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NPOと政治
アドボカシーと社会変革の新たな担い手のために
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2008年3月
- 書店発売日
- 2008年3月27日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
NPOとは非営利組織であり、社会的な公益活動を行うものだが、政治にカネがつきものならば、NPOは政治に関われないのか――税制、選挙活動、行政委託・補助事業など、NPO先進国アメリカの豊富な事例分析をもとに、日本におけるNPOと政治のあり方を考察・提言。
目次
はじめに
第1部 NPOと政治の理論と制度
第1章 特定非営利活動促進法における政治の規定
「目的とするものでない」とは?/活動における個人と組織/公益法人の政治活動との相違/政治に関わるには別組織で
第2章 アメリカにおけるNPOと政治の関係
アメリカのNPOシステムの概要/五〇一c三団体と政治的な活動/直接ロビー活動と草の根ロビー活動/五〇一c三団体と選挙活動/関連団体を通じた政治的な活動と税制優遇措置/拡大する五二七団体の影響力/住民投票とNPO
第3章 政治的な活動に関わる理由
アドボカシー活動へのNPO法人の自己認識/NPOのあり方と政治的な活動に関わる理由の分類/サービス活動の社会的拡大と課題への対応/扱う課題の性格ゆえに派生する問題への対応/活動資金の確保につながる能動的な取り組み/行政資金の流入にともなう受動的な対応/ファンドレイジング=アドボカシー
第4章 NPOによる政治的な活動の手法
NPOによる政治的な活動の手法の分類/長野市議選における候補者アンケート/ホームレス問題と「投票に行こう運動」/組織的、大規模に展開されるアメリカのGOTV/政策提言のカギ、リサーチ・アクション
第2部 アメリカにおけるNPOと政治のケーススタディ
第5章 税制優遇措置をめぐる攻防
アメリカの納税申告の仕組みと寄付控除/ノン・アイテマイザーへの寄付控除復活の動き/相次ぐ法案の議会提出とNPO/ノン・アイテマイザーの寄付控除への批判/「フロア」と「キャップ」をめぐる議論
第6章 「選挙活動の権利」をめぐるNPOと政府の対立
事例1 候補者名をだしたラジオ広告をめぐる訴訟
選挙運動コミュニケーション禁止期間中のラジオ広告/地裁敗訴から最高裁で逆転勝訴へ/原告を支援、制度改革を求めるNPO
事例2 政治的言動による税制優遇措置剥奪の懸念
問題となった大統領批判発言/NAACPの反論と内国歳入庁による政治的な介入の議論/NPOの支援と調査の終了
第7章 医療と介護を統合した高齢者サービスの制度化
PACEの生みの親、オンロック/ナーシングホームからデイケアセンターへの方針転換/PACEプログラムの実施へ/プログラムのユニークさ/政府の廃止通告に対して議会へロビー活動/連邦政府の恒久的な事業に/全米組織の結成と農村地域へのプログラムの拡大/高齢化社会の進展と政府の財政難が追い風に
第3部 日本におけるNPOと政治のケーススタディ
第8章 粘り強い運動で改善される認定NPO法人制度
税制優遇措置に関する運動の枠組み/認定NPO法人制度の成立/制度改定に向けた活動と状況の変化/改定NPO法人制度の成立と課題/不十分に終わった二〇〇四年度の改正/懸案の多くが解決に
第9章 行政との平等、公平な関係を求めて
事例1 愛知県の協働のルールづくり
ルールブックづくりの背景と体制/ルールブックづくりに向けた議論/ルールブックの内容/ポスト・ルールブック
事例2 大阪ショートプレイフェスティバルの補助金増額
文化芸術活動への行政の支援策の現状と課題/大阪府の芸術関連助成金とショートプレイフェスティバル/運営に関わる人件費などの査定と補助金の増額
第10章 若者と政治をつなぐ活動を事業化したNPO
企業インターンシップの営業活動としてスタート/学生をスタッフ化する運営方法/議員インターンシップの実態/プログラムの成果/より多くの若者と政治をつなぐために
前書きなど
はじめに(一部抜粋)
(…前略…)
本書を執筆しようとした背景には、いまの日本のNPOが政治に向き合う姿勢を変える必要があるのではないかという問題意識があった。とはいえ、サービス活動をやめ、街頭でデモを行えというつもりはない。NPOと政治の関係性を理論的、制度的に検討し、日本とアメリカでNPOが取り組んできたさまざまな政治的な活動の事例を分析するなかで、NPOがなぜ、どのように政治と関わるべきかについて整理し、今後のNPOの発展の一助となればと考えたのである。
このため、本書は、大きく三つの部分で構成されている。
最初は、NPOに関する制度上の規定を踏まえつつ、NPOという組織のあり方に照らして、政治とどのような関係をもつべきなのかについて検討していく部分である。第1章から第4章がこれにあたる。第1章では日本の特定非営利活動促進法との関係、第2章ではアメリカにおけるNPOと政治に関する理論や制度的な枠組みを整理している。そのうえで、第3章でNPOの政治的な活動が必要とされる理由を分析、類型化を試みた。第4章では、NPOがどのような政治的な手法を用いて活動を行うのかについて概念整理と分類を行うとともに、この分類に基づき活動の手法を検討していく。
次は、アメリカの事例研究の部分である。第5章から第7章までで構成されている。第5章は、ノン・アイテマイザー(項目別控除を選択しない納税者)に対する税制優遇措置をめぐり、NPOによる政府へのロビー活動とNPO内部の意見の相違などを検証する。第6章は、選挙に関連する活動をめぐり裁判になった事例と、税務当局がNPOに調査を行った事例を分析している。第7章は、高齢者への介護と医療を統合したサービス提供形態を政府に認めさせていくNPOの活動をみることで、NPOの先駆的なサービス提供形態が議会を通じて社会的な制度として確立されていくプロセスと意義について考える。
最後は、日本の事例研究の部分である。第8章から第10章までがこれにあたる。第5章ではアメリカの税制優遇措置とNPOの関係をみたが、第8章では日本においてNPO法人に税制優遇措置を認める枠組みとなった、認定NPO法人制度の制定と改定について検討する。第9章は、行政の委託事業や補助事業を行ううえで、NPOがどのように行政と向き合い、より対等な関係性や公正な補助金の算定を求めているかについてみる。最後の第10章は、政治との関わりを事業にするNPOの事例研究である。ここでは、議員事務所に学生インターンを派遣するプログラムで知られるドットジェイピーの事例を取り上げる。
以上からも明らかなように、本書の多くの部分は、アメリカのNPOに関する制度や政治に関連する事例の検討に割いている。「NPOの先進国、アメリカ」では、税制優遇措置をもつNPOが膨大な数にのぼっているうえ、NPOの政治的な活動も活発に行われており、NPOと政治の関係においても制度的な枠組みが整備され、NPOによる政治的な活動の手法も数多く開発されているからだ。第2章で紹介するように、NPOと政治に関する制度的な枠組みは、裁判などの影響もあり、近年、急速に整備されており、タイムリーな内容を
上記内容は本書刊行時のものです。