太]
Chapter4
コロナ休校で、民間の教育産業はどう動いたか?――塾・IT企業・テレビ放送から保護者の反応まで
4-1 [英進館]コロナ休校への学習塾の対応[筒井俊英]
4-2 [Google for Education]「学びを止めない」を実現するために今、必要なこと[スチュアート・ミラー/谷正友]
4-3 [ロイロノート・スクール]アフターコロナ時代のオンライン授業を「共創」する[杉山竜太郎/和田誠/野中健次]
4-4 [NHK]NHKでの休校対応に関する取組[中村貴子]
4-5 [保護者有志]オンライン教育の実施に向け保護者有志がどう動いたか[平井美和/吉澤卓]
コラム
経済産業省のコロナ休校対策
「#学びを止めない未来の教室」(マナトメ)の90日[浅野大介]
Chapter5
アフターコロナで広がるAI・教育データ活用の可能性
5-1 [ギリア]アフターコロナ時代のAIと教育[清水亮]
5-2 [LasTrust]ブロックチェーンの活用で教育DXが加速する[圷健太]
5-3 [九州大学]学習履歴データ活用の重要性について[安浦寛人]
エピローグ アフターコロナ教育を構想する[石戸奈々子]
前書きなど
プロローグ 動き始めた日本のデジタル教育[石戸奈々子]
2020年、日本のデジタル教育が大きく動きます。学校教育法等の改正により2019年度からデジタル教科書が使用できるようになりました。2019年6月28日には「学校教育の情報化の推進に関する法律」が公布・施行。学校教育情報化施策を国が総合的かつ計画的に策定・実施し、地方自治体に推進計画を定める努力を課す等を内容とし、学校教育情報化を大きく進展させるエンジンとなる法律です。
そして2019年12月、端末とネットワークを一体的に整備することで、多様な子どもたち一人ひとりに個別最適化された創造性を育む教育を全国の学校現場で実現させるGIGAスクール構想が始動しました。令和元(2019)年度補正予算額2318億円が計上され、いよいよ1人1台情報端末を持って学習する環境整備の準備が整ったと言えます。さらには、2020年度よりプログラミング教育の必修化も始まります。
いよいよ本番! そんな最中に起きたのが新型コロナウイルス感染症拡大による全国的な、いや世界的な学校の臨時休業でした。子どもたちの学びを止めないためにどうすればいいか。世界中が次々とオンライン授業を導入する中で、日本は双方型のオンライン授業を実施するのはわずか5%にとどまりました(4月16日時点での文部科学省調査)。
その背景には学校のICT環境整備の遅れがあります。教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は5.4人に1台(2019年3月時点)。10年前に7人に1台でしたが、1人1台を目指すと言いながら、遅々として進みませんでした。教室の無線LAN整備は34.4%にとどまっています。
学校の中でも外でもコンピュータやインターネットを使う児童生徒の割合は、日本はOECD最低。日本は学校ICT後進国だったのです。
産業界にしろ、行政などの公的分野にしろ、情報化・デジタル化の必要性や重要性が語られて久しい。効率性を高め、生産性や創造性を増し、知識やコミュニケーションを豊かにする。どの国においても、社会の各方面で情報化の効用が認知され、ICTが日用品化して、ごく自然に利用されるようになりました。
しかし、今回のコロナ休校における学校の対応はアナログ世界そのものでした。先生は各家庭に順番に電話で連絡をする。自宅学習用に紙のプリントが大量に用意され、先生方が一軒一軒ポスティングしてまわる。世の中はAI/IoTが支えるSociety5.0に移行しようとしている中、学校はデジタル化すら済んでいない、Sosiety4.0にすらたどり着いていなかった現実を社会が知ることとなります。
そのような世論が届いたからか、補正予算2318億円に加え、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策予算に2292億円が盛り込まれ、2023年度の目標時期を本年度中に前倒しすることとなったのです。
もちろん環境整備完了を待つことなく、今この瞬間の休校対応にも取組まねばなりません。文部科学省(以下、文科省)は、平常時のルールにとらわれることなく、家庭の端末の活用や学校の端末の持ち帰り等の工夫により、ICTを最大限に活用することを求めました。これまでを考えると異例とも言える通知です。そして各自治体、各学校が試行錯誤しながらコロナ禍でのオンライン教育に取組むこととなります。
新型コロナウイルスという未曾有の出来事が、大きな危機感をもたらし、結果として学校ICT環境整備の動きを加速させたとも言えます。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。