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在日コリアンの離散と生の諸相
表象とアイデンティティの間隙を縫って
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年5月
- 書店発売日
- 2017年5月25日
- 登録日
- 2017年5月15日
- 最終更新日
- 2017年5月15日
紹介
「排除」と「包摂」の二元論的思考を超え、「排除型社会」とは異なる社会のあり方を構想する本叢書の第二巻は、在日コリアン、在日済州人を中心とする移動するコリアンに焦点をあて、移動した人々のアイデンティティやみずからの文化の表象のあり方を探る。
目次
叢書『「排除と包摂」を超える社会理論』序文
序章 離散がもたらす生の諸相[山泰幸]
1 離散の時代
2 アイデンティティと表象
3 生活実践
4 「在日コリアン」という言葉
第1章 在日コリアン青年の民族的アイデンティティ──1993~2013年のデータを用いて[金明秀]
1 はじめに
2 データ
2.1 調査の背景
2.2 調査設計
(1)母集団
(2)標本抽出
(3)実査
3 民族的アイデンティティの測定
3-1 意識と行動による包括的な尺度
3-2 意識と行動による包括的な尺度の因子構造
3-3 態度としての尺度
4 まとめと議論
第2章 ルーツと越境の現在──グローバル都市ソウルで生活する在日コリアンの語りから[川端浩平]
1 はじめに──岡山で出会った在日コリアンと韓国の経験
2 グローバル都市ソウルを歩く
3 「自分探しの旅」としてのソウル滞在
4 ソウルで働く、結婚する
5 カリフォルニアからソウルへ
6 社会運動の現場を歩く
7 韓国から北朝鮮を眺める
8 おわりに──越境する在日たち
第3章 在日済州人、境界人としての意味と役割[許南春]
1 序
2 在日済州人の心を読む
3 在日コリアンの過去と未来
4 総聯と民族学校の未来
5 在日済州人との協力
5-1 在日済州人と協力の必要性
5-2 協力構築の問題点
5-3 協力構築の方案
5-4 在日済州人との交流プロジェクト
6 韓日境界人としての役割
第4章 ヴァナキュラー──在日コリアンの事例から[島村恭則]
1 ヴァナキュラーとは何か
2 「民族文化」「民族的アイデンティティ」とヴァナキュラー
2.1 ヴァナキュラー
2.2 「民族文化」「民族的アイデンティティ」とヴァナキュラー
(1)言語
(2)衣・食・住
(3)祖先祭祀
(4)「民族的アイデンティティ」
3 「多文化共生」とヴァナキュラー
第5章 在日コリアン宗教者と宗教的なるもの──エスニック宗教文化の周辺[山口覚]
1 はじめに
2 宗教文化と宗教的なるもの
3 神戸市の「日韓親善の寺」、法徳寺
3-1 神戸市の法徳寺
3-2 劉日海氏の人生と法徳寺の創建
3-3 法徳寺における信者・宗教文化とその周辺
4 日本の宗教施設とコリアン宗教者
4-1 熊野若王子神社とコリアン宗教者
4-2 風師不動明王院に集うコリアン宗教者
5 朝鮮寺の変容
5-1 宝教寺のその後
5-2 金峯寺から山修学宝秀院へ
6 まとめにかえて
第6章 在日済州人の渡日と親睦会研究──「在日本済州島親睦会」の活動を中心に[李昌益]
1 はじめに
2 在日済州人の渡日と暮らしぶり
2-1 在日済州人の渡日と社会的状況
2-2 在日済州人の職業と暮らしぶり
3 在日韓国人共同体の成立と性格
3-1 共同体の成立
3-2 共同体の性格と活動そして拡大
4 在日済州人共同体の成立と性格
4-1 在日済州人共同体の成立
4-2 在日済州人共同体の性格
5 在日済州島親睦会の成立と活動
5-1 済州島と在日済州人との交流
5-2 済親会の成立と活動状況
(1)「人和親睦」
(2)人格向上
(3)郷土との紐帯強化
5-3 済親会の教育関連事業
6 おわりに
第7章 在日コリアンの表象[難波功士]
1 在日コリアン表象とは
2 1950年代~──清く、正しいものとしての
3 1970年代~──強く、哀しいものとしての
4 1990年代~──実存的ないしリアルなものとしての
5 2000年代~現在──美しいもの、もしくは疎ましいものとしての
6 おわりに
終章 離散がもたらす生の記憶の保存をめぐって[山泰幸]
1 人物記念館と集合的人格
2 負の記憶
3 困難を克服するプロセス
4 寄贈と愛郷心
5 比較の視点から
6 おわりに
あとがき
索引
前書きなど
叢書『「排除と包摂」を超える社会理論』序文
叢書『「排除と包摂」を超える社会理論』全三巻は、関西学院大学先端社会研究所共同研究「「排除」と「包摂」の二元論を超える社会調査」(2012-2015年度)の研究成果である。その出発点は、次のような問題意識にある。
1970年代以降、欧米社会では、「包摂型社会」から「排除型社会」へと移行しているという認識が生まれた。この傾向は、1990年代以降、グローバリゼーションとネオリベラリズムの大波の中、急速に進行していることは明らかであろう。そして、欧米社会のみならず、日本社会においても、同様の動きが、顕在化している。
こうした動きに対して、社会のあり方を再創造する新たな社会思想の登場が期待されており、日本においても、たとえば、西欧思想史を援用しつつ、社会を多様性と複数性、流動性と包摂性からなる、「多にして一」の世界として再構想する思索などが登場している。
もっとも、社会の再創造は、西欧思想史を導きの糸としてその作業を行う立場とともに、西欧とは異なる地域における生の経験に学びつつ、これを行うという道筋もありえるであろう。
本研究は、欧米における社会思想形成の動向に配慮しつつも、後者の立場に立った社会構想研究を実施するものである。具体的には、「排除」と「包摂」の二元論的思考を超え出て、アジアにおける「排除」と「包摂」をめぐる経験の多様性の中から、「排除型社会」とは異なる社会のあり方を構想する知的資源、あるいは「排除型社会」を生き延びるための社会理論を取り出そうとするのが、本研究がめざすところである。
以上のような問題意識に基づいた、四年間にわたる、さまざまな地域における調査と共同討議が、本叢書全三巻に結実した。本叢書を契機として、「排除」と「包摂」を「超え出る」ような議論が新たに高まれば幸いである。
叢書『「排除と包摂」を超える社会理論』編著者一同
上記内容は本書刊行時のものです。