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指定管理者制度とNPO 柏木 宏(著) - 明石書店
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指定管理者制度とNPO (シテイカンリシャセイドトエヌピーオー) 事例研究と指定獲得へのマネジメント

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発行:明石書店
四六判
304ページ
並製
定価 2,800円+税
ISBN
978-4-7503-2487-6   COPY
ISBN 13
9784750324876   COPY
ISBN 10h
4-7503-2487-6   COPY
ISBN 10
4750324876   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
品切れ・重版未定
初版年月日
2007年1月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2012年3月14日
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紹介

財政基盤の弱い日本のNPOにとって指定管理者制度はビジネスチャンスでもある。指定管理者としていかに公の施設運営に関わり,制度をよりよいものにするためには? 管理運営の成果と課題を分析し,NPOによる公の施設運営のあり方を提示。

目次

はじめに
第一部 事例編
 第一章 東京都新宿区◆環境学習情報センター
   ――市民参加型のセンター運営を標榜
 第二章 福岡県福岡市◆ぽんプラザホール、ゆめアール
   ――文化芸術の発信基地と地域での育成を二つの施設で
 第三章 埼玉県草加市◆児童クラブ
   ――NPOと運動の両輪で学童保育を推進
 第四章 大阪府池田市◆水月児童文化センター
   ――ミッションを実現するステージ
 第五章 兵庫県尼崎市◆女性・勤労婦人センター・トレピエ
   ――提案する側からセンターの事業で思いを実現する立場に
 第六章 東京都八王子市◆長池公園
   ――公園の管理とコミュニティづくりの融合
 第七章 愛知県名古屋市◆なごやボランティア・NPOセンター
   ――コンソーシアムによる運営の実績と課題
第二部 制度編
 第八章 指定管理者制度とは
 第九章 NPOの現状と指定管理者制度
 第一〇章 指定管理者制度の課題とNPOの事業展開
第三部 マネジメント編
 第一一章 NPOによる指定獲得へのマネジメント
  第一節 指定管理者に向けたトータルプロセス
  第二節 ミッションとの整合性
  第三節 フィージビリティの検討
  第四節 応募の準備作業
  第五節 応募の作業
  第六節 選定結果発表から管理運営の実施
資料1 神奈川県立柳島青少年キャンプ場の業務の基準
資料2 神奈川県立青少年施設指定管理者評価会議の結果
資料3 神奈川県立青少年施設指定管理者評価会議におけるヒアリングの記録

前書きなど

はじめに
 指定管理者制度ということばを初めて耳にしたのは、二〇〇三年の秋だったように記憶している。アメリカで二〇年あまりNPO活動にかかわっていたことから、二〇〇三年に開校された大阪市立大学の社会人向けの大学院で、NPOについて教鞭をとるようになって間もない頃だ。
 一九九〇年代の初めからアメリカのNPOについて日本に紹介する機会が増えていたが、多くの人から、彼我の差を感じるといわれたことを覚えている。アメリカのNPOは、法人格や税制優遇の取得が容易で、その頃、寄付控除の資格をもつ団体だけでも一〇〇万にのぼり、これらのNPOには年間二〇兆円もの寄付が提供されていた。片や、日本のNPOは、税制優遇はもとより、法人格すらとることができない。運営の基礎となる財源でいえば、極めて大きな日米格差が存在していたのである。
 一九九八年に特定非営利活動促進法、いわゆるNPO法が成立すると、日本のNPOをめぐる状況も大きく変化した。各地に地方公共団体によりNPOを育成するためのセンターが開設されたり、補助金や事業の委託も広がってきた。とはいえ、介護保険を利用した高齢者ケアを行う団体や支援費を活用して障害者の地域生活を支援する団体など、特定の業種を除けば、財政的な基盤の弱さは否めない。
 例えば、筆者が二〇〇四年に大阪府と兵庫県のNPO法人を対象に行った調査では、年間予算が三〇〇〇万円を超える団体は一四%。反面、三〇〇万円未満の団体は四四%と半数近くを占め、財政規模でNPOの二極化が進んでいることが明らかになった。
 介護保険や支援費と異なり、指定管理者制度は、さまざまな業種のNPOで活用することが考えられる。日本のNPOセクターにとって大きな飛躍の第一歩であり、NPOにとってビジネスチャンスになるのでは、という期待を感じた。しかし、その後、この制度について調べていくと、問題が少なくないことが明らかになってきた。
 とはいえ、現実に制度が存在し、制度に基づいてNPOも指定管理者に指定され、公の施設の管理運営を開始している以上、単に制度上の問題を指摘しているだけでは何も進まない。NPOが指定管理者として、どのように公の施設の運営にかかわっているのか調べ、管理運営における成果と課題を分析し、指定管理者制度をよりよいものにしていくために、NPOによる公の施設のマネジメントのあり方を提示していくことが必要ではないか。このような認識から執筆を考えたのが、本書である。
 本書は、三部構成をとっている。第一部はNPOによる指定管理の事例紹介、第二部は指定管理者制度の内容や成立後の導入状況などについてみる。第三部では、指定管理者に応募し、指定され、管理運営を行うためのマネジメントの手法について検討していく。
 第一部の事例紹介では、東京都新宿区の環境学習情報センター、福岡県福岡市のぽんプラザホールとゆめアール、埼玉県草加市の児童クラブ、大阪府池田市の水月児童文化センター、兵庫県尼崎市の女性・勤労婦人センター・トレピエ、東京都八王子市の長池公園、愛知県名古屋市のなごやボランティア・NPOセンターを取り上げている。
 これらの事例を選んだ際のポイントには、次のようなものがある。第一に、NPOの活動分野や地域でみて、できるだけ幅広く事例を選ぼうとしたことだ。結果的には、活動分野でみると、環境保護、文化芸術、学童保育、子どもと文化、男女共同参画、公園の管理とまちづくり、NPO支援と多様なものになった。地域的にみても、首都圏で三例、関西で二例、中部と九州で各一例となっている。これらの事例を通じて、一口に指定管理者制度といっても、さまざまな形や内容があることを理解してもらえると思う。
 事例選択の第二のポイントは、基礎的な資料を文献やインターネットなどである程度入手できるところということだ。インターネット時代といわれているものの、地方公共団体のサイトをみても、必ずしも指定管理者制度についての情報が詳しく紹介されているわけではない。個々の指定管理者の選定については、情報をえることは多くの場合、困難だ。一定の情報が入手できなければ、聞き取り調査も難しくなる。基礎的な資料や文献にこだわった理由である。
 第三に、聞き取り調査という現場を訪れる必要性から、NPOの指定管理者が管理運営をしている施設の場所を考慮した。換言すれば、交通の便が理由で含めることができなかったところもあるということだ。山梨県の山中湖町の情報創造館、島根県斐川町の旧豪農屋敷など、興味深い事例を対象にできなかったことは、残念に思っている。次の機会に譲りたい。
 これらの事例を調査するにあたり、それぞれの公の施設の指定管理者になっているNPOの関係者に聞き取り調査を行った。環境学習情報センターでは新宿環境活動ネットの崎田裕子代表理事と御所窪和子事務局長、福岡市のぽんプラザホールとゆめアールでは福岡パフォーミングアーツプロジェクトの高崎大志事務局長、埼玉県草加市の児童クラブは草加・元気っ子クラブの小池奈津夫代表理事、大阪府池田市の水月児童文化センターは北摂こども文化協会の立石美佐子理事長、兵庫県尼崎市の女性・勤労婦人センター・トレピエは男女共同参画ネット尼崎の内田信子理事、東京都八王子市の長池公園はフュージョン長池の富永一夫理事長、名古屋市のなごやボランティア・NPOセンターはボランタリーネイバーズの大西光夫理事長とぼらんぽセンターコンソーシアムの馬場英朗監事、なごやボランティア・NPOセンターの青木研輔副所長である。この場をお借りして、これらの方々にお礼を申し上げたい。
 聞き取り調査とその際に提供していただいた資料などにより、それぞれの事例のもつ課題や成果がより明確に理解できるようになったことはいうまでもない。ただし、こうした課題や成果を含めた各事例の記述内容は、筆者の視点や分析、解釈に基づくものであり、実際に指定管理を行っているNPOの関係者の認識と必ずしも一致するものではないことを付け加えておく。内容に関する責任は、当然、筆者にある。
 なお、NPOの活動内容やNPOが扱う問題について検討することは、本書の目的ではない。しかし、公の施設の管理運営をNPOが行うのは、指定管理者として利益をあげるためではなく、そのNPOの活動や活動の背後にある問題などに関連する業務を行うためである。また、そのNPOが問題に対応する手法は、指定管理者としての事業内容にも反映しているのが普通だ。したがって、この業務に関連するNPOの活動と扱う問題についても、事例のなかである程度触れている。
 制度編とテーマをつけた第二部は、最初の第八章で指定管理者制度の法的根拠である地方自治法の歴史的考察を行ったうえで、指定管理者制度の概要、指定管理者の指定プロセス、導入状況などについて検討する。
 さらに、第三部のNPOによる指定獲得へのマネジメントへの前段階として、第九章でNPOの現状と指定管理者制度について考える。ここでは、NPOの団体数と活動分野などのNPOについての基礎的な情報を整理しておく。また、どのような事業分野のNPOが指定管理者になっているのかをみたうえで、指定管理者になるためのNPOの規模や指定管理者になった実績についても触れている。次の第一〇章では、指定管理者制度の課題とNPOの事業展開というテーマで、NPOと指定管理者制度に関するさまざまな動きと、指定管理者になる以外にこの制度を通じたNPOのビジネス展開の可能性を論じていく。
 第三部は、指定管理者への応募から指定を受けた後の対応までについて、NPOのミッションとの整合性、応募できる能力があるかどうかを判断するフィージビリティの検討、指定管理者への応募の準備作業、実際の応募の作業、そして選定結果発表から管理運営の実施まで、五つの段階にわけて考えてみた。ここでは、主として神奈川県立柳島青少年キャンプ場の指定管理者の選定プロセスを具体例として示している。神奈川県立柳島青少年キャンプ場を具体例として取り上げたのは、情報が整理されているうえ、選定の評価点やヒアリングの記録なども開示されており、資料として価値が高いと判断したからである。

二〇〇六年一二月二五日
柏木 宏

著者プロフィール

柏木 宏  (カシワギ ヒロシ)  (

大阪市立大学大学院創造都市研究科教授。専門はNPOマネジメント。東京都出身。同志社大学文学部卒業後渡米、ラトガース大学大学院労働研究科をへて、1985年にロサンゼルスで日本太平洋資料ネットワーク(JPRN)を設立。日米の市民運動の連携やアメリカのNPOの調査研究、日本のNPOの人材育成などの事業にかかわる。2003年より現職。著書に、「ボランティア活動を考える──アメリカの事例から」(岩波書店、1996年)「共生社会の創造とNPO」(編著:明石書店、2003年)「NPOマネジメントハンドブック──組織と事業の戦略的発想と手法」(明石書店、2004年)など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。