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新版 日本のルィセンコ論争 中村禎里(著/文) - みすず書房
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新版 日本のルィセンコ論争 (シンパンニホンノルィセンコロンソウ)

自然科学
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発行:みすず書房
四六判
280ページ
定価 3,800円+税
ISBN
978-4-622-08620-8   COPY
ISBN 13
9784622086208   COPY
ISBN 10h
4-622-08620-4   COPY
ISBN 10
4622086204   COPY
出版者記号
622   COPY
Cコード
C1040  
1:教養 0:単行本 40:自然科学総記
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2017年6月15日
最終更新日
2017年7月12日
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紹介

かつて、非科学的な遺伝学説が日本の生物学会を席捲し、科学は機能不全に陥った。本書は日本の生物学史の暗黒期の記録であり、科学と政治の緊張関係や捏造事件について考える時、必ず振り返られるべき書である。
ソ連の生物学者ルィセンコは、1930年代に「春化処理」によって農作物を増産できると主張した。この理論は実験による検証を経ないままスターリン政権に採用され、理論に批判的な生物学者への弾圧を招き、のちに農業生産に大損害をもたらした。
日本でも同様の混乱が起きたことは語られなくなって久しい。本書は、日本でルィセンコ理論が台頭していった過程を、当時の科学者たちの問題意識や議論を精緻に追うことで描きだす。日本でこの理論が紹介された当初は、新学説を科学的に検証しようという態度が支持派反対派双方に見られたという。しかし議論は次第に思想論争へと変質していく。ルィセンコ理論は戦後の農業改革運動が失敗するまで暴走し続けた。

近年、ルィセンコ学説の根拠とされた現象の一部は「エピジェネティクス」というまったく異なるメカニズムで解釈できることが明らかになった。巻頭に本書のテーマと21世紀に至る生物学史の関係を紹介する解説を付した、初版刊行50周年記念版として本書をおくる。

目次

『日本のルィセンコ論争』を読む――50周年記念版に寄せて(米本昌平)

はじめに

第一章 前史
ソ連における戦前の生物学論
日本のマルクス主義と生物学
遺伝学の正統派と非正統派

第二章 最初の衝突
発端
本格的な紹介
批判と反批判
むすび

第三章 政治の季節
ソ連における1948年論争
激怒する正統派
中間派の立場
ルィセンコ派と二つの世界
ルィセンコ学説の「勝利」
むすび

第四章 進化論をめぐって
進化論とメンデリズム批判
獲得形質の遺伝
レペシンスカヤの細胞新生説
自己運動論争
むすび

第五章 ヤロビの村で
ミチューリン運動のはじまり
ミチューリン農法
ミチューリン運動と生物学者
農民運動としてのミチューリン運動
むすび

第六章 斜陽に立つ
後退の原因
ルィセンコ学説の再検討
ミチューリン運動の再検討
ソ連では
むすび

文献表
あとがき
30年をへて――アマチュア研究者とスターリン主義
索引

著者プロフィール

中村禎里  (ナカムラ テイリ)  (著/文

1932-2014。東京に生まれる。1958年、東京都立大学理学部卒業。1967年、立正大学教養部講師。その後、助教授、教授を経て、1995年から同大学仏教学部教授。著書 『ルィセンコ論争』(みすず書房、1967、のち〈みすずライブラリー〉版『日本のルィセンコ論争』、1997)『生物学と社会』(みすず書房、1970)『生物学の歴史』(河出書房新社、1973)『生物学を創った人びと』(日本放送出版協会、1974、のち増補・改訂して『生物学を創った人々』みすず書房、2000)『危機に立つ科学者』(河出書房新社、1976)『日本人の動物観』(海鳴社、1984)『狸とその世界』(朝日新聞社、1990)『河童の日本史』(日本エディタースクール出版部、1996)『胞衣の生命』(海鳴社、1999)『狐の日本史』近世・近代篇(日本エディタースクール出版部、2003)『生命観の日本史』古代・中世篇(日本エディタースクール出版部、2011)ほか多数。

米本昌平  (ヨネモト ショウヘイ)  (解説

1946年、愛知県生まれ。科学史家。三菱化成生命科学研究所、科学技術文明研究所を経て、現在は東京大学教養学部・客員教授。著書『遺伝管理社会』(弘文堂、1989)[毎日出版文化賞受賞]、『地球環境問題とは何か』(岩波新書、1994)、『知政学のすすめ』(中公叢書、1998)[吉野作造賞受賞]、『優生学と人間社会』(共著、講談社現代新書、2000)、『バイオポリテイクス』(中公新書、2006)[科学ジャーナリスト賞受賞]、『バイオエピステモロジー』(書籍工房早山、2015)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。