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日本の朝鮮植民地化と親日「ポピュリスト」
一進会による対日協力の歴史
原書: Populist Collaborators: The Ilchinhoe and the Japanese Colonization of Korea, 1896-1910
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2018年1月
- 書店発売日
- 2018年1月25日
- 登録日
- 2018年1月16日
- 最終更新日
- 2018年1月16日
紹介
20世紀初頭の大韓帝国で対日協力に傾斜し、1910年の日韓併合直後に日本から切り捨てられ解散した組織・一進会の歴史を詳細に追い、その性格を民衆の反官僚意識に立脚した親日「ポピュリスト」として分析。現在の世界認識にもつながる、画期的な論考。
目次
謝辞
日本語版著者序文
序論
植民地状況下における協力
朝鮮の改革者たちと大日本帝国
一進会――ポピュリスト的な協力者
方法論と史料に関して
第1章 朝鮮の改革者たちと朝鮮末期という時代
朝鮮王朝末期における国家=社会関係
朝鮮王朝末期の危機とエリート改革者たち
一八九四年の東学農民反乱と農民による執綱所
独立協会と民衆の示威運動という新しい文化
対決への道――国王の権力と民衆の抗議
第2章 民衆と外国人――北西部の諸道(一八九六一九〇四年)
外国勢力と協力する蜂起者たち――海道におけるカトリック信徒の抗議
反西洋の抗議――平安道の鉱夫たち
変貌する東アジア秩序と汎アジア主義の出現
東学の指導者たちの親日的親改革的転向
西洋の勃興と汎アジア主義の成長
第3章 驚くべき軍事行動――日露戦争と一進会の勃興(一九〇四一九〇五年)
戦争の進展と一進会の勃興――北西部諸道
国政における一進会の台頭――『大韓毎日申報』の報告
高宗による一進会の抑圧と大安門事件
日露戦争中における日本の戦争物資調達と一進会
一進会の出現に対する朝鮮人および日本人の反応
第4章 自由と新しい外見――一進会会員の文化とレトリック
新しい外見の権威を求めて――断髪儀式
『独立新聞』の遺産と一九〇四年八月の一進会趣旨書
従属を通しての独立――一九〇五年の一進会宣言
一九〇七年の一進会の提案――象徴皇帝と立憲君主制
政治統合の理論――一九〇九年の一進会による合邦請願
樽井藤吉の影響――大東亜同盟
人民の諸権利と国家主権――一進会の反対者たち
幻想――「人民の同盟」としての帝国
第5章 ポピュリストの抗争――一進会の租税抵抗運動(一九〇四~一九〇七年)
光武政府の租税政策
江辺において商人を動員すること――雑税の廃止
公土における小作人の抵抗を指導する
軍田における抗議
公土を一進会の学校に付け替えること
一進会による租税抵抗運動の政治的影響
第6章 地方社会をひっくり返す――一進会の訴訟闘争(一九〇四~一九〇七年)
政治的迫害――旧地方エリート対新しいポピュリスト
平安道
旧舍音と一進会との闘争
公土をめぐっての旧小作人たちと一進会の争議
一進会の舍音
地方社会における政治的な分断――龍川郡の場合
忠淸道
旧舍音たちとの争議
旧小作人たちとの争い
一進会ポピュリズムの限界
第7章 権力に盲従する決断――一進会と日本人(一九〇四~一九一〇年)
一進会の改革と日本の「特権」――一九〇四年から一九〇七年
統監府の財政政策
一進会と経理院の和解の事例
一進会に公的な地位を与えよとの主張――海道の場合
租税行政への一進会の介入に対する日本の反対
地方における現状の固定化と伝統的な国家-地方間ネットワーク
一進会の指導者たちの取り込みと日本人顧問内田良平
一進会の崩壊と地方の一進会会員たちによるデモ
朝鮮人が役人になる基準――親日と二級の地位
純宗による国内巡幸――日本と旧エリートとの和解
結論
解説
訳者あとがき
索引
前書きなど
訳者あとがき
(…前略…)
さて、「韓国併合は朝鮮人が望んだことでもあった」として日本の朝鮮支配を正当化しようとする動きが日本で後を絶たないが、その際度々登場するのが本書のテーマである一進会である。植民地正当化論者たちは、一進会が一九〇九年に提出した日韓合邦の請願書をもって、韓国の人々が自ら併合を望んだという根拠の拠り所としている。この点については韓国でも広く一般的な共通認識となっており、一進会が「親日売国奴」として嫌悪される所以である。そのような組織であれば、一進会のことを話題にするのがどれだけセンシティブなことであるか十分に理解できるだろう。しかし少なくとも十万名を擁したと目される組織の実態を単に日本の傀儡組織と見るにとどまるのであれば、それはそれで韓国民衆の民主化への努力を軽視することになる。彼らの行動を少しでも観察してみれば、さまざまな疑問が出てくる。彼らはすべて売国奴であったのか。あるいは彼らは愚かで、日本の意図が分からず、誤った行動をとったというのか。あるいは彼らの行動にはなんら正当化できることなどなかったのか。彼らは単に金をもらって国を売った卑怯者にすぎなかったのか。現在、こうした疑問が次第に明らかにされてきているが、まだ謎に包まれているところも多く残されている。
著者は一進会の運動を丁寧に読み解きながら、例えば西洋列強への鉱山利権譲渡に対する闘争や、農民による反租税闘争を一進会が主導したことに見られるように、一進会の初期における活動はまさに民衆運動の側面を持っていたことを明らかにした。初期の一進会は、「民衆」を代表して既存の政治権力に挑戦し、その目的を真摯に追求したのである。それが何ゆえ日本と結託することになり、日本の傀儡組織と罵られるまでに成り下がっていったのかを、本書は、当時の思想的潮流や一進会の指導者たちの動きと絡ませながら説得的に描いている。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。