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人はなぜ太りやすいのか マイケル・L・パワー(著/文) - みすず書房
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人はなぜ太りやすいのか (ヒトハナゼフトリヤスイノカ) 肥満の進化生物学 (ヒマンノシンカセイブツガク)

自然科学
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発行:みすず書房
四六判
392ページ
定価 4,200円+税
ISBN
978-4-622-08553-9   COPY
ISBN 13
9784622085539   COPY
ISBN 10h
4-622-08553-4   COPY
ISBN 10
4622085534   COPY
出版者記号
622   COPY
Cコード
C0045  
0:一般 0:単行本 45:生物学
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2017年6月15日
最終更新日
2017年7月12日
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書評掲載情報

2017-08-27 読売新聞  朝刊
評者: 出口治明(ライフネット生命創業者)
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紹介

人類は太り続けてきた。肥満人口は1980年から倍増し、肥満を含む過剰体重者の割合は1位のクック諸島で81%、ファストフード大国アメリカで72%に上る(WHOのデータ)。肥満自体は新しい現象ではないが、これほどの流行は近年の事象である。
種としての誕生以来、人類は食物獲得のためによく身体を動かし、あり余る食物に恵まれることが稀な環境で数十万年を生き延びた。生存のための適応は、当然エネルギー摂取効率を高める方向に働いた。現代になって初めて、高カロリー食が市場に溢れ、身体活動は余暇のスポーツという贅沢に変わったが、身体は過去の進化の刻印をとどめている。エネルギーの過剰蓄積への歯止めが弱い体で、人類は飽食の時代を迎えたのである。進化の過程で大型化した脳を支えたのが脂肪だったこと、脳の発達のために赤子が脂肪を豊富に蓄えて生まれてくることも、太りやすさの背景にある。
本書は人の肥満に進化生物学的アプローチを中心に迫った先駆的な仕事。代謝、内分泌、熱力学、遺伝、エピジェネティクスに及ぶ膨大な知識を集約し、複雑に相関する人体の生理を解き明かした。肥満は様々なリスク要因となるが、脂肪は人に必須である。病気への抵抗や女性の生殖に利益をもたらす。過度の痩身は逆に不健康を招く。カロリーや血糖値ばかり気にすることも、バランスを崩す可能性がある。どうしたら健康でいられるのか。近道はないが、確実な道へのヒントを本書は示している。

目次

はじめに――ヒューマンバイオロジー、進化、肥満

第1章 肥満への道
肥満を測定する/肥満の流行(エピデミック)は本当に存在するのか?/世界の肥満者割合/健康上の帰結/健康以外の帰結/肥満の流行に対する理解/肥満と進化/何が肥満を引き起こすのか?/なぜ太らない人もいるのか?/まとめ

第2章 私たちの遠い昔の祖先
初期のヒト/大きな体をもつことの利点/食物と適応/進化の歴史における食物の変化/ヒトの消化管/食物の腸内滞留時間/デンプンの消化/私たちの消化機構と現代の食事/「不経済な組織」仮説/まとめ

第3章 食事の進化
ヒト、食物、食べるという行為/食事とは何か?/チンパンジー、肉食、そして食事/食事と脳/協働と忍耐/チンパンジーとボノボ/協調と公平性/獲物と捕食者/協働と効率/まとめ

第4章 進化、適応、ヒトの肥満
ミスマッチ・パラダイム/恒常性パラダイム/アロスタティックロード/過去から受け継いだ機械装置/怠けることは、ひとつの適応か?/旧石器時代の食事/稀なものが貴重になる/ハチミツ/脂肪/脳と脂肪酸/まとめ

第5章 進化、適応、現代の試練
現代の食事/カロリーを生む液体/フルクトース(果糖)/高グリセミック指数食/カロリー源として以上のもの/外食/一人前のサイズ/身体活動/建造環境/睡眠/栄養転換/肥満と栄養失調/肥満は伝染するのか?/まとめ

第6章 エネルギー、代謝、生命の熱力学
エネルギーと代謝/生命の熱力学/エネルギーを取り除く/「食べる」こととエントロピー/エネルギー支出/エネルギー総支出量/「不経済な組織」仮説の再検討/エネルギー摂取/エネルギーバランス/均衡試験/エネルギーの貯蔵/エネルギー貯蔵組織/エネルギー貯蔵とエネルギー要求性/まとめ

第7章 情報分子とペプチド革命
進化的視点/情報分子/ペプチド革命/ホルモンと内分泌腺/消化を助ける内分泌腺/脳腸ペプチド/膵臓ポリペプチド/レプチン物語/ニワトリ・レプチンの興味深い例/レプチンの栄養機能/魔法の弾丸か鉛の散弾か/まとめ

第8章 食欲と飽満
満腹感、飽満、食欲/食欲を制御する信号/脳、食欲、そして満腹ということ/代謝モデル/代謝と肥満/まとめ

第9章 食べるための準備を整える
パブロフ再検討/脳相反応/制御生理における期待反応の重要性/摂食における期待反応の重要性/脳相反応の証拠/味覚の役割/脂肪に対する味覚は存在するか?/中枢神経の貢献/脳相インスリン反応/まとめ

第10章 食べるということの逆説
食欲における脳相反応の役割/満腹における脳相反応の役割/情報分子の多様な機能/食欲と飽満、そしてエネルギー収支/まとめ

第11章 脂肪の生物学
脂肪組織/内分泌系/脂肪組織と内分泌機能/ステロイドホルモンとしてのビタミン/ビタミンDと脂肪組織/ステロイドホルモンと脂肪/レプチン/レプチンと妊娠/腫瘍壊死因子/アディポネクチン/神経ペプチドY/肥満と炎症/中心性肥満と末梢性肥満/まとめ

第12章 脂肪と生殖
脂肪、レプチン、生殖/脂肪過多における性差/中心性肥満 対 末梢性肥満/性ホルモンが脂肪蓄積と代謝へ与える影響/レプチンとインスリン/脂肪の代謝/生殖における脂肪の利点/太った赤ん坊/脂肪と女性の生殖/脂肪、レプチン、思春期/肥満と出産/肥満、妊娠、出産の結果/まとめ

第13章 肥満の遺伝子とエピジェネティクス
古い遺伝学/新しい遺伝学/一塩基多型/子宮内での代謝プログラミング/貧困、栄養、心疾患/エピジェネティックな要因/倹約遺伝子/子宮内プログラムの機構/倹約遺伝子仮説への批判/ヒトの多様性/体脂肪分布と代謝/ピマ・インディアン/同類婚と肥満の流行/緯度と食事中の脂肪/まとめ

結論――現代生活における危機を生き延びる

訳者あとがき

参照文献
索引

著者プロフィール

マイケル・L・パワー  (マイケルパワー)  (著/文

アメリカ産科婦人科学会上級研究員。スミソニアン国立動物園所属動物科学者。ジェイ・シュルキンとの共著にThe Evolution of Obesity (Johns Hopkins University Press, 2009, 『人はなぜ太りやすいのか』山本太郎訳、みすず書房、2017), The Evolution of the Human Placenta (Johns Hopkins University Press, 2012), Milk: The Biology of Lactation (Johns Hopkins University, 2016) がある。

ジェイ・シュルキン  (ジェイシュルキン)  (著/文

アメリカ産科婦人科学会研究部長。ワシントン大学産科婦人科学部客員教授。ジョージタウン大学神経科学学部特任教授。マイケル・L・パワーとの共著にThe Evolution of Obesity (Johns Hopkins University Press, 2009, 『人はなぜ太りやすいのか』山本太郎訳、みすず書房、2017), The Evolution of the Human Placenta (Johns Hopkins University Press, 2012), Milk: The Biology of Lactation (Johns Hopkins University, 2016) がある。

山本太郎  (ヤマモトタロウ)  (翻訳

長崎大学熱帯医学研究所・国際保健分野主任教授。1990年長崎大学医学部卒業。長崎大学大学院博士課程病理学系専攻修了(博士医学)。東京大学大学院医学系研究科博士課程国際保健学専攻修了(博士国際保健学)。京都大学、ハーヴァード大学、コーネル大学、および外務省勤務等を経て現職。著書に『ハイチ――いのちとの闘い』(昭和堂)『感染症と文明』(岩波新書)『新型インフルエンザ』(岩波新書)ほか、翻訳書にジャック・ペパン『エイズの起源』、マーティン・J・ブレイザー『失われてゆく、我々の内なる細菌』、マイケル・L・パワー/J・シュルキン『人はなぜ太りやすいのか――肥満の進化生物学』(以上みすず書房)ほかがある。

上記内容は本書刊行時のものです。