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兵士というもの ゼンケ・ナイツェル(著/文) - みすず書房
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兵士というもの (ヘイシトイウモノ) ドイツ兵捕虜盗聴記録に見る戦争の心理 (ドイツヘイホリョトウチョウキロクニミルセンソウノシンリ)

歴史・地理
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発行:みすず書房
A5判
480ページ
定価 5,800円+税
ISBN
978-4-622-08679-6   COPY
ISBN 13
9784622086796   COPY
ISBN 10h
4-622-08679-4   COPY
ISBN 10
4622086794   COPY
出版者記号
622   COPY
Cコード
C1022  
1:教養 0:単行本 22:外国歴史
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2018年3月12日
最終更新日
2018年3月31日
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書評掲載情報

2018-12-29 朝日新聞  朝刊
評者: 保阪正康(評論家、ノンフィクション作家)
2018-06-30 朝日新聞  朝刊
評者: 保阪正康(ノンフィクション作家)
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紹介

英米軍はドイツ兵捕虜同士の赤裸々な会話を盗聴し、膨大な記録を残した。この画期的史料を歴史学と心理学で分析し兵士の本質に迫る。

第二次世界大戦中の英米軍は捕虜にしたドイツ兵の収容所に盗聴器を仕掛け、詳細な記録をとっていた。その総量は付随資料を含むと15万ページに及ぶ(記録の概説は「補遺」に記載)。
兵士から見た戦争については従来、調書、家族への手紙、回想録などが利用されてきたが、自己を正当化したり後づけの知識で補正されるなど、史料として多くの限界を抱えていた。しかし、盗聴されていることを知らない捕虜同士の会話は赤裸々で、ドイツ国防軍のみならず軍隊一般の心性史に新しい視座を拓く可能性を持っていた。
戦後も保存され1996年に機密解除されながら、書架に埋もれていたそれを発見した歴史家ナイツェルは、史料としての性格を看破し、社会心理学者ヴェルツァーに協力を求めた。人々の内面に触れるこうした史料の可能性を汲み尽くすには、心理学の知見が欠かせない。本書はこうして成った共同研究の成果である。
分析にあたって本書は、個人の行動主体性よりも「参照枠組み」という集合的概念を重視している。たとえば顕彰は象徴的だ。ドイツは詳細な顕彰システムを導入していたが、兵士の受章への願望は驚くほど大きく、行動を規定する要因として働いた。
兵士から見た戦争、第三帝国、そして兵士自身の世界を構成する暴力、破壊、戦争犯罪、感情、セックス、技術、総統信仰、イデオロギー、勝利への信念――。戦争というもの、兵士というものを理解するために、盗聴記録から読みとれることは何か。本書の結論は、ときとして予期しないようなものとなるかもしれないが、我々の理解を核心に向けて一段深めてくれるだろう。

目次

プロローグ

第1章 戦争を兵士たちの視線から見る――参照枠組みの分析
基礎的な方向づけ――ここではいったい何が起きているのか
文化的な拘束
知らないということ
予期
認識における時代特有の文脈
役割モデルと役割責任
「戦争は戦争だ」という解釈規範
形式的義務
社会的責務
さまざまな状況
個人的性格

第2章 兵士の世界
「第三帝国」の参照枠組み
戦争の参照枠組み

第3章 戦う、殺す、そして死ぬ
撃つ
自己目的化した暴力
冒険譚
破壊の美学
楽しさ
狩り
撃沈する
戦争犯罪――占領者としての殺害
捕虜にたいする犯罪
絶滅
絶滅の参照枠組み
射殺に加わる
憤激
まともであること

感情
セックス
技術
勝利への信念
総統信仰
イデオロギー
軍事的諸価値
イタリア兵と日本兵
武装SS
まとめ――戦争の参照枠組み

第4章 国防軍の戦争はどの程度ナチ的だったのか

補遺
謝辞/訳者あとがき/原註/文献/索引

著者プロフィール

ゼンケ・ナイツェル  (ゼンケ ナイツェル)  (著/文

1968年生まれ。グラスゴー大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを経て、現在ポツダム大学教授。専門は軍事史。ウォルツァーとの共著Soldaten: Protokolle vom Kämpfen, Töten und Sterben, Frankfurt a. M., 2011 (『兵士というもの――ドイツ兵捕虜盗聴記録に見る戦争の心理』小野寺拓也訳、みすず書房)の前書とも言えるAbgehört. Deutsche Generäle in britischer Kriegsgefangenschaft 1942-1945, Berlin, 2005(『盗聴――イギリスの捕虜となったドイツ軍将官たち 1942-1945年』)で注目を集めた。グイド・クノップ監修の歴史ドキュメンタリー番組に積極的に出演している他、テレビ映画『ジェネレーション・ウォー(ドイツ語タイトルは Unsere Väter, unsere Mütter)』などへの専門的見地からの助言も行っており、メディアへの露出が少なくない。

ハラルト・ヴェルツァー  (ハラルト ヴェルツァー)  (著/文

1958年生まれ。フレンスブルク・ヨーロッパ大学客員教授。社会心理学者・社会学者。膨大な著作・編著があり研究テーマも多岐にわたるが、中心テーマは暴力と記憶。代表作にOpa war kein Nazi. Nationalsozialismus und Holocaust im Familiengedächtnis, Frankfurt a. M., 2002(『おじいちゃんはナチじゃなかった――家族の記憶におけるナチズムとホロコースト』ザビーネ・モラー、カロリーネ・チュッグナルとの共著)、Täter. Wie aus ganz normalen Menschen Massenmörder werden, Frankfurt a. M., 2005(『加害者――ごくふつうの人々はいかにして大量殺戮者となるのか』)がある。

小野寺拓也  (オノデラタクヤ)  (翻訳

1975年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。昭和女子大学人間文化学部を経て、現在、東京外国語大学世界言語社会教育センター特任講師。専門はドイツ現代史。著書に『野戦郵便から読み解く「ふつうのドイツ兵」――第二次世界大戦末期におけるイデオロギーと「主体性」』(山川出版社、2012)、共著に『20世紀の戦争――その歴史的位相』(メトロポリタン史学会編、有志舎、2012)、訳書にS・ナイツェル/H・ヴェルツァー『兵士というもの――ドイツ兵捕虜盗聴記録に見る戦争の心理』(みすず書房、2018)、R・ミュールホイザー『戦場の性――独ソ戦下のドイツ兵と女性たち』(共訳、姫岡とし子監訳、岩波書店、2015)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。