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数理議論学 若木 利子(著) - 東京電機大学出版局
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数理議論学

A5判
200ページ
上製
価格 3,600円+税
ISBN
978-4-501-55550-4
Cコード
C3004
専門 単行本 情報科学

出版社在庫情報
在庫あり
初版年月
2017年3月
書店発売日
登録日
2017年1月31日
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紹介

人工知能分野において新たに確立された「数理議論学」について解説。この理論は、意思決定や裁判支援、マルチエージェントシステムによる推論や交渉など、あらゆる分野の垣根を超えて活用することが可能。AI分野における議論研究に関する教科書・参考書として最適。

目次

序論
第1章 数理議論学とは?
 1.1 議論学
 1.2 議論と論理学
 1.3 議論とトゥールミン図式
 1.4 議論のプロトコル
 1.5 デフィージブル推論
 1.6 本書の構成
第2章 非単調推論と論理プログラミング
 2.1 非単調推論研究と数理議論学の誕生
 2.2 非単調推論
 2.3 標準論理プログラムと宣言的意味論
 2.4 拡張選言プログラムと宣言的意味論
第I部 抽象議論
第3章 抽象議論の理論
 3.1 議論フレームワークとDungの議論意味論
 3.2 許容可能性に基づく新たな議論意味論
 3.3 無衝突性に基づく新たな議論意味論
 3.4 議論の意味論vs.論理プログラムの意味論
 3.5 抽象議論意味論のまとめ
 3.6 ラべリングによる議論意味論の表現
 3.7 解集合プログラミングと議論意味論の計算
第4章 プリファレンスと価値を用いた抽象議論
 4.1 プリファレンスの種類と分類
 4.2 プリファレンス付き議論フレームワーク
 4.3 価値に基づく議論フレームワーク
 4.4 動的プリファレンスと拡張議論フレームワーク
 4.5 拡張の無衝突性保証の問題
第II部 構造化論証を用いた議論
第5章 仮説に基づく議論
 5.1 仮説に基づく議論フレームワーク:ABA
 5.2 ABAの論争木と論争導出の証明手続き
 5.3 ABAにおける議論意味論の無矛盾性の保証
第6章 ASPIC+フレームワーク
 6.1 ASPIC+における議論の理論
 6.2 ASPIC+の議論意味論
 6.3 仮説に基づくABAとの関係
 6.4 ASPIC+議論意味論の無矛盾性の保証
第7章 不動点意味論と対話的証明論
 7.1 議論の対話と不動点意味論
 7.2 不動点意味論
 7.3 対話的証明論
第8章 プリファレンスと仮説に基づく議論
 8.1 プリファレンス付きABA
 8.2 p_ABA議論意味論の無矛盾性の保証
第III部 議論の応用
第9章 意思決定と実践的議論
 9.1 プリファレンスを用いた意思決定
 9.2 プリファレンスを用いた実践的議論
第10章 議論をするマルチエージェント
 10.1 マルチエージェントと議論フレームワーク
 10.2 セマンティックWeb推論と議論エージェント推論システムの統合
第11章 法的論争への数理議論学の応用
 11.1 法律の知識源
 11.2 法律の推論モデル
 11.3 法律論争と議論フレームワーク
付録
 付録A:計算の複雑さ
 付録B:優先度付き論理プログラム
参考文献
索引

前書きなど

 若者の一人(若木)が人工知能研究における数理議論(argumentation)の研究に初めて出会ったのは,1993~1995年頃,川崎の富士通研究所でたびたび開催されていたR.A.Kowalski教授(英国インペリアル・カレッジ)の講演会に出席したときでした.このとき,Kowalski教授は教授直筆のOHPフィルムを用いて,当時インペリアル・カレッジでKowalski教授がDung教授らと進められていたassumption-based argumentation(ABA,第5章)に関する最先端のホットな研究のレクチャーをして下さり,非単調推論や論理プログラミングの意味論との関係についても述べられていました.今から思えば,Dung教授の抽象議論(第3章)やABA(第5章)が生まれようとする,まさにそのときに,本家本元のKowalski教授からこれらに関する貴重な研究を著者が直接聞いていたことになります.しかし当時は,非単調推論の枠組である優先順位付き極小限定(prioritized circumscription)を論理プログラミングで計算する研究[67]に取り組んでいた時期であり,Kowalski教授からレクチャーいただいていた議論研究のお話は,自分の研究における関連研究の位置付けとして軽く理解し,研究テーマとして深く取り組むことは考えてもいませんでした.
 しかしそれから約10年後に,偶然,ある国際会議で新潟大学の澤村一教授にお会いし,それがご縁で2005年頃より,すでに議論研究を進められていた澤村教授や本書の共著者である東京工業大学の新田克己教授と科研費による研究組織で推論や議論に関する共同研究をすることになりました.この共同研究において,1995年に発表されたDungの議論意味論が世界的に高く評価・認知されており,現在,それをベースにさまざまなアプローチで議論研究が激しく進展しており,数理議論の研究成果も蓄積されてきて学問的体系が形成されつつあることがわかってきました.そして数理議論の研究は,理論的にはそれまで著者が取り組んでいた論理ベースの研究と関係があるだけではなく,マルチエージェントの議論や法的論争などの種々の知識処理分野への応用力が高いことを認識し,その後,すっかり議論研究に魅せられて,はまってしまった感があります.他方,このような研究と並行して,芝浦工業大学で大学院生などに研究指導を行っていたことから,議論研究に興味をもつ学部4年生や大学院の学生に著者たちの研究に参加してもらう機会が多くなりました.
 本書執筆は,芝浦工業大学で最終講義をした折に,司会の相場亮教授から数理議論に関する本の執筆を勧められたことがきっかけでスタートしました.かねてより,著者の研究室に配属された学部4年生や大学院生の学生が議論研究に取り組む際,この分野の日本語の書籍が皆無に近く,その結果,ときには,たとえ学部4年生でも最先端の国際ジャーナル論文誌「Artificial Intelligence」に掲載された英文論文の数ページを読む必要が生じていました.それゆえ,若い学生たちがこの新しい研究分野の基礎知識をいち早く修得して最先端の研究に取り組むためには,日本語で書かれた数理議論の解説書および大学院レベルの教科書出版の必要性を認識するようになりました.
 以上の研究教育の経験から,本書は特に大学院での議論研究に関する教科書,あるいは,参考書として使用されることを目的としています.本書は上述した経緯より,第1章および第11章を新田教授にご執筆いただき,若木が第2~10章および付録を執筆いたしました.本書により,数理議論に関する興味を深めて頂ければ幸いです.
 末筆ながら,本書の執筆をお薦めいただいた芝浦工業大学の相場亮教授に心よりお礼申し上げます.草稿段階での修正や本書の校正作業において,東京電機大学出版局の江頭勝己氏,吉田拓歩氏に大変お世話になりました.深く感謝いたします.
2017年2月
若木 利子

上記内容は本書刊行時のものです。