書店員向け情報 HELP
出版者情報
日本の長い戦後
敗戦の記憶・トラウマはどう語り継がれているか
- 書店発売日
- 2017年7月19日
- 登録日
- 2017年6月16日
- 最終更新日
- 2017年7月12日
書評掲載情報
2017-09-03 |
東京新聞/中日新聞
朝刊 評者: 福間良明(立命館大学教授) |
2017-09-02 |
日本経済新聞
朝刊 評者: 小菅信子(山梨学院大学教授) |
MORE | |
LESS |
紹介
憲法改正、領土問題、歴史認識問題はなぜ、こんなにも軋轢を招くのか。アメリカで教える気鋭の社会学者が比較文化の視点から、日本の「敗戦の文化」を考察する。
私たちが家族、学校、メディアをとおして触れる戦時の物語は多様だ――戦場で英雄だった祖父、加害の体験を話さずに逝った父、トラウマを解消できない被害者たち。それらの記憶は、史実に照らして見直されることなく共存し、家族内では、調和が最優先される語りが主観的に選び取られる。
高校の歴史教科書・歴史漫画の分析からは、なぜ若い世代が自国に自信をもてないか、その理由が見えてくる。
そしてメディアは、記憶に政治色をつけながら、それぞれ違う物語を映し出す。
戦後70年を過ぎた今、不透明な過去に光を当て、問題の核心に迫る。
目次
日本の読者のみなさまへ
謝辞
第1章 敗戦の傷跡と文化的記憶
文化的トラウマ、記憶、国民アイデンティティ
戦争の記憶をめぐる三つの道徳観とその語り(戦死した英雄を語る――「美しい国」の記憶/被害者を語る――「悲劇の国」の記憶/加害者を語る――「やましい国」の記憶)
敗戦の文化にみられる記憶の分断
本書について
第2章 個人史と家族史を修復する記憶
戦中世代の証言
語らない親との対話――溝を埋め、傷を癒す(「温厚な父」/「戦争は、絶対に起こしてはいけない」/「戦争の反省などみじんもない」)
家族への帰属意識と無力感の内面化
第3章 敗北感の共有とその位置づけ――メディアのなかの英雄、被害者、加害者の物語
政治パフォーマンスとしての追悼(勝算のない戦争でなぜ死ななければならなかったのか/新聞社説に見る戦争責任と被害の言説)
追悼の季節の文化メディア(われわれの悲惨な戦争/父たちの愚かな戦争/祖父たちの立派な戦争)
国民としての帰属意識と阻まれた他者への共感
第4章 戦争と平和の教育――子供にどう第二次世界大戦を教えるか
上からの歴史――教科書のなかの戦争と平和(高校歴史教科書のなかの戦争と平和/公民教科書のなかの戦争と平和)
下から見た歴史――「学習漫画」のなかの戦争と平和(「学習用」歴史漫画/「大衆的」歴史漫画)
子供世代向けの教訓としての文化的トラウマ
第5章 敗戦からの回復とは何か――他国との比較から
敗戦の文化を乗り越える――道義的回復に向けた三つの展望(ナショナリズムの視点――名誉と愛国心、国への帰属意識/平和主義の視点――心の癒しと人間の安全保障/国際協調(和解)主義の視点――正義と道義的責任)
和解のグローバル・モデルはあるのか
ドイツとの比較
「普通の国」として世界に返り咲く
訳者あとがき
原注
参考文献
索引
上記内容は本書刊行時のものです。