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南インドの芸能的儀礼をめぐる民族誌 古賀 万由里(著) - 明石書店
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南インドの芸能的儀礼をめぐる民族誌 (ミナミインドノゲイノウテキギレイヲメグルミンゾクシ) 生成する神話と儀礼 (セイセイスルシンワトギレイ)

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発行:明石書店
A5判
344ページ
上製
価格 4,800円+税
ISBN
978-4-7503-4671-7   COPY
ISBN 13
9784750346717   COPY
ISBN 10h
4-7503-4671-3   COPY
ISBN 10
4750346713   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年5月
書店発売日
登録日
2018年4月24日
最終更新日
2018年5月1日
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紹介

ケーララ州の不可触民による宗教儀礼「テイヤム」を事例に、儀礼とヒンドゥー神話が地域社会の人々にいかに解釈され、社会や時代の変化により変容していくのかを現地調査を基に分析。儀礼が地域を超えて生成されていくパフォーマンスであることを活写する。

目次

序章
 第1節 目的
 第2節 先行研究
  1.儀礼とインド村落社会
  2.ヒンドゥー文化二元論とその限界
  3.儀礼・パフォーマンス研究
  4.認知人類学の可能性
  5.ケーララの文化人類学と民俗学
  6.テイヤムをめぐる文化人類学と民俗学
 第3節 調査地の概要
  1.ケーララと調査地の選定
  2.カリヴェルール村の概況
  3.カリヴェルール村の政治史
  4.カースト
  5.家族・婚姻関係、タラワードゥ
  6.年中行事
  7.テイヤム寺院

第1章 テイヤムの歴史と儀礼構成
 第1節 テイヤム伝承と歴史にみられる王権、ブラーマン、儀礼
  1.テイヤム儀礼の祖にまつわる伝承
  2.テイヤム儀礼における寺院の権利と従属関係
  3.ブラーマンと王と支配カーストの力関係
 第2節 儀礼の過程
  1.儀礼の手順
  2.化粧と衣装の象徴性
  3.「憑依」の仕方
  4.テイヤム儀礼とブラーマン儀礼の相違点
 第3節 神霊を扱う人々
  1.テイヤムになる人――テイヤッカーラン
  2.神の代理人――コーマランとヴェリッチャパードゥ
  3.炎を灯す人――アンディッティリヤン
  4.年長者――アッチャン
  5.剣を渡す人――ノーッティリックンナ
  6.供物を作る人――カラシャッカーラン
  7.王――コーイマ
  8.司祭――ブラーマン
  9.司祭と霊媒、王の力関係
 第4節 祀られる神霊
  1.女神
  2.戦死した英雄神
  3.祖先神・死霊
  4.動物神・蛇神
  5.妖術神
  6.神々のパンテオン

第2章 テイヤムの実践
 第1節 個人の祈願による奉納
 第2節 ブラーマンのテイヤム儀礼
  1.地域のブラーマン地主の事例
  2.テイヤム寺院を司るブラーマン
  3.ブラーマンとテイヤム
 第3節 ナーヤル・カーストとテイヤム儀礼
  1.カルワッチェーリ・タラワードゥの事例
  2.クルンディル・タラワードゥの事例
  3.地域の王とテイヤム祭祀
 第4節 カースト寺院
  1.神霊の複合的祭祀
  2.祭礼での役職と寺院委員会
  3.テイヤッカーランへの報酬
  4.パートゥ祭とプーラム祭
  5.カースト・コミュニティとテイヤム祭祀の組織化
 第5節 タラワードゥ寺院から村落寺院へ
  1.祭祀にみられる小王の権威
  2.地域を治めた5人の王の存在
  3.タラワードゥ寺院の公共化
 第6節 カースト大寺院
  1.寺院の組織、役職
  2.大祭での儀礼
  3.文化プログラム
  4.14年後のペルンカリヤーッタム
  5.多元的空間と解釈によって生成されるテイヤム
 第7節 私の神から公の神へ

第3章 生成される神話
 第1節 神話のテキスト化――口承から書承、そして画承へ
  1.伝承の形態と機能
  2.物語の生成
 第2節 錯綜する伝承
  1.ムッチローットゥ女神
  2.ヴィシュヌムールッティ神
 第3節 ムッタッパン信仰の発展
  1.ムッタッパン――トライブの神からナショナルな神へ
  2.トライブの神
  3.ムッタッパンのヒンドゥー化――ナーヤナールの支配
  4.巡礼地化とティーヤの台頭
  5.民衆の神から脱地域的な神へ
 第4節 社会批判の神――ポッタン・テイヤム
  1.殺された不可触民の話
  2.シャンカラーチャーリヤの話
 第5節 テイヤム神話におけるサンスクリット文化と民俗文化の接合

第4章 動態的テイヤム儀礼
 第1節 儀礼の再生
  1.相続問題
  2.土地所有問題
  3.地域文化の希求とつながり
  4.不幸の除去策としてのテイヤム儀礼
 第2節 不可触民の社会的地位の変化
  1.不可触民研究
  2.カンナン・ペルワンナーンの生い立ち
  3.晩年の生活
  4.社会的地位の変化
  5.個人と社会によるテイヤム認識
 第3節 儀礼の政治性
  1.儀礼からアートへ
  2.ケーララ州の文化活動
  3.テイヤムの舞台公演をめぐる論争
  4.儀礼と政治的イデオロギー
  5.商業主義と観光化
  6.イデオロギーとテイヤム認識
 第4節 テイヤム祭の拡大と観方の変化
  1.メディアとテイヤム
  2.タラワードゥに集う人々
  3.劇場化するテイヤム
  4.テイヤムに取り込まれる人々

終章
 第1節 「サンスクリット化」とヒンドゥー二元論再考
 第2節 儀礼から生成的パフォーマンスへ
  1.悪魔祓いとしてのテイヤム
  2.信仰の対象としてのテイヤム
  3.アートとしてのテイヤム
  4.イメージのフレーミング
  5.演出家‐パフォーマー‐観衆関係
  6.儀礼およびアートとしてのパフォーマンス
  7.象徴の解釈と環境
 第3節 結論

 資料
  1.ムッタッパンのトーッタム
  2.ポッタンのトーッタム

 あとがき
 参考文献
 索引

前書きなど

序章

第1節 目的

 (…前略…)

 本書の構成は以下の通りである。
 序章では、本論の目的と、先行研究としてインドを中心とした儀礼研究から、ヒンドゥー文化二元論と、サンスクリット化論の限界について論じる。また、ケーララ州を対象とした先行研究をあげ、対象となるカーストに偏りがみられる点を指摘し、テイヤム儀礼に関する研究では、村落社会との関連で捉えた民族誌が少ないことを指摘する。また調査地の概況として、カーストや婚姻関係、年中行事等について記述する。
 第1章では、テイヤム儀礼の歴史と慣習をみることにより、カースト関係が「ブラーマン」対「非ブラーマン」の枠組みでは理解できないことを示す。テイヤム儀礼では、村落社会の底辺に位置する不可触民が神となり、祭主である高位カーストらを祝福する。ブラーマン司祭の存在も必要とされる場合があるが、儀礼への関与は間接的であり、その地位は必ずしも最高位ではなく王や地主が最優先される場合がある。ブラーマン、王、地主カースト、不可触民のカースト関係は、時と場合によって異なることを論じる。また、儀礼の過程から憑依の仕方を検討し、ブラーマン儀礼との比較を試みる。
 第2章では、テイヤム儀礼の個々の事例を、主催者と組織の規模の違いによって比較分析することにより、各々の特色と相違を明らかにする。組織の規模が大きくなるほど、多カースト、多宗派の参入がみられ、また役員も伝統的権利者ではなく、世俗の権利者となる傾向がある。個人の儀礼から、公の儀礼になるにつれて生じる儀礼の相違を分析する。
 第3章では、神話が生成されていく過程を分析する。各々のテイヤムの神話は一つではなく、いくつかのヴァージョンが存在する。広く民衆に流布している地域の民話と、祭文で語られるプラーナの話とでは異なるが、神々の化身や再生によって両者は接合する。神話は、時と場合によって多様な解釈が可能であり、選び取られ生成されていくことを示す。
 第4章では、社会変化とともに変わっていく儀礼と現代社会の問題とのつながりを分析する。独立運動期から一時衰退した儀礼が、1990年代になって復活する傾向があるが、その背景には母系制崩壊や土地問題といった社会的要因がみられる。一方で1960年代からは、テイヤムがアートとして評価をうけるようになる点について、不可触民のライフヒストリーからカーストと芸能、儀礼との関係を考察する。また、1990年代後半に生じた、舞台化反対運動をとりあげ、テイヤムが、グローバル対ローカル、コミュニズム対ヒンドゥー至上主義などと、イデオロギーの論争の場となっていることを論じる。
 終章では、ヒンドゥー文化二元論を再考し、テイヤム儀礼の実践の場においては、「サンスクリット文化」と「非サンスクリット文化」といった二文化に分けられるというよりも、両者は長い歴史の中で、複雑に入り組んでおり、当事者たちの間でも区別があいまいであること、また政治的権力関係や商業主義といった様々なイデオロギーが錯綜する中で、目的に応じて選択されていく傾向があることを指摘する。
 最後に、社会環境が変化する中で、特定の意味を共有できなくなり多様な解釈が可能となったテイヤムは、儀礼にとどまらず、文化運動を促すパフォーマンスとなり、地域文化、政治権力、商業主義などを巻き込みながら、その姿を生成させていることを示す。また、テイヤムが何であるかという判断は、個々人の経験によるシンボルの喚起の違いからくるといえる。テイヤムは単なる宗教的行為にとどまらず、周囲に意味を見出され、意志を伝達するパフォーマンス的媒体となっている点を考察する。

 (…後略…)

著者プロフィール

古賀 万由里  (コガ マユリ)  (

開智国際大学国際教養学部専任講師。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。専攻は文化人類学、インド文化研究。主な著作に「インド舞踊の表現とジェンダー――男性ダンサーとマスキュリニティ」『森羅万象のささやき――民俗宗教研究の諸相』(鈴木正崇編、風響社、2015年)、「儀礼と神話にみる神と人――ケーララのテイヤム」『神話と芸能のインド――神々を演じる人々』(鈴木正崇編、山川出版社、2008年)、“The Politics of Ritual and Art in Kerala: Controversies Concerning the Staging of Teyyam”, Journal of the Japanese Association for South Asian Studies , 15, 2003. など。

上記内容は本書刊行時のものです。