書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
日本経済《悪い均衡》の正体
社会閉塞の罠を読み解く
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年12月
- 書店発売日
- 2016年12月26日
- 登録日
- 2016年12月15日
- 最終更新日
- 2016年12月15日
紹介
日本経済の長期にわたる停滞・社会閉塞の要因を、経済学のみならず政治や社会意識などとの関連も含めて、複合的・総合的に考察。効率化を目指すがゆえの雇用環境の悪化・購買力の縮小など、悪循環の構造を《悪い均衡》というキーワードで解明していく。
目次
はしがき
第1章 総論
1 悪い均衡
本書の主題/日本経済のパフォーマンス/悪い構造/企業分野の《悪い均衡》/悪循環の発生/対外的な稚拙/公的分野の《悪い均衡》
2 思考パターン
昭和戦前期との類似点/「当面可能な最善」思考/経済学の市場主義的偏向
3 近年の経済の推移
スタグフレーションからバブルへ/バブル後の危機と停滞
第2章 経済学の悪影響
1 近年の経済学
市場を信じる流れ/広義の「市場の失敗」の解明の進歩/実用場面における単純化/反ケインズ反革命/予想(expectation)について/予想についての一つのデータ観察
2 主流の破綻と必要な見直し
合成の誤謬の重要性/必要な見直し
第3章 金融の攪乱
1 バブル
バブル生成の経過/バブルの認知/This time is different(今度だけは違う)という心理/国際協調・円高回避ファクター/Leaning against the wind戦略
2 バブル後の危機
金融危機の発現/政府対応の遅れ/金融危機対策の制度整備/不良債権問題の一段落/金融危機の教訓
3 二一世紀入り後
世界金融危機と再規制の動き/非伝統的な金融緩和/金融緩和をめぐる理論
第4章 企業の内向
1 資金余剰現象
資金余剰/バブルの基盤およびファンド資本主義/競争の時間的視野の短期化
2 非効率となる効率化
横並び競争/人件費削減からの悪循環
3 組織体質
内輪の論理/ガバナンス改革/成果主義/前線敢闘依存経営
4 「非正規」・「ブラック」・職場の危機
復活した身分制/メンバーシップ型雇用/統計的差別論の克服と就活改革/大局観に立ったチャレンジ/新規参入の活発化
第5章 政治・行政・メディアの劣化
1 魔女狩り症候群
既得権狩り/規制緩和・民営化/負担忌避から共倒れへ
2 長期構想の欠如
少子高齢化と社会保障/社会保障改革の方向/財政の現状/直接税改革
3 政治・行政改革の結果
「改革」の連続と政治の劣化/官庁の機能低下/大学の現状の事例/行政のあり方への提言
4 メディアの劣化した販売競争
マスメディアの劣化/ネット書き込みの世界
第6章 現在と将来
1 ナショナリズム
北東アジアに外交はない/日本の立ち位置
2 「アベノミクス」
「アベノミクス」の性格と内容/デフレ脱却政策三年間の経過/金融超緩和政策
3 悪い均衡からの脱出
企業の再生/ミニマム保障社会/国民意識・政治・メディアの再生
主な参考文献
前書きなど
はしがき
本書は、長期にわたりつつある日本経済の停滞ないし社会閉塞の構造を、可能な限りリアルに、したがってまた総合的に、解き明かそうと試みたものである。
この場合、「リアル」は同時に「総合的」でもあると考えている。なぜなら、この停滞・閉塞はどこか一分野・一原因から発しているのではなく、複数の分野に悪い状態があり、しかもそれらが相互に絡み合った全体によって、現状がつくられていると思えるからである。そこで、事実に密着しようとすれば、自分の専門分野に限るのでは足りず、経済学の枠をはみ出してでも、政治や社会意識など、必要な要因・領域にまで対象を広げざるをえない。こういう意味である。もちろん、超人ならざる一個人がそれを行うことはきわめて難しいであろう。ましてや筆者の限られた能力をもってしては。しかし、学問の枠組みの都合の側よりも、解明さるべき事実の方が、圧倒的に重要である。そうであれば、困難でもチャレンジしてみなければならない。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。