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イメージセンサの技術と実用化戦略 越智成之(著) - 東京電機大学出版局
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イメージセンサの技術と実用化戦略 (イメージセンサノギジュツトジツヨウカセンリャク) ソニー技術者たちの挑戦 (ソニーギジュツシャタチノチョウセン)

工業・工学
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A5判
224ページ
並製
価格 2,400円+税
ISBN
978-4-501-32920-4   COPY
ISBN 13
9784501329204   COPY
ISBN 10h
4-501-32920-3   COPY
ISBN 10
4501329203   COPY
出版者記号
501   COPY
Cコード
C3055  
3:専門 0:単行本 55:電子通信
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2013年1月
書店発売日
登録日
2013年1月20日
最終更新日
2013年10月11日
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紹介

イメージセンサの技術開発の流れと市場動向をまとめ、技術的ブレークスルー、Management of Technology(MOT)のケーススタディ、ビジネス戦略エピソードや特許戦略について、プロジェクトに携わった技術者群にスポットをあてて、開発者ならではの視点・観点でつづられている。明るい兆しのない日本の電機業界を担う技術者に向けて、独創的な商品を開発し、ビジネスで成功を収め、世の中・社会に貢献することの喜びを伝える。世界を変えることができるものづくりの面白さや可能性を伝える。

目次

第1部 イメージセンサの基礎
 第1章 イメージセンサの構造と動作
  1.1 画像システムにおけるイメージセンサの位置づけ
  1.2 イメージセンサとは何か
  1.3 各種半導体イメージセンサ
  1.4 IT-CCDイメージセンサ
  1.5 FIT-CCDイメージセンサ
  1.6 市松画素配列イメージセンサ
  1.7 CMOSイメージセンサ
  1.8 CMOSイメージセンサのオンチップADコンバータ
  1.9 CCDとCMOSイメージセンサの性能,機能比較
  1.10 イメージセンサのシミュレーション技術
 第2章 CCD発明に至る基礎技術
  2.1 フィルムカメラ技術
  2.2 撮像技術
  2.3 MOS構造
  2.4 電荷転送概念と素子構造
  2.5 メインメモリの開発競争からCCDの誕生へ
  2.6 ベル電話研究所のCCDはなぜ成功しなかったか
第2部 イメージセンサ開発と商品化の事例(ケーススタディ)
 第3章 CCDの研究開発
  3.1 CCDに出会うまで
  3.2 なぜCCDの研究をはじめたか
  3.3 研究ターゲットの設定
  3.4 初期のCCD研究
  3.5 死の谷の始まり
  3.6 学会発表に対する考え方
  3.7 ソニーの半導体を生き返らせる
  3.8 CCD基本技術の開発
  3.9 CCD解散の危機
 第4章 カムコーダ,電子カメラ,HDカメラの商品化
  4.1 CCDイメージセンサ構造の戦い
  4.2 CCD実用化への技術開発
  4.3 航空用CCDカラーカメラ商品化とデジタルカラーカメラの開発
  4.4 CCDカメラ一体型8ミリビデオと,電子スチルカメラの開発
  4.5 CCD生産ラインの構築
  4.6 ロボティクスCCDカメラの商品化
  4.7 CCDカメラ一体型8ミリビデオの商品化
  4.8 プロ用CCDカラーカメラの商品化
  4.9 縦構造IT-CCDとカムコーダCCD-V90の商品化
  4.10 オンチップマイクロレンズとハンディカムの商品化
  4.11 HD用200万画素FIT-CCDカラーカメラの商品化
  4.12 LCDビューファインダの商品化
 第5章 CMOSセンサの勃興とデジタルカメラ,カメラケータイへの市場拡大
  5.1 HD-CCD以降の技術停滞
  5.2 カシオQV-10の衝撃(デジタルスチルカメラのビジネス立ち上げ)
  5.3 CMOSイメージセンサの勃興と技術革新
  5.4 シャープJ-SH04による携帯電話新時代
 第6章 知的財産権と特許裁判
  6.1 開発初期の知的財産権の戦い
  6.2 CCD特許訴訟
第3部 最先端のイメージセンサ
 第7章 イメージセンサの最先端技術
  7.1 画素微細化,多画素化技術
  7.2 高感度化技術
  7.3 広ダイナミックレンジ化技術
  7.4 高速化技術
 第8章 イメージセンサの多様化と拡大する応用システム
  8.1 動画ビデオカメラ対応イメージセンサ
  8.2 静止画デジタルカメラ用イメージセンサ
  8.3 カメラ付き携帯電話用イメージセンサ
  8.4 放送用,映画撮影用イメージセンサ
  8.5 医療用イメージセンサ
  8.6 自動車用イメージセンサ
  8.7 セキュリティ用イメージセンサ
  8.8 タブレット端末用イメージセンサ
 第9章 イメージセンサ技術の将来展望
  9.1 イメージセンサ有機
  9.2 アダプティブ光学系
  9.3 応用分野

 Appendix 画素配列に関する数学的取り扱い
 索引
 むすび
 謝辞

前書きなど

 本書はイメージセンサの専門家を育成するに止まらず,商品戦略や企業経営,社会情勢にも興味を持ち,企業内起業やベンチャービジネスにチャレンジできる人材にも役立つことを期待している。科学技術者は社会性を持ち,原子力安全委員会のような過ちを決して犯さないようにする必要がある。
 遅かれ早かれ誰かが考えつく特許など,世界最初の思いつきアイディアも大事であるが,Steve Jobsが生み出したiPhone/iPadや,Mark Zuckerbergが生み出したFacebookのように,独創的な商品やビジネスで成功し,世の中に貢献することが,技術者にとってははるかに大切である。
 イメージセンサ(撮像素子)技術の画期的な発展と,応用システム市場の拡大は人間社会に新しいビジョンをもたらし,大きな喜びと利便性を与えている。
 たとえば,民生用ハンディカム(動画),デジタルスチルカメラ(静止画),両者の複合品,カメラ付携帯電話,カメラ付タブレット端末など,各家庭,個人に普及したイメージセンサ応用商品は,子育て,入学式,運動会,結婚式,旅行,ペット,画像通信,ゲームなど,人生の楽しいイベントには欠かせない。
 また,胃ガン,結腸ガンの早期発見や,開腹しない腹腔鏡手術などに貢献する内視鏡は人々の生命を救っている。
 放送番組制作用,デジタルシネマ用ムービーカメラ,デジタル一眼静止画カメラなどは,高解像度(High Definition : HD)放送番組,ビデオ制作や美術工芸品のアーカイブス,学習ツールなどで,個人の生活に大きな楽しみと感動を与えている。
 赤外線暗視カメラ,テロ対策や防犯用のセキュリティカメラ,高度道路交通システム(ITS)と関連した車載カメラ,リモートセンシングのネットワークカメラなどは市民の生活を守る。
 リニアセンサを用いたイメージスキャナはドキュメントのソフトファイル化,電子書籍化,ファクシミリによる画像伝送などに活躍している。
 イメージセンサ技術はQRコード(2次元バーコード)によるURLネット検索,ナビゲータによるお店探索など,ポータルとして,ある意味,世の中の生活スタイルをも変えた。この技術は画像認証サービスとして,さらに広告,ロゴ撮影などによる関連サイトへの直接アクセスへと進化しようとしている。
 カメラの心臓部というより,人間の目玉に相当するイメージセンサの世界市場は拡大を続けている。その中でも,2009年実績でビデオカメラ市場は約1300万台,デジタルカメラ市場は約1億2000万台,携帯電話端末市場は11億3000万台となっている。

 本書では概略19世紀に始まるイメージセンシング技術から,1969年のベル電話研究所による電荷結合素子(Charge-Coupled Device : CCD)の発明,1985年のソニーCCDカムコーダ商品化,1990年のソニーHD-CCD,1995年のカシオによるCCDデジタルカメラの市場創造,Photobit社(元Aptina Imaging)などによるCMOSセンサの台頭,2000年のシャープによるCMOSセンサカメラ付き携帯電話,Apple(社)によるイメージセンサ付スマートフォン,タブレット端末ビジネスの成功など,縦糸として技術開発と市場の流れを追う。この技術動向は現在の多画素一眼カメラ用センサ技術,高感度,高速度センサ,3Dカメラなどを経て,さらに将来の技術展望につなげられる。
また,横糸として,個々の困難な局面を打破した技術的ブレークスルー,Management of Technology(MOT)に関連するケーススタディ,世の中を変えた経営判断やビジネス戦略に関わるエピソードを綴る。従来のケーススタディでは単純化され,経営者の成功物語だけにスポットライトがあたる場合が多い。しかし,実際には多くの技術者群の画期的な研究開発,実用化活躍,社会性が重大な成果を生んでいる。本書では感謝の気持ちを込めて,技術者群にも焦点をあてて,真実の姿を伝えたい。
 本書の基本的スタンスとして,いままで公にされた各種書物・映像の中に見られる多くの誤った事実関係を正し,抜けている重要事項を明記しておきたい。一般的に間違った記述の多い,他社技術内情の推論は行わない。
 イメージセンサは基本的にはMOS構造の一種であり,その半導体プロセスはMOSロジックやMOSメモリとの共通性が強い。本書ではイメージセンサ特有の受光部における,シリコン内部縦構造を形成するメガインプランテーション,オンチップ色フィルタ,オンチップマイクロレンズ,光学,精密部品として重要な組立工程,製造工場としての特殊な考え方などについて述べる。
 画素寸法はすでに1μm角(□,sq,平方などと表記される)以下の開発が進み,その中の受光開口寸法は可視光領域の波長と同等である。プロセス構造は幾何光学の領域に入り,波動光学シミュレータや,プロセスデバイスシミュレータ,画像シミュレータなどのソフトウェアなくして,ハードウェアプロセスは決められない。本書はプロセス技術者,設計技術者,システム技術者にとって共通プラットフォームとなるこれらシミュレーション技術の重要性についても記述する。
 また,企業にとって非常に大事な,特許についての考え方,各社出願競争や,巨額賠償を請求され,長期に渉る裁判闘争を要したCCD特許係争の事例についても報告する。しかし,商品の実用化には特許だけでなく,企業内に蓄積された大量のKnow-Howがより重要な役割を果たしていることを忘れてはならない。
 企業間の商品開発競争には,表に出てこないKnow-Howが決定的な差異となってくる。
 最後に,技術の現状動向から,将来予測までも記述に加えたい。
 なお,本書は筆者著「イメージセンサのすべて」(工業調査会)を基に,最新情報を加え,改訂したものである。
 2012年10月
 越智成之

上記内容は本書刊行時のものです。