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学びとコンピュータハンドブック 佐伯 胖(監修) - 東京電機大学出版局
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学びとコンピュータハンドブック (マナビトコンピュータハンドブック)
原書: 0

教育
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A5判
410ページ
並製
定価 6,300円+税
ISBN
978-4-501-54420-1   COPY
ISBN 13
9784501544201   COPY
ISBN 10h
4-501-54420-1   COPY
ISBN 10
4501544201   COPY
出版者記号
501   COPY
Cコード
C3004  
3:専門 0:単行本 04:情報科学
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2008年8月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2021年1月12日
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目次

1 学習観・教育観
 1.1 「学習・教育」観
 1.2 状況的学習論
 1.3 学習者中心主義
 1.4 協調学習 ―拡張するソーシャルな学び
 1.5 伝統芸能(わざ)の学び
 1.6 学習環境デザイン
 1.7 学習環境の構築と運用
 1.8 教育実践研究
 1.9 組織学習
 1.10 教育評価の原理と課題
 1.11 教育評価の機能と方法
 1.12 教育データの量的分析
 1.13 教育データの質的分析
2 コンピュータ,ネットワークの技術的・社会的展開
 2.1 インターネット
 2.2 情報検索
 2.3 Web2.0
 2.4 ブログ炎上
 2.5 オープンソース
 2.6 ウィキペディア
 2.7 携帯電話
 2.8 iPod(アイポッド)
3 コンピュータ利用教育
 3.1 コンピュータ利用教育とは
 3.2 情報通信技術(ICT)と教育
 3.3 コンピュータ利用教育はどこへ?
 3.4 ユビキタス環境におけるコンピュータ利用教育
 3.5 学びを支えるICT
 3.6 コンピュータ利用教育を支えるもの
4 「情報」教育
 4.1 情報技術の教育
 4.2 タイピングとマウス操作 ―情報教育における身体性
 4.3 プログラミング
 4.4 教育用スクリプト言語によるアルゴリズム教育
 4.5 図解 ―情報教育における感性
 4.6 指導設計(ID:インストラクショナル・デザイン)と情報システム構築
 4.7 メディア・リテラシー
 4.8 セキュリティ
 4.9 情報倫理
 4.10 教育におけるIT利用と著作権
5 小・中・高での「情報」教育
 5.1 学習指導要領におけるコンピュータ教育の変遷
 5.2 教科「情報」の現状と課題
 5.3 総合的な学習の時間とコンピュータの活用のねらいとその視点
 5.4 教科におけるコンピュータの活用のねらいとその視点 ―事例:情報教育としての世界史B
 5.5 「情報」と他教科のクロスカリキュラム
 5.6 予習教材としてのeラーニング活用
 5.7 米国における軽度発達障害児童・生徒に対する「技術支援」動向
 5.8 学校の校務の情報化と教員研修
6 大学における「情報」教育環境
 6.1 大学における情報環境の変遷
 6.2 情報教育支援体制
 6.3 授業支援システム
 6.4 CMSの変遷
 6.5 大学におけるeラーニングシステム構築と運用
 6.6 遠隔授業
 6.7 授業のSNS支援
 6.8 モバイルラーニング
 6.9 情報環境を用いた学生支援
 6.10 大学Webサイトの展開
 6.11 大学におけるPC必携と諸課題
7 外国語教育・学習におけるコンピュータ利用
 7.1 外国語教育・学習モデル
 7.2 CALL環境の構築と運用の実態
 7.3 外国語学習デジタルコンテンツの制作
 7.4 2Dアバター・チャット・システムを利用したコミュニケーション活動の活性化(事例1)
 7.5 学びを豊かにするICT環境をどう構築するか(事例2)
 7.6 多言語Web教材「長崎・言葉のちゃんぽん村」(事例3)
 7.7 外国人への日本語教育(事例Ⅳ)
8 各分野におけるコンピュータ利用
 8.1 数学教育におけるコンピュータ利用
 8.2 化学教育における計算機の利用
 8.3 科学教育におけるICT活用
 8.4 理数教育における数式処理ソフトの活用
 8.5 法律学とコンピュータ ―法学教育の観点から
 8.6 経済学教育と数式処理システム
 8.7 会計教育におけるコンピュータ利用
 8.8 ビジネス教育とコンピュータ統計
 8.9 芸術教育におけるコンピュータ利用
9 社会人教育における授業法
 9.1 「知識伝授」モデルの特質と限界
 9.2 「講義」の可能性と限界 ―知識伝授・知識習得型の授業法
 9.3 「学習支援型」モデルの授業法
 9.4 「互学互習」モデルの概要と可能性
 9.5 「互学互習」における講師の役割
 9.6 プロジェクト型授業のメディア環境
 9.7 プロジェクト型授業と支援者の役割
 9.8 オンデマンド・ティーチングとプログラムド・ティーチング
 9.9 コーチングとファシリテーション
 9.10 授業法と知の獲得・習得 ―「学びのピラミッド」に込められた知見
 9.11 「目に見える議論」を生む「場と機会」を提供する ―コラジェクタ活用による議論の可視化
 9.12 社会人教育研修におけるアドミニストレーション実務
10 社会とコンピュータ利用教育
 10.1 世界情報社会サミット(WSIS)とインターネットガバナンス
 10.2 デジタル・デバイドと国際社会
 10.3 対話装置としてのWWWの実践
 10.4 ネットと放送「融合論」の錯誤
 10.5 市民メディアの発展と市民の情報発信の高まり
 10.6 政治活動へのインターネット利用
 10.7 マンガの新しい広がり ―紙からケータイへ
 10.8 ビジュアルリテラシー教育のための
索引
編集委員・執筆者一覧

前書きなど

 かつて,ソクラテスは教育を産婆術にたとえた。そのことの意味について,これまであまり考えたことがなかったのだが,最近,「赤ちゃんが生まれる」ということを身近に知る機会があったため,あらためて考えさせられた。
 母親が産気づいてから実際の出産が始まるまでというのは,実に「長い」。待っている者にしてみれば,「本当に生まれてくるのか」と疑いをもちたくなるほどの長さである。何度も押し寄せる陣痛を通して,少しずつ,少しずつ,進行していくのだが,ある段階に至ると,ほとんど突然といって良いほど、急に出産が「はじまる」。それはあたかも,赤ちゃんが「よし,出るぞ」と決意を固めたかのようであり,赤ちゃんはみずから「身をよじって」出てくるのである。それは母体が「押し出す」というより,胎児の方から狭い産道をくぐりぬけて「出てくる」のだ。そのときの助産師さんは,身をよじってはい出てくる赤ちゃんを迎え,「歓迎する」。「ようこそ,いらっしゃい!」というわけだ。
 ああ,これが「教育」という営みなのだ。「教育する(educate)」という言葉は,「引き出す(educe)」という言葉から来ているとされることがあるが,それは違う。赤ちゃんは「引き出す」のではなく,決然として,身をよじって,苦しいもがきを通じて,「出てくる」のだ。それを,「支えて」いるのが「助産」ということであり,それこそが教育の本質なのだ。

 本ハンドブックは,CIEC(コンピュータ利用教育協議会)創立10周年を記念して編纂された。
 CIECは創設のときから,一貫して,コンピュータ利用教育を「教育」という視点から検討し,問い直し,構築していこうという考え方に立ち,たんに,コンピュータを教育で活用する技術を開発することのみを目指すものではないとしてきた。つまり,教育における「コンピュータ利用技術」の開発を目的とするのではなく,「コンピュータ利用教育」という,まさしく「教育」は,どうあるべきかを考えようというのである。その場合,CIECが考える「教育」は,「教え込み」としての教育ではなく,あくまで,学習者自身の「学び」を支援するという意味での教育である。「教えるべきこと」を「習得」させて,「よくできました」とほめる(かくして,ますます教師依存を高める)のが教育ではない。知りたいとねがい,学ぼうとして,「身をよじって」もがいて出てくる「学び」を,大手をひろげて,「ようこそ,いらっしゃい!」と歓迎し,受け止めるのが教育なのだ。
 ところが,世の中一般では,コンピュータ利用技術の発展とその普及にはすさまじいものがある。こういうハイテク・情報化に「ついていけない」ことになってはいけないからというので,「コンピュータ教育」,「情報教育」が必要だとされた。すべての学校のすべての教室にコンピュータを導入し,すべての教室にLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)を敷設してインターネット接続を可能にしなければならないとされて,莫大な国家予算が投入された。それらがほぼ100パーセント実現した頃,実は,子どもたちを含めた一般市民は,ケータイ(携帯電話)を通じて,いつでも,どこでも(むしろ,文字どおり「場所をわきまえず」どこででも)インターネット接続し,電子メール交換し,「とんでもないところ」を含めた広範囲のアクセスポイントと自由自在に交流してしまっているのだ。「ついていけない」のは,一世代前のオトナたちであり,子どもや「若い人たち」は,そういうオトナたちの知らないトンデモナイ世界で「ようこそ,いらっしゃい!」と(擬装的に)歓迎されるのだが,そのあとは完全に「浮遊」させられるのである。そこには,「身をよじって」もがいて生まれてくる「学び」などはない。いたるところにしかけられた「エサ」や「ワナ」におびき出され,振り回され,あげくのはてには,もはや「どうもがいても,はい出ることのできない」世界に陥られるのである。
 さあ,どうする。この発展し続け,普及し続ける「コンピュータ利用技術」の洪水のなかで,「コンピュータ利用教育」という「教育」はどうあるべきなのか。それを,「教育」とはそもそもどういう営みなのかを原点から問い直して,あるべきコンピュータ利用教育についての指針をさぐる,そういうときに考えるべき「問題群(issues)」をあつめたのが本ハンドブックである。
 ここから,どのような指針や実践への示唆を読み取るかは,読者にまかされている。本ハンドブックでは,何をどう考えてもよいが,ここで取り上げている知見,課題,論点は,「外してはならない」こと,「無視して通ってはならない」こと,「いつも,考慮しておかねばならないこと」などである。
 CIEC創立10周年を記念し,CIECのもてる知恵を結集して,この現代の世の中で「コンピュータ利用教育」という「教育」について考えるとき「はずしてはならない」項目を厳選した。各項目の執筆者も,「この項目ならこの人ならでは」という方々にお願いした。非常に濃い内容をコンパクトに,読みやすくまとめていただいたと確信するしだいである。
 この困難な時代に,本来の「教育」の視点に立って,コンピュータ利用教育を考える資源として活用していただければ幸いである。
 2008年7月
 佐伯胖

上記内容は本書刊行時のものです。