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キリシタンが拓いた日本語文学 郭 南燕(編著) - 明石書店
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キリシタンが拓いた日本語文学 (キリシタンガヒライタニホンゴブンガク) 多言語多文化交流の淵源 (タゲンゴタブンカコウリュウノエンゲン)

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発行:明石書店
A5判
416ページ
上製
価格 6,500円+税
ISBN
978-4-7503-4557-4   COPY
ISBN 13
9784750345574   COPY
ISBN 10h
4-7503-4557-1   COPY
ISBN 10
4750345571   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2017年9月
書店発売日
登録日
2017年8月25日
最終更新日
2017年8月25日
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紹介

国内外の研究者による共同研究「キリシタン文学の継承:宣教師の日本語文学」の成果により、宣教師の日本語習得と運用を中心テーマとして、歴史的背景、近代における展開、視覚的イメージ、ハングル著述との比較、という四つの角度からまとめた論集。

目次

序論 キリスト教宣教に始まる多言語多文化的交流[郭南燕]

第一部 キリシタン時代の日本文化理解《イエズス会の適応主義》

1 聖フランシスコ・ザビエルの日本語学習の決意[郭南燕]
 一、アジア諸言語との接触
 二、ザビエルの日本語学習
 三、ザビエルの日本語力
 結び

2 イエズス会巡察師ヴァリニャーノの「順応」方針の動機と実践[川村信三]
 一、宣教師アレッサンドロ・ヴァリニャーノ
 二、ヴァリニャーノの出身地キエーティ
 三、ヴァリニャーノの受けた教育――パドヴァ大学、ローマ学院
 四、ヴァリニャーノの「順応」(accommodation)方針
 五、ポルトガルの東進およびスペインの西進による植民地拡大
 六、日本における順応方針の確立
 七、順応方針のその後
 八、順応方針の負の遺産
 九、現地人聖職者の養成
 結び

3 イエズス会の教育とヴァリニャーノの思想[李梁]
 一、イエズス会の理念
 二、ロヨラを継承したヴァリニャーノ

4 イエズス会の霊性と「九相歌」[カルラ・トロヌ/田中零 訳]
 一、先行研究について
 二、 日本イエズス会の教育制度における「九相歌」
 三、「九相歌」と仏教の伝統
 四、「九相歌」とイエズス会
 結び

5 『日葡辞書』に見える「茶の湯」の文化[アルド・トリーニ]
 一、日本文化における「茶の湯」
 二、『日葡辞書』における茶の文化の語彙
 三、茶の湯と茶の文化にかかわる語彙
 結び 

6 マニラから津軽へ――「キリシタン時代」末期における日本宣教再開の試み[阿久根晋]
 一、航海の背景と史料
 二、航海と再布教計画
 三、航海の結末と「キリシタン時代」の終焉
 結び

[コラム1]先祖の話:キリシタンへの改宗[浦道陽子]

第二部 日本宣教と日本語による著述《近代のプロテスタントとカトリック》

1 辞書は伝道への架け橋である――メドハーストの辞書編纂をめぐって[陳力衛]
 一、英和・和英語彙(一八三〇)
 二、福建方言字典(一八三二)
 三、朝鮮偉国字彙(一八三五)
 四、台湾虎尾壟語辞典(一八四〇)
 五、華英字典(一八四二‐四三)
 六、英華字典(一八四七‐四八)
 結び

2 来日プロテスタント宣教師と「言語」――明治初期津軽の事例から[北原かな子]
 一、弘前とキリスト教――イング着任前
 二、イングとキリスト教布教――来日前と来日後
 三、イングの宣教と「言葉」
 四、弘前初の洗礼式と「言葉」
 五、津軽地方初の留学生派遣へ
 六、津軽初の留学生たちとアメリカ
 結び

3 仏人宣教師リギョールと『教育と宗教の衝突』論争[将基面貴巳]
 一、『教育と宗教の衝突』論争
 二、リギョールの観点
 三、井上哲次郎の立場
 四、キリスト教陣営の主張

4 カンドウ神父の日本文化への貢献[ケビン・ドーク]
 一、カンドウ神父の経歴と来日
 二、戦後日本の近代主義への反対
 三、カンドウの文学的影響
 四、優れたエクリヴァン
 結び 

[コラム2]マレガ神父の日本文化研究[シルヴィオ・ヴィータ]

5 日本語の書き手としてのホイヴェルス――「最上のわざ」を中心に[谷口幸代]
 一、「最上のわざ」の詩人
 二、〈ホイ語〉の詩
 三、「年をとるすべ」の中の「最上のわざ」

6 ホイヴェルス脚本『細川ガラシア夫人』――世界文学へのこころざし[郭南燕]
 一、ホイヴェルス神父の日本語文学
 二、細川ガラシャへの敬服
 三、ホイヴェルス以前の細川ガラシャ像
 四、ホイヴェルス脚本の特色
 五、世界文学の精神とホイヴェルス

第三部 聖なるイメージの伝播《キリスト教の多文化的受容》

1 複製技術時代における宗教画――世界の「サルス・ポプリ・ロマーニ聖母像」をめぐって[望月みや/田中零 訳]
 一、バロック期の機械
 二、反復ではない複製
 三、画像改革
 四、新素材媒体の出現
 結び

2 多様性の中の統一性:愛の性格――カクレキリシタンにおける「神の啓示」の意味[松岡史孝/木村健 訳]
 一、常に改められる教会――カクレの共同体:生きている歴史遺物か、それとも常に改革する共同体か
 二、「知ることは知られることである」――生きられた歴史と観られた歴史
 三、「心に伝わる響き」――サン・ジワン枯松神社における神的な啓示の意味

3 贈り物の聖なる交換――カトリック麹町 聖イグナチオ教会[E・C・フェルナンデス、S・M・ピッツ/田中零 訳]
 一、生きた石たちの祈りの空間
 二、キリシタン時代の交流の場としての教会
 三、現代日本における交流の場としての教会
 結び:過去から未来へ

4 『沈黙』にひそむ『瘋癲老人日記』の影――遠藤周作と谷崎潤一郎をむすぶ糸[井上章一]
 前口上/踏絵と仏足石/日記と書簡/マルキ・ド・サドにみちびかれ

[コラム3]「聖骸布」に関するコンプリ神父の日本語著書[郭南燕]

第四部 朝鮮半島宣教とハングルによる著述《日本との比較》

1 ハングルによるカトリックの書物――一八世紀から一九四五年までの概観[フランクリン・ラウシュ/木村健 訳]
 一、朝鮮半島におけるキリスト教伝播の初期(一七八四‐一八三一年)
 二、パリ外国宣教会の宣教師到来と迫害の継続(一八三一‐七六年)
 三、過渡期のハングルによる書物(一八七六‐八六年)
 四、宗教的寛容と朝鮮王朝の終局(一八八六‐一九一〇年)
 五、植民地時代の宣教師とハングルによる書物(一九一〇‐四五年)
 結び

2 外国人宣教師の半島伝道と著述活動[李容相]
 一、朝鮮半島におけるプロテスタントの宣教
 二、日本人宣教師の伝道とクリスチャンネットワーク
 三、宣教師の著述物
 結び

3 外国人女性宣教師の文化的影響[崔英修]
 一、来韓する女性宣教師の伝道
 二、朝鮮の時代的背景
 三、女性宣教師たちの活躍

 結び
 編著者あとがき
 人名索引

前書きなど

序論 キリスト教宣教に始まる多言語多文化的交流[郭南燕]

 (…前略…)

 このように考えると、「キリシタン文学」の伝統を受け継ぎ、「日本語文学」の最も活発な書き手である、近代宣教師の日本語著述に関する研究はまだほとんど開拓されていないのではないかと思う。一八七三年、明治政府がキリスト教を解禁してから、多くの宣教師が来日した。そのうち、約三百人が日本語で著述し、約三千冊に上る日本語書籍を刊行している。日本在住外国人のうち、宣教師のように使命感に駆り立てられて、矢継ぎ早に日本語を用いて著述する「職業」はほかにないだろう。宣教師のもつ日本語日本文化への至近距離は、キリシタン時代の「適応(順応)」方針を受け継いだものと見てもよいだろう。

 (…中略…)

 本書は「宣教師の日本語文学」を多方面から総合的に考察する論文集である。一五四九年から二一世紀の現在にいたるまで、キリスト教宣教は、常に現地の言語文化との密接な交流において展開されてきた。異言語異文化を抱え込まない宣教は不可能であった。キリシタン時代こそが今日のグローバル化の先駆けであり、キリシタンの拓いた日本語文学は、その多言語多文化的交流の結実といえよう。

著者プロフィール

郭 南燕  (カク ナンエン)  (編著

日本語文学者
1962年生まれ、中国・上海出身。復旦大学、お茶の水女子大学、トロント大学に学び、博士(人文科学)。1993-2008年、ニュージーランド・オタゴ大学で教え、2008-17年、国際日本文化研究センター准教授。研究分野は日本文学、多言語多文化交流。
著書に『バイリンガルな日本語文学:多言語多文化のあいだ』(編著、三元社、2013年)、Refining Nature in Modern Japanese Literature: The Life and Art of Shiga Naoya (Lexington Books, 2014)、『志賀直哉で「世界文学」を読み解く』(作品社、2016年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。