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介護行財政の地理学 杉浦 真一郎(著) - 明石書店
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介護行財政の地理学 (カイゴギョウザイセイノチリガク) ポスト成長社会における市町村連携の可能性 (ポストセイチョウシャカイニオケルシチョウソンレンケイノカノウセイ)

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発行:明石書店
A5判
244ページ
上製
価格 4,500円+税
ISBN
978-4-7503-4604-5   COPY
ISBN 13
9784750346045   COPY
ISBN 10h
4-7503-4604-7   COPY
ISBN 10
4750346047   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年1月
書店発売日
登録日
2018年1月25日
最終更新日
2018年1月25日
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紹介

平成の大合併期を経て地方行財政の枠組が再編されたなか、介護保険の広域運営における関係自治体間での負担と受益のバランスについて精緻にデータを分析。超高齢化、人口減少が進むポスト成長社会における市町村連携のあり方に示唆を与える。

目次

 はしがき

序章 ポスト成長社会における行財政の領域再編
 1.現代日本の諸課題と行財政の領域再編
 2.介護保険の広域運営とは
 3.介護保険制度の概要と介護保険の広域運営
 4.本書の構成


第1部 市町村合併と介護保険の広域運営

第1章 市町村合併と広域保険者地域の再編
 1.近年における市町村合併の概要
 2.市町村合併に関する既存研究
 3.市町村合併による広域保険者地域の再編
 (1)保険者領域の消滅と存続
 (2)選択的/非選択的な脱広域化

第2章 介護保険の事業特性をめぐる旧市町村間の差異と市町村合併の影響
 1.疑似的な広域保険者としての合併市町村
 2.使用するデータと研究対象地域
 3.旧自治体別にみた介護保険の量的差異
 4.旧自治体別にみた介護保険の質的差異
 (1)旧自治体間の質的差異
 (2)新自治体との質的特性の差異
 (3)量的差異と質的差異の関係
 5.旧自治体別の差異を内包した新自治体
 (1)合併負担倍率の差異からみた新自治体の特性
 (2)合併負担倍率の顕著な旧自治体を含む新自治体

第3章 均一賦課制による介護保険の広域運営
 1.市町村間で保険運営を統一すること
 2.介護保険の広域的運営に関する制度的特徴
 3.全国における広域的運営の実施状況
 (1)広域的運営の形態別特性
 (2)広域保険者の全国的分布と人口特性
 4.広域保険者における構成市町村別の受益と負担
 (1)「広域化負担倍率」の定義
 (2)「広域化負担倍率」による広域保険者の類型化
 5.広域保険者地域における保険運営の実態と課題
 (1)格差の大きい広域保険者における保険運営
 (2)高負担を甘受する地域的条件と制度的背景
 6.補論―大合併期前後で比較した広域保険者における給付と負担―


第2部 不均一賦課制による広域保険者地域

第4章 広域保険者地域における介護保険事業の地域差と広域運営の枠組みをめぐる諸問題―全国最大規模の福岡県介護保険広域連合を事例として―
 1.全国最大規模の広域保険者
 2.福岡県の市町村別にみた事業特性の地域差
 3.広域連合の構成市町村別にみたサービスの需要と供給
 4.保険料の不均一賦課制の導入とその影響
 (1)不均一賦課制の方法とグループ構成
 (2)グループ別にみた不均一賦課の影響
 5.広域運営の枠組みに関する問題点
 (1)保険者規模からみた広域運営の妥当性
 (2)不均一賦課制に伴うグループ間格差
 (3)ローカルな事業運営の課題

第5章 福岡県介護保険広域連合におけるグループ別保険料の設定方法とその効果
 1.保険料を統一しない広域保険者
 2.給付水準の地域差と不均一賦課制の導入
 3.グループ別保険料の設定方法とその効果
 4.単独運営の場合と比較した保険料水準の変動

第6章 広域連合の比較からみた介護保険料の不均一賦課制と市町村の連携―沖縄県介護保険広域連合と後志広域連合―
 1.どのような広域運営が望ましいか
 2.沖縄県介護保険広域連合の不均一賦課制
 (1)保険者の概要と不均一賦課制の導入
 (2)保険料の設定方法
 (3)不均一賦課制による保険料の変動
 3.後志広域連合との対比からみた不均一賦課制
 (1)後志広域連合の概要と不均一賦課制の比較
 (2)グループ化に伴う収支の帰属
 4.新たな連携の形を求めて―グループ化と非グループ化の併用―


終章 本書の知見と示唆される論点
 1.本研究の要約
 2.本書の知見から示唆される論点

 あとがき

 文献
 索引

前書きなど

はしがき


 本書『介護行財政の地理学―ポスト成長社会における市町村連携の可能性―』は,介護保険を複数の市町村が共同で運営する地域を分析対象として,市町村別にみた受益と負担のバランスから,今後の新たな市町村連携の可能性を模索しようとするものである。

 (…中略…)

 本書は,主に前半の第1部(第1~3章)と後半の第2部(第4~6章)からなる。第1部では,平成の大合併が介護保険の広域運営の枠組みに与えた影響や,合併前の旧自治体ごとにみた合併に伴う保険料負担の変動を分析した。さらに,全国の均一賦課制による広域保険者を対象に,広域化の実態と問題点を整理した上で,「広域化負担倍率」に基づいて給付と負担のバランスを把握した。そこから各広域保険者における市町村間の結びつき方を類型化するとともに,広域化の妥当性を問うことを試みている。第2部では,構成市町村数が多いため複数段階の保険料水準を設定する「不均一賦課制」を採用する広域保険者に焦点を当てた。全国最大規模の福岡県介護保険広域連合を中心に,沖縄県介護保険広域連合および後志広域連合の不均一賦課制を比較検討することによって,給付水準の大きく異なる構成市町村を抱える広域保険者における望ましい連携のあり方を提起した。本書における以上のような検討は,社会保障制度の再構築と行財政の地域的再編という,現在の日本が抱える大きな政策的課題の交点に位置するテーマとして位置づけられると考えている。

 (…中略…)

 本書の分析対象は,高齢化の進展を背景として制度化された介護保険に関する広域運営の地域的枠組みである。しかし,人口減少や高齢化などの人口動態や財政状況などの環境変化は,全ての行財政分野に影響を及ぼすことも事実である。したがって,今後の中長期的な人口動態や財政状況の変化を見据えながら行財政システムの持続可能性を展望しようとするなら,行財政の地域的枠組みの再編(リスケーリング)という課題は,介護以外の様々な分野に関しても,これから議論すべき共通のテーマになりうる。この点こそが本書の内容の基盤となる問題意識であり,行財政の地域的枠組みの望ましいあり方とは何かを考えることは,今後の重要な学術的課題でもあると考えている。本書の試みが,その課題にどこまで貢献できたかは,読者諸賢の評価を待ちたい。

著者プロフィール

杉浦 真一郎  (スギウラ シンイチロウ)  (

名城大学都市情報学部教授
専攻は人文地理学(地方行財政,福祉)
1971年愛知県生まれ
1994年広島大学文学部地理学専攻卒業
1999年広島大学大学院文学研究科博士課程後期修了,博士(文学),日本学術振興会特別研究員(PD)
2000年金沢大学文学部助手
2002年名城大学都市情報学部講師,2007年同学部助教,2008年同学部准教授を経て
2015年より現職

主要業績
杉浦真一郎(2005)『地域と高齢者福祉―介護サービスの需給空間―』古今書院(単著)
杉浦真一郎(2007)「行政の地域調査―高齢者福祉サービスの地域格差をとらえる―」梶田真・仁平尊明・加藤政洋編『地域調査ことはじめ―あるく・みる・かく―』ナカニシヤ出版(分担執筆)
杉浦真一郎(2012)「サービス供給の地域差と均衡化」神谷浩夫・梶田真・佐藤正志・栗島英明・美谷薫編『地方行財政の地域的文脈』古今書院(分担執筆)
杉浦真一郎(2013)「福祉の地理学」人文地理学会編『人文地理学事典』丸善出版(分担執筆)

上記内容は本書刊行時のものです。