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パナマを知るための70章【第2版】
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2018年1月
- 書店発売日
- 2018年1月31日
- 登録日
- 2018年1月25日
- 最終更新日
- 2018年6月8日
紹介
中米地峡に位置する人口400万人ほどの小国パナマ。近年、「パナマ文書」によりその名が知られている一方、スペシャリティ・コーヒーの産地、世界有数の環境保護国として注目を浴びている。存在感を増しつつあるパナマを様々な視点から描く魅力的な案内書。
目次
はじめに
Ⅰ 数字で読む世界の中の21世紀のパナマ
第1章 国土――運河で東西に二分割された熱帯の小国
第2章 人びと――過密都市部と過疎地に二分された人口の分布
第3章 政治――民主化を定着させた政治の成果と現状
第4章 経済――持続的経済成長を遂げた21世紀の経済繁栄の姿
第5章 社会――経済成長によって出現した社会の光と影
第6章 教育――先進国を目指す教育改革
第7章 環境保護――国土の3分の1を占める国立公園と自然保護区
【コラム1】米ドルとパナマ通貨バルボア
Ⅱ 16世紀に拓かれた地球の十字路
第8章 コロンブスとパナマ地峡――新旧大陸の文明の衝突
第9章 ダリエンとスペイン人――バルボアによる太平洋の「発見」
第10章 「太平洋の女王」――黄金の王都パナマ市
第11章 「王の道」と「クルセスの道」――新大陸の財宝を運んだロバの道
第12章 カリブ海の宝石ポルトベーロ――独占貿易港と黒人奴隷市場
第13章 エルドラードとしてのパナマ――ヨーロッパ人による財宝争奪戦の舞台
第14章 先住民と新住民――新しい地域社会の形成
【コラム2】「王の道」を探す
Ⅲ 運河建設の夢の実現に向けて
第15章 群がる野望とパナマ地峡――しのぎを削る運河候補ルートの探査活動
第16章 地峡を縦断するパナマ鉄道の建設――アメリカ西部のゴールド・ラッシュで増大する輸送需要
第17章 レセップスの挑戦と挫折――スエズ運河と同じ海面式工法で失敗
第18章 アメリカの海洋帝国の野望とパナマ地峡――アメリカ世論を沸かせた戦艦「オレゴン号」の失敗
第19章 ヘイ・エラン条約とパナマの分離独立――独立と運河条約締結をはかった謎のフランス人
第20章 コロンビアからの分離独立と運河条約――独立の見返りに運河地帯の主権を喪失
第21章 アメリカの支配下に入るパナマ――幅16キロの運河地帯がアメリカの治外法権下に
【コラム3】パナマ運河鉄道にはじめて乗った日本人
Ⅳ パナマ運河の建設
第22章 アメリカの国家プロジェクトとしてのパナマ運河建設――独立後ただちに開始した運河工事の難渋
第23章 大地は開鑿する――「大地は分かたれ、世界はつながれた」
第24章 パナマ運河に影を落とした50万人――フランスとアメリカの運河工事に従事した人びと
第25章 1914年の開通と第一次世界大戦――戦後急速に伸びた通行量と「第三閘門案」の浮上
第26章 閘門式運河の構造――自然の原理を巧みに活かした20世紀最大の装置
第27章 運河条約の系譜――パナマの主権闘争で念願の新運河条約を実現
第28章 21世紀のパナマ運河拡張工事――「第三閘門運河」の完成
【コラム4】パナマ運河とスエズ運河
Ⅴ 米国がつくったパナマ運河とパナマの運命
第29章 アメリカ帝国主義――強まる運河支配
第30章 パナマ国内政治の力学――旧支配層vs市民派
第31章 アルヌルフォ・アリアスとポプリスモ――大衆動員型政治の成立
第32章 第二次世界大戦とパナマ運河――国際紛争の最前線と化した運河
第33章 冷戦下のパナマ運河と軍部の台頭――レモン司令官を中心に
第34章 高まる反米運動――主権をめぐるパナマ人の闘い
第35章 パナマ・ナショナリズム――われわれの国旗を掲げよ!
第36章 トリホス将軍と1977年の新パナマ運河条約――約束された運河の返還
第37章 ノリエガ将軍とアメリカの侵攻――再び忍び寄るアメリカの影
【コラム5】さらば星条旗密かに行われたアメリカ国旗返還式典
Ⅵ 米国からの自立を目指す21世紀のパナマの政治・経済
第38章 運河返還後の米国とパナマ運河――地球規模で利害を共有する国家間の協力
第39章 パナマの国連および米州機構外交――積極化する巧みな対世界・地域外交
第40章 パナマの東アジア外交――日本との太いパイプ、台湾から中国への外交関係の転換
第41章 運河のパナマ化――重要な国家財源となった国際公共財の運用
第42章 フリーゾーンと経済特区――運河と並ぶパナマ経済の支柱
第43章 パナマ独自の小売産業の発展――地元資本による緩やかな近代化
第44章 マグロの養殖という新たな産業――パナマにおける近畿大学の挑戦
第45章 ブランド化するパナマ・コーヒー――超高級スペシャリティ・コーヒー品種「ゲイシャ」
【コラム6】パナマへの日本の企業進出の将来性
Ⅶ モノ・カネ・ヒトの交差点
第46章 アジアと大西洋を結ぶ海上ルート――通航隻数の増加と水資源の限界
第47章 パナマ運輸産業の発展――立地を生かして発展を目指すコパ航空
第48章 国際金融センター――内外の米ドル資金需要に応えるユニークな金融センター
第49章 タックスヘイブン――「パナマ文書」が明らかにした租税回避地
第50章 麻薬の交差点――欧米の闇市場に向かうアンデス・コカインの通過地点
第51章 クロスロードの食文化――狭いパナマで世界のグルメと土着料理を味わう
【コラム7】闇の世界を描く小説の舞台としてのパナマ
Ⅷ グローバル化の中のパナマ社会の変化と課題
第52章 運河返還後のパナマ政治――経済界が政界へ進出する21世紀の政局
第53章 女性の社会進出――ジェンダーギャップとマチスモの普遍性
第54章 観光立国への取り組み――急成長する21世紀のパナマの観光産業
第55章 パナマ社会に定住する外国人たち――移民流入超過に転じた背景
第56章 21世紀の「ダリエン・ギャップ」――周辺部から見える現代世界
第57章 地方の活性化――地域格差是正に向けた取り組み
【コラム8】スミソニアン熱帯研究所――科学と市民社会の新たな関係
Ⅸ 自立と国際的地位を確立したパナマ
第58章 第三の独立――1999年12月31日の運河の完全返還
第59章 米国の支配百年が残したもの――従属から自立への道に成功した姿
第60章 旧米軍基地からパナマ領土へ――返還されたパナマ運河地帯の変貌
第61章 首都パナマ市の変貌――“スマートシティ”を目指す摩天楼都市
第62章 パナマ国旗を掲げる貨物船――便宜置籍船とパナマ
第63章 スポーツにみるパナマの社会――世界チャンピオンを生む社会的背景
【コラム9】知の都市シウダ・デル・サベール
Ⅹ 多民族社会の変容と21世紀の姿
第64章 先住民特別区制度――先住民の諸権利を具体化する行政制度の諸問題
第65章 経済格差のなかの先住民集落――都市移住とコミュニティ企業
第66章 先住民の権利と「リーガルプルーラリズム」――先駆的なパナマの取り組み
第67章 越境する先住民女性――ノベ=ブグレ先住民特別区の季節農業労働者の現在
第68章 2つのアフリカ系民族――エスニック・カテゴリーに織り込まれた「歴史」
第69章 中国系コミュニティの拡大――旧移民と新移民
第70章 ユダヤ系コミュニティ――政治・経済の実権を握る知られざる存在
【コラム10】パナマにおける多民族社会の光景
参考・参照文献資料案内
前書きなど
はじめに
本書は2004年に出版した『パナマを知るための55章』の改訂増補版である。この改訂版をつくるにあたっては、旧版が出版されてから13年の間にパナマが大きな変貌を遂げたため2004年以前の歴史を扱った章は修正せずに残したが、残りの章は全面的に書き直すか、新たに執筆して70章とした。また旧版は3名(国本伊代、小林志郎、小澤卓也)の共著としてまとめたが、今回の改訂版を出すにあたっては諸事情から国本が編者となり、執筆者も専門分野が異なる若い研究者を誘ってより広い視野から21世紀のパナマを紹介しようと試みた。読者の皆さんが先進国グループに迫ろうとする勢いのある魅力的な小国パナマの多様な姿を知り、訪れてみたいと考えられたらこれほど嬉しいことはない。
パナマは中米地峡の東南端に位置する人口400万人ほどの小国だが、知名度は国際的に高い。もちろん人類の歴史に残る記念碑的建造物として誰もが知っている「パナマ運河」が存在することで、パナマという国は世界的に知られている。しかも1914年に完成した運河は既に百年を超えた歴史を経てなお現在も正常に使用されており、それどころか2016年に完成した第三閘門運河によって太平洋と大西洋とを結ぶ運河の商業的重要性は一段と高まっている。長年にわたって米国が支配してきた運河と運河地帯の完全返還を受けたパナマは、急ピッチで運河と運河地帯の自国化に努めてきた。1977年のトリホス・カーター条約で約束した「1999年末までの運河と運河地帯の全面返還」を完了させた米国の協力も少なくなかったが、パナマは国を挙げてこの歴史的事業に取り組んできた。同時に運河地帯の開発によって破壊が進んだ熱帯密林に対しては大規模な植林運動を展開して、パナマは世界有数の環境保護国となっている。さらに、運河地帯に集中した経済活動と人口によって生じている大きな地域格差を是正するためのさまざまな地域開発計画にも取り組んでいる。かつては想像もできなかった運河以外のパナマの名声が、現在ではスペシャリティ・コーヒーの産地や欧米からの退職年金生活者の移住地として知られるようにもなった。このような2010年代のパナマの新しい姿を読者の皆さんに紹介したいと執筆者一同が取り組んだのが本書である。
(…後略…)
追記
【執筆者一覧】
石垣泰司(いしがき やすじ)
東北大学法学部および米国オハイオ州オバリン大学政治学科卒業。(公財)日本国際フォーラム評議員/東アジア共同体評議会議長。外務省国際連合局担当官房審議官、法務省入国管理局総務課長、在サンパウロ総領事、ドミニカ共和国大使(ジャマイカおよびバハマ兼任)、レバノン大使、フィンランド大使(エストニア兼任)を歴任。退官後、東海大学法学部教授、東海大学法科大学院教授、外務省参与(アジア・アフリカ法律諮問委員会日本委員)などを務める。
【主要著作】
「テロとの戦いにおける国際機構の役割と人権問題」(『慶應法学』、2006年号)、『国際機構』(庄司克宏編、岩波書店、2006年)、『国際関係法辞典』(国際法学会編、三省堂、2005年)、「ハイチ・ドミニカ共和国関係の歴史的考察及び展望」(『外務省調査月報』1994年度No.2)、「欧州に拡大する域内国境管理撤廃レジーム(シェンゲン体制)に関する一考察」(『東海法学』、2003年号)など。
太田潔(おおた きよし)
天理大学非常勤講師。
【主要著作】
「現代コスタリカのコーヒー事情(2)――コーヒー産業の進化」、「現代コスタリカのバナナ事情――新たな挑戦へ」、「パイナップル生産――断トツ世界一の輸出国」(国本伊代編『コスタリカを知るための60章』、改定増補版、明石書店、2016年)、「メキシコにおけるスペイン市民戦争難民についての一考察――その経緯、規模および状況」(『季刊iichiko』、第98号、2008年)、「コスタリカ・コーヒー栽培農民の生き残り戦略――グローバル市場自由化の大波のなかで」(石黒馨・上谷博編『グローバルとローカルの共振――ラテンアメリカのマルチチュード』、人文書院、2007年)など。
小澤卓也(おざわ たくや)
立命館大学大学院文学研究科博士後期課程修了。文学博士(立命館大学)。現在、神戸大学大学院国際文化学研究科准教授。
【主要著作】
『ラテンアメリカはどこへ行く』(分担執筆、ミネルヴァ書房、2017年)、『教養のための現代史入門』(共編著、ミネルヴァ書房、2015年)、『コーヒーのグローバル・ヒストリー――赤いダイヤか、黒い悪魔か』(単著、ミネルヴァ書房、2010年)、『先住民と国民国家――中央アメリカのグローバルヒストリー』(単著、有志舎、2007年)ほか。
カレーニョ、グローリア(Gloria Celina Carreño Alvarado)
メキシコ国立定期刊行物資料館専門司書。メキシコ国立自治大学(UNAM)講師(情報・資料処理技術講義)。メキシコ・ユダヤコミュニティComunidad Maguen David 歴史資料室管理責任者。サンニコラス・デ・イダルゴ・ミチョアカン大学卒(メキシコ史専攻)。
【主要著作】
El Archivo Histórico de la UNAM.Cincuenta años de aportaciones y vinculación con la sociedad(共著、México, Ciudad de México: UNAM-IISUE、2017)、Los niños de la Hacienda de Santa Rosa: Una historia de refugiados polacos en México 1943-1947(共著、México, D.F.: Impresora y Encuadernadora Progreso, 2010)、Estudio Histórico Demográfico de la Migración Judía a México, 1900-1950(共著、DVD Editado por:Tribuna Israelita,Comunidad Ashkenazí de México, Centro de Documentación de la Comunidad Ashkenazí,Comunidad Maguén David,y Archivo General de la Nación.México, D.F.:2005)、El convenio ilusorio: refugiados polacos de Guerra en México,1943 -1947 (共著、México: Cartapadio、1998)など、メキシコ近現代史およびメキシコにおけるユダヤ人コミュニティを対象とした論文著作多数。
国本伊代(くにもと いよ) ※編著者紹介を参照。
小林志郎(こばやし しろう)
パナマ運河研究家。早稲田大学大学院商学研究科修了。中南米地域経済開発調査。JETROアルゼンチン駐在。元「パナマ運河代替案調査委員会日本政府代表」(1986-1991年)。アルゼンチン開発調査(1995年)。パナマ政府返還地域開発アドバイザー(2000-2002年)。パナマ港湾開発調査(2002-2004年)。パナマ運河閘門評価調査(2003-2004年)。
【主要著作】
『ニカラグアを知るための55章』(共著、明石書店、2016年)、『ラテンアメリカを知る辞典』(共著、平凡社、2013年)、『パナマ運河、百年の攻防と第二運河構想の検証』(近代文芸社、2000年)、『現代中米・カリブを読む』(共著、山川出版社、2008年)、『パナマ運河拡張メガプロジェクト』(文真堂、2007年)、『パナマを知るための55章』(共著、明石書店、2004年)。
近藤宏(こんどう ひろし)
立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員。立命館大学先端総合学術研究科一貫制博士課程修了。博士(学術)。
【主要著作】
「毒と贈り物――先住民エンベラにおける社交の想像から見る贈与」(岸上伸啓編『贈与論再考』臨川書店、2016年)、「毒蛇と獲物――先住民エンベラに見る動物殺しの布置」(奥野克巳・シンジルト編『動物殺しの民族誌』昭和堂、2016年)、「動物-論理の発見:隷従・憎悪に抗する思考としての構造人類学」(渡辺公三、石田智恵、冨田敬大編『異貌の同時代』以文社、2017年)、訳書にエドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ『インディオの気まぐれな魂』(共訳、水声社、2015年)、エドゥアルド・コーン『森は考える』(共訳、亜紀書房、2016年)などがある。
杉浦篤(すぎうら あつし)
日本ボリビア協会専務理事。神戸大学経済学部卒。トヨタ自動車、関西デジタルホン、ウィルソンラーニング・ワールドワイドなどに勤務。
【主要著作】
「日本のODA政策とドミニカ共和国」、「顔の見えるODA政策」、「新しい支援政策の現場を見る」(国本伊代編著『ドミニカ共和国を知るための60章』、明石書店、2013年)、「カリブ海の観光産業」、「日本とカリブ海域とのヒトとモノの交流」、「カリブ海域諸国への日本の開発援助」、「日本のカリブ海域水産産業への支援」、「カリブ海域の気候変動・防災・環境への支援」(国本伊代編著『カリブ海世界を知るための70章』、明石書店、2017年)など。
額田有美(ぬかだ ゆみ)
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程。
【主要著作】
『裁判員裁判時代の法廷通訳人』(大阪大学出版会、2016年);主な論文に“El perito cultural como traductor cultural: anlisis cualitativo del peritaje cultural en Costa Rica”(『ラテンアメリカ研究年報』第35号、2015年)など。
藤岡潔(ふじおか きよし)
元在パナマ日本国大使館専門調査員。国際基督教大学教養学部国際関係学部卒業。神戸大学大学院国際協力研究科博士後期課程中退。在パナマ日本大使館および在エクアドル日本国大使館にて専門調査員を歴任。パナマ在住。
丸谷雄一郎(まるや ゆういちろう)
東京経済大学経営学部教授。商学修士(中央大学)。グローバル・マーケティング論専門。
【主要著作】
『グローバル・マーケティング論(第5版)』(創成社、2015年)、『ウォルマートのグローバル・マーケティング戦略』(創成社、2013年)、『ラテンアメリカ経済成長と広がる貧困格差』(創成社、2009年)、『変貌するメキシコ小売産業――経済開放政策とウォルマートの進出』(白桃書房、2003年)。主な共著:『グローバル・マーケティング戦略』(有斐閣、2017年)、『小売&サービス業のフォーマットデザイン』(同文舘出版、2016年)、『ドミニカ共和国を知るための60章』(明石書店、2013年)、『現代メキシコを知るための60章』(明石書店、2011年)など。
上記内容は本書刊行時のものです。