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平安朝の女性と政治文化
宮廷・生活・ジェンダー
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年3月
- 書店発売日
- 2017年3月30日
- 登録日
- 2017年3月16日
- 最終更新日
- 2017年3月16日
紹介
平安時代の女性は国家意思決定の場に登場する法的規定はほとんどなかったものの、実際には政治権力構造に密着していた。また、日常的社会のさまざまな事象も、未分化な政治文化と対応していた。本書は、平安朝の女性の政治文化や生活の実態考察を課題とする。
目次
平安朝の女性と政治文化――序に代えて[服藤早苗]
第一部 朝廷の女性たち
『古今集』の作者名表記と女官・女房[伊集院葉子]
はじめに
1.勅撰和歌集の作者表記に関する先行研究
2.『古今集』女性歌人の表記と身位
3.女性の表記の基準と由来
おわりに
天皇の沐浴に見る摂関期の奉仕形態の特質[永島朋子]
はじめに
1.殿上日中行事に見える天皇の沐浴――『西宮記』『侍中群要』を中心に
2.天皇の沐浴と主殿寮の奉仕――神今食・新嘗祭を中心に
おわりに
摂関期の后母――源倫子を中心に[東海林亜矢子]
はじめに
1.家妻への叙位
2.娘入内時におけるキサキ母の内裏参入
3.后母の叙位
4.同輿と後見
5.後一条天皇即位式における倫子
おわりに
禄から見る天皇の乳母――『栄花物語』を中心に[茂出木公枝]
はじめに
1.『栄花物語』のなかの禄
2.禄から見る天皇の乳母と女房たち
3.藤原豊子の禄
おわりに
第二部 上東門院彰子の周辺
兼通政権の前提――外戚と後見[栗山圭子]
はじめに
1.資子内親王
2.選子内親王
おわりに
国母の政治文化――東三条院詮子と上東門院彰子[服藤早苗]
はじめに
1.院政期の先例としての国母の政務
2.政務運営実態
3.政務運営と場
おわりに
鎌倉期摂関家と上東門院故実――〈道長の家〉を演じた九条道家・竴子たち[高松百香]
はじめに
1.道家女.子の入内名字定と上東門院故実
2.道家家の女性への命名と上東門院故実
3.上東門院故実の実践――竴子の入内・懐妊・出産をめぐって
おわりに――上東門院故実のゆくえ
待賢門院領の伝領[野口華世]
はじめに
1.待賢門院領の形成
2.待賢門院没後の待賢門院領と待賢門院追善仏事
3.待賢門院領の伝領
おわりに
第三部 生活
歯の病と処置――平安中期を中心に[高島麻衣]
はじめに
1.疾患
2.治療方法
おわりに
平安朝の女性たちの日常語――『栄花物語』の人称詞を中心に[椎名和子]
はじめに
1.自称詞
2.対称詞
3.他称詞
4.女房たちの人称詞
おわりに
『栄花物語』における婚姻用語とその実態[河村慶子]
はじめに
1.天皇・東宮
2.貴族層
おわりに
『栄花物語』に見る年中行事――祭を中心に[北村典子]
はじめに
1.年中行事の種類、件数と時代
2.年間を通して見た行事
3.賀茂祭と他の三祭の比較
4.賀茂祭
おわりに
あとがき[高松百香]
前書きなど
平安朝の女性と政治文化――序に代えて
(…前略…)
史料のジェンダー分析は、従来の研究への新たな提言が可能である。たとえば政治史研究では、主として法規定等からの政治制度やその変容、あるいは政治的要職に就く人物の変遷や特徴、政治的事件等を解明してきた。しかし、八世紀に成立する律令制は基本的に政治意思決定の場から女性を排除し、九世紀にはそれがより浸透していく。ゆえに、政治制度や政治的要職の変遷検討では、女性はほとんど出てこない。しかし、国母や女院が政治的に重要な位置にいたことは、貴族の日記分析等から次第に明らかにされつつある。政治構成員が、政治に対してどのような態度・関心をもっていたか、女性と政治の関わりに対しどのような意識、すなわち政治意識をもっていたのか等々、政治文化を解明するためには、ジェンダー分析が不可欠だと思われる。
本書は、平安時代の生活と社会をテーマに、各執筆者に自由に論考を寄せていただいたが、当時の人々にとっては身近で個人的な多様な視点から、ささやかながらも政治文化を解明する分析がなされている。本書を『平安朝の女性と政治文化』と題したゆえんである。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。