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富之助とみよ 石井 浩(著) - 柏艪舎
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富之助とみよ (トミノスケトミヨ)

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発行:柏艪舎
発売:星雲社
四六判
重さ 290g
248ページ
並製
価格 1,500円+税
ISBN
978-4-434-31238-0   COPY
ISBN 13
9784434312380   COPY
ISBN 10h
4-434-31238-3   COPY
ISBN 10
4434312383   COPY
出版者記号
434   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年12月1日
書店発売日
登録日
2022年10月11日
最終更新日
2022年12月1日
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紹介

明治時代、日本のプロテスタントの黎明期に
伝道者として活動した元憲兵・三澤富之助、
米国人宣教師ピアソン夫妻、坂本直寛牧師とも交流が
深かった妻のみよ、そしてその子供たちの足跡を描く。

ブラジルに移住した祖父の人生をたどり、
自らのルーツを探る日系人牧師の心の軌跡

目次

目次
プロローグ
第一章 憲兵あがり
第二章 聖書夫人
第三章 讃美歌
エピローグ
あとがき
参考文献

前書きなど

あとがき

本書をお読み下さった方のなかには、参考文献にあたって三澤富之助と金子尚雄の交友に疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
『所感』は国会図書館のデジタルライブラリーで閲覧できます。「三沢富之助」で検索すると、『十年紀』の目次にある寄稿者名の三澤富之助に行きあたります。
ところが『所感』の本文には、名前は「三澤寅之助」と印字されているのです。どちらかが誤植でした。
しかも『宇都論文』も『八十年史』も『所感』の寄稿者を「三澤寅之助」としています。富之助とは別人の可能性が大きかったのです。『隨毫』所収の尚雄の書簡の宛名は「三澤兄」で、下の名前はわかりませんでした。
しかし調べてゆくと、明治三五年七月一五日付、上毛孤児院の院報『孤児之友』第四十二号の通信欄に、次の便りが掲載されていました。

謹啓優渥なる御恩寵の下に可憐児の為め御奮励御盡痒の段毎に感謝罷在候将に来らんとする
紀念祝会等の為め一層ご多忙の事と御察申上候小生等は只だ貴院の為め主の御恩寵の裕かに加らん事を祈るの外何をも為す能はざると遺憾に存居る処にて候就ては今微意を表する為め予て写し置たる家族の写真一葉を別紙の通り差上候間御祝の日に何なりとも御使用被成下候はば幸甚に存候尚当秋気に入りたる頃当地方に幻燈演芸会にても開く事を得ば幸なる事と今より其時を与へられん事を祈り居候希くは御令閨初め貴院御一同の上に御祝福の降り加らん事を祈る
                        福島県須賀川町
 六月十六日                        三澤富之助
 敬愛なる
   金子尚雄様
                       (漢字旧字は適宜新字に改め振り仮名略)

ゆくりなく届いた便りを見た尚雄が、『十年紀』への寄稿を富之助に依頼したものと思いました。
「三澤寅之助」なる人物が尚雄の友人や関係者にいないかどうか、上毛愛隣社に確認したのは言うまでもありません。同社からは尚雄の書簡や未公刊の文書などを調べて、該当者は見つからないとのお返事を頂きました。
『所感』には、明治二三年五月一八日に会ったのを最後に、自身は九州に赴き、尚雄は北海道に渡ったとの記述があります。熊本憲兵隊が創設されたのは同年の四月で、六月一日に事務を開始していますし、その後『追悼文』から、富之助は軍務の最後の三年を熊本で送ったことがわかりました。これで確信できました。
よって本書では文献上の表記にかかわらず、「富之助」で通したのです。
百年以上もじっと名前が訂正されるのを待っていたかのようで、小さな供養ができた気持ちでした。それが調査を続けてゆく心の糧になったのは不思議でした。
もちろんそうした自己暗示だけでなく、貴重な資料と調査のアドバイスを頂き、関係者へのご紹介にまでご配慮頂いた、たくさんの人々のおかげで本書は成り立っています。
暖かい励ましの言葉もありました。筆が進まなくなると、「人の脳には限りがあるのか、思い出せないことなど沢山あります。その記憶のかけらを集めて一つの本ができるなんてすばらしいことですね」というある方のメールの言葉をいつも思い出していました。
そんなお世話になった方々を以下に記して、深くお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

福浦利明さん・朝恵さんご夫妻、大内美恵子さん、三沢直己さん、三沢昌照さん、細谷啓介さん、庄司一幸さん、髙橋康彦さん、太田徹さん、仲野洋一さん、佐藤道信さん、楠瀬信子さん、松橋智恵子さん、阿久津俊子さん、斎藤省三さん、吉田邦子さん・伊藤悟さんはじめNPO法人ピアソン会の皆さん、北原俊之さん、上田ルイスさん・タニさんご夫妻、東北学院史資料センターの皆さん、青山学院資料センターの皆さん、明治学院歴史資料館の皆さん、東京・福島・山形・宮城・北海道のプロテスタント教会の皆さん。
                                     (順不同)

北海道からこれを世に送りたいという思いがありました。ささやかな作品に素晴らしいかたちを与えて下さった柏艪舎の皆さん、なかでも編集部の青山万里子さんに心から感謝いたします。


令和四年一〇月八日       著者



(追記)
なお三沢姓の表記は、明治時代に成人した人物については旧字を用いました。「みよ」の表記は『手紙』の自署に倣ってひらがなで統一。ただしいずれも、他の引用文献中に現れる場合はこの限りではありません。

著者プロフィール

石井 浩  (イシイ ヒロシ)  (

1964(昭和39)年神奈川県生まれ。
大学卒業後、外資系企業に勤務し、契約・調査(オンブズマン)業務に従事。
2007~2014年、歌人集団「かばんの会」に所属。

上記内容は本書刊行時のものです。