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福島第一原発事故の法的責任論 2
低線量被曝と健康被害の因果関係を問う
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年12月
- 書店発売日
- 2017年12月25日
- 登録日
- 2017年12月15日
- 最終更新日
- 2017年12月15日
紹介
東日本大震災による福島原発事故被災者支援弁護団の共同代表を勤める著者が、膨大な資料をもとに、福島第一原発事故による低線量被曝と健康被害の因果関係について、しきい値に関する科学的知見や、いくつかの裁判例にも触れながら、詳細に検討していく。
目次
はじめに
1章 原発事故被害の特徴と放射線被曝
1 原発事故被害の特徴
2 原発と放射線被曝
(1)放射線被曝とは
(2)放射線の測定単位
3 内部被曝の危険性
4 ペトカウ効果について
2章 放射線被曝と原発事故の歴史
1 放射線被曝の歴史
2 原発事故の歴史
3章 低線量被爆の問題点
1 低線量被曝の問題点
2 放射線防護の考え方の推移
(1)LNT仮説(直線しきい値なし仮説)の推移
(2)被曝大国アメリカ
(3)LNT仮説に関するわが国のスタンス
(4)労災認定基準は5mSv
3 広島・長崎の原爆被爆調査・研究の問題点
(1)調査・研究の組織と目的
(2)研究・調査結果の見直し
(3)継続されている「寿命調査」(LSS)
(4)『中国新聞』の特集記事から
4 チェルノブイリ事故との比較
(1)放射性物質の放出量の比較
(2)被曝防護措置の比較
5 ICRP2007年勧告
6 国連人権理事会特別報告と日本政府の反論
(1)国連人権理事会特別報告
(2)日本政府の反論
(3)政府の反論に対する批判
(4)私見
7 その他の国際機関の見解
(1)原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)報告書
(2)世界保健機関(WHO)の見解
8 低線量被曝の健康影響リスクに関する科学者等の見解
(1)『人間と環境への低レベル放射能の威嚇』の指摘
(2)アメリカの統計学者の論考
(3)David J. Brenner 博士ら(アメリカ)の論文
(4)ベルン大学の研究論文
(5)原子力産業労働者の低線量被曝の影響に関する調査・研究結果
(6)米科学アカデミーも低線量被曝の健康への影響を肯定
(7)岡山大学の教授らの論文
(8)聖路加国際病院医師野崎太希氏の論文
(9)京都大学今中哲二助教の論文
(10)東京理科大学高橋希之教授の論文
(11)BEIR-Ⅶ報告書
(12)反核医師の論考
(13)国内の相反する2つの動物実験
4章 本件原発事故における低線量被曝対応
1 WG報告書と批判
(1)WG報告書の内容
(2)WG報告書に対する批判
(3)私見
2 低線量被曝の健康影響に関する総括
5章 福島で続く低線量被曝被害の危惧
1 『中国新聞』の特集記事から
2 子どもの甲状腺ガンの多発
(1)津田敏英教授の論文
(2)津田教授の論文に対する批判
(3)津田教授の反論
(4)ウィリアムソン准教授の論文
(5)福島県の県民健康調査の実態
(6)宗川吉汪京都工芸繊維大学名誉教授の論考
(7)医療問題研究会の指摘
(8)子どもの甲状腺ガン多発の現実
3 除染後の再汚染
4 原賠法による低線量被曝に対する救済
6章 判例の趨勢と司法に課された責任
1 原発差止め訴訟における被曝被害に対する司法のスタンス
2 本件原発事故に関連する判例の概要
(1)平成25年10月25日付東京地裁判決
(2)平成26年8月26日付福島地裁判決
(3)平成27年2月25日付東京地裁判決
(4)平成27年3月31日付東京地裁判決及び同事件の控訴審東京高栽判決
(5)平成28年3月9日付東京高裁判決
(6)平成27年6月30日付福島地裁判決
(7)平成27年9月15日付福島地裁判決
(8)平成28年2月18日付京都地裁判決
(9)平成29年3月22日付前橋地裁判決
(10)平成29年3月29日付東京地裁判決
(11)平成29年9月22日付千葉地裁判決
(12)平成29年10月10日付福島地裁判決(生業訴訟)
3 直近の3つの判決の比較検討
(1)国の責任
(2)東京電力の責任
(3)低線量被曝と健康被害との因果関係
(4)雑感と司法への期待
おわりに
前書きなど
はじめに
(…前略…)
低線量被曝問題は、安い電気料金で豊かな生活ができ、かつ、地球温暖化対策になるという原子力発電所(以下「原発」という)の有効性と、原発による放射能被曝によって生命、健康、生活環境が蒙る被害とを秤にかけて、国民にどの程度のがまんを強いるかという選択を迫る問題である。また、現在生存している我々の生活の豊かさのために、我々の将来を託す子孫に被曝という負荷を背負わせることを許容するのかという、人類の存亡の問題でもある。それは、「どこまで人権擁護、人道主義に反しても社会正義があると言えるか」という原理的価値判断に直面する問題である。そして、人権擁護、社会正義の防護壁である司法の存在意義が問われている。
本書は、ICRP勧告を含む国際的な機関の意見書、わが国の公的意見、低線量被曝に関する書物及び報道などを適宜引用するとともに、いくつかの裁判例にも触れて、低線量被曝の健康影響、すなわち、低線量被曝と健康被害の因果関係について検討することが主たるテーマである。
なお、前巻の『福島第一原発事故の法的責任論1』と同様、現在、訴訟で証拠提出されている資料は使用せず、専ら訴訟外で公表されている書籍、論文、資料等を参考にして書いたものである。
上記内容は本書刊行時のものです。