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中途盲ろう者のコミュニケーション変容
人生の途上で「光」と「音」を失っていった人たちとの語り
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年6月
- 書店発売日
- 2017年6月10日
- 登録日
- 2017年5月29日
- 最終更新日
- 2017年5月29日
紹介
中途で盲ろうとなった当事者のコミュニケーション変容をテーマに、本人のライフストーリー・インタビューを行い、別の盲ろう者および、盲ろう当事者でもあり研究者でもある福島智教授と語り合う、という3層の方法により、重層的な解釈を試みた研究書。
目次
まえがき
第1章 本書の背景と目的
1.1 ある出会い
1.2 盲ろうとは
1.3 コミュニケーションとは
1.4 障害当事者の経験やコミュニケーションをめぐる先行研究
1.5 目的
第2章 研究の方法
2.1 研究法の選択
2.2 方法の全体図
2.3 第1ステップ:ライフストーリー・インタビュー
2.4 第2ステップ:他の盲ろう当事者との語り合いによる共同解釈
2.5 第3ステップ:福島智氏との語り合いによる共同解釈
2.6 倫理的配慮
2.7 結果の記述方法
第3章 【私なんか、目も半端、耳も半端】(第1ステップ)――Aさん(弱視難聴、女性、50歳代)
3.1 Aさんのプロフィール
3.2 Aさんと私のかかわり
3.3 Aさんへのインタビュー時のコミュニケーション
3.4 Aさんのライフストーリー
3.5 変容を繰り返すコミュニケーションと「半端」な状態の経験
第4章 【盲ろう者のペースで社会が成り立ってれば】(第1ステップ)――Bさん(弱視難聴、男性、30歳代)
4.1 Bさんのプロフィール
4.2 Bさんと私のかかわり
4.3 Bさんへのインタビュー時のコミュニケーション
4.4 Bさんのライフストーリー
4.5 埋められないギャップへの無念な思い
第5章 【あたしの場合は救ってくれる人はいなくって、自分で立ち直った】(第1ステップ)――Cさん(全盲ろう、女性、50歳代)
5.1 Cさんのプロフィール
5.2 Cさんと私のかかわり
5.3 Cさんへのインタビュー時のコミュニケーション
5.4 Cさんのライフストーリー
5.5 孤独、そして怒りの感情
第6章 第2ステップ:他の盲ろう当事者との語り合い
6.1 AさんについてDさん(弱視ろう、女性、40歳代)と語り合う
6.2 BさんについてEさん(弱視難聴、女性、30歳代)と語り合う
6.3 CさんについてFさん(全盲ろう、男性、60歳代)と語り合う
第7章 第3ステップ:福島智氏との語り合い
7.1 福島智氏のプロフィール
7.2 【無限のバリエーションですよね】――「中途半端さ」がもたらす「しんどさ」
7.3 【なぜ電気が消えてるかっていうとスイッチを切ってるからではない】――周囲の世界とのつながりのもちにくさ、とぎれやすさ
7.4 【盲ろうになると、人間から物体になってしまう危険性に常にさらされるんですよね】――周囲と自己との認識のギャップ
7.5 【条件を整えれば、がんばればできるんじゃないのかみたいな幻想】――過剰な努力を強いられる構造
第8章 人生の途中で盲ろう者になるという経験
8.1 中途盲ろう者のコミュニケーションの変容
8.2 コミュニケーションの変容が中途盲ろう者の人生に与える影響
8.3 支援への示唆
資料
資料1 ライフストーリー・インタビュー協力者への依頼文(原案)
資料2 語り合いによる共同解釈協力者への依頼文(一例)
引用・参照文献
あとがき
前書きなど
まえがき
(…前略…)
ではここで、本書の構成を述べる。本書は、全部で8章から成る。
第1章では、既存のコミュニケーション論および盲ろう者のコミュニケーションに関する先行研究を概観し、問題を提起した上で、本書の目的を述べる。
第2章では、本書で用いた研究方法を述べる。本書では、3名の盲ろう者が中途で盲ろうになることをどのように経験したかという主観的現実に着目し、盲ろう者のコミュニケーションの様相を理解することを重視するため、方法としてライフストーリー研究の手法を用いた。
第3章から第7章までは、本書で得られた結果に該当する部分であり、本書の中核ともいえる。盲ろう者の生き生きとした語りをできるかぎりリアルに伝えることを重視している。
第3章、第4章、第5章では、3名の盲ろう者へのインタビューによって得たライフストーリーを記述し、それぞれのライフストーリーにおいて注目すべきテーマを抽出する。
第6章では、第3章、第4章、第5章で記述したライフストーリーについて、他の3名の盲ろう当事者と筆者が行った語り合いの結果を述べる。
第7章では、3名の盲ろう者A、B、Cさんのライフストーリー(第3章~第5章)および他の盲ろう当事者D、E、Fさんとの語り合い(第6章)について、福島智氏と筆者が行った語り合いによる共同解釈の結果を述べる。
結論となる第8章では、各章を総括し、総合的に考察する。
本書が読者としてまず想定しているのは、盲ろう者支援やコミュニケーションに関心のある研究者である。しかし、専門の研究者だけを念頭においた、狭い意味での「研究書」を目指したわけではない。ライフストーリーをふんだんに取り入れ、盲ろう者の経験が身近に感じられる内容となるよう心がけたので、盲ろう当事者や盲ろう者と身近に接している方々にもお読みいただけると幸いである。さらに、これまで盲ろう者とかかわったことのない方、盲ろうという世界を想像したことのなかった方にもお読みいただきたいと考えている。盲ろうという世界をわかろうとする人が一人でも増えることが、筆者の願いだからである。このことは、本書を最後までお読みいただければおわかりいただけると思う。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。