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石川啄木のふれんど小奴と紡ぐ人物列伝
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2022年5月30日
- 登録日
- 2022年3月10日
- 最終更新日
- 2022年10月4日
書評掲載情報
2022-09-13 | 十勝毎日新聞 |
2022-08-21 | 北海道新聞 |
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紹介
1942年北海道旭川市生まれ。帯広営林局、林野庁、北海道営林局などに勤務の後、林野庁監査官、会計検査院(農林水産省畜産局の検査担当)を経て公務員卒業。現在、帯広市にて、創造心理&安全心理研究所を創設、所長。著書に、「心理的安全学のすすめ―『無意識』を意識する安全管理―」(日本林業調査会:1996)、「樹木気功法入門―樹には心とが感情がある―」(日本林業調査会:2014)、「中川王国終焉への途―中川一郎・昭一・郁子~その深層心理学的考察」(創造心理&安全心理研究所:2021)、「川柳エッセ―石川啄木と芸者「小奴」76―潜在意識が一度に76も私に詠ませた―」(創造心理&安全心理研究所:2021)などがある。
目次
・第一話 石川啄木のふれんど・芸者「小奴」
・第二話 啄木の短歌・大量生産現象は何故起きたのか
・第二章 重慶を感じる
・第三話 私は啄木に旅行記「雪中行」の続きを書かされた
・第四話 小奴と下帯広警察署大津分署襲撃事件
・第五話 蘭学医&陸別開拓の祖・関寛斎とピストル
・第六話 啄木の小説「青地君」の深層心理
・第七話 小奴と作曲家・伊福部昭との幻の養子縁組
・あとがき
前書きなど
あとがき
私は、平成十五年春に、公務員生活(林野庁と会計検査院)を卒業して東京から北海道帯広市に帰って来た。そこから、啄木と、そのふれんど・芸者「小奴」の研究がはじまった。私の専門は、公務員の頃は林野庁の技官、森林技術者であった。会計検査院(農林水産省畜産局担当)への出向もあったが、多くは森林とつき合う仕事であった。森林とのつき合い方は単なる仕事としてではなく、「樹には心と感情がある」と感じてやってきた。私は平成二十六年に、『樹木気功法入門―樹には心と感情がある―』(佐藤文彦著・日本林業調査会)という単行本を出版している。
樹木といえば、啄木の「一握の砂」に載っている次の歌がある。
大木の幹に耳あて
小半日
堅き皮をばむしりてありき
私は、森林セラピスト(森林健康指導士)の一期生(平成二十一年合格)。試験科目は、「森林医学系」「森林科学系」「森林薬学・アロマセラピー」「健康・心理学系」「安全・救急手当」の五科目で、学科試験と実技試験があった。春、冬の間眠りについていた樹々は目を覚まし生理的な活動をはじめる。その時期、シラカバの幹に医療用の聴診器を当てると、ゴォーという音が聞こえる。これは、根から水を吸い上げる音だ。啄木は、樹種は違うかもしれないが、その樹が水を吸い上げる音を聞いていたに違いない。
公務員時代、名古屋に転勤になった時から、仕事とは別に土曜・日曜を活用した講座でライフワークとして、フロイトやユングで知られる深層心理学を学び、研鑽・研究していた。こちらの方は、その成果として、『心理的安全学のすすめ―無意識を意識する安全管理―』(佐藤文彦著・日本林業調査会)を出版している。公務員を卒業して帯広に帰って来てからは、帯広林業会館の一室を借りて、創造心理&安全心理研究所の看板をかかげ、深層心理学をベースとした創造心理学、安全心理学、カウンセリング心理学を研究してきた。
だから、啄木や小奴の研究も、文学的なサイドではなく、深層心理学的な見方から入っていった。そのうちに、小奴を中心とするようになっていった。そこには啄木だけでなく、蘭学医で陸別の開拓の祖・関寛斎や、映画音楽「ゴジラ」を作曲した作曲家・伊福部昭などが引き寄せられてきた。研究を続けていると、フィクション、ノンフィクションを問わず、小奴を中心とした人間の紡ぎがどんどん広がって行く。そこには、磁石型シンクロニシティを感じる。それだけではない。私と小奴の間にも研究を通してシンクロニシティ現象が起きている。姿は見えないが、私の近くでシンクロニシティの提唱者ユングが微笑んでいるような気がしてならない。
小奴や啄木の研究は、最初は深層心理学の目線で入っていった。だが、今では、歴史的というか、郷土史的というか、こちらの方の色彩が強くなっているような気がする。結果として、融合的な形になってきている。
小奴の人生には謎の部分が多い。ブラックボックス的部分が多いということである。小奴の人生ジクソーパズルには、所々に穴が空いている。本書では、フィクションとノンフィクションとの二つの側面から、その穴を埋めることに努めてきた。だが、実態は埋め尽くしてはいない。今後、さらに研究を進め、さらに穴を埋めることに力を注いでいきたい。その中では、強力な武器となるユング型タイムマシンの操縦方法の完成にも力を注ぎたいとも考えている。ただこちらの方は、相当に手強い。世界でもはじめての試みでもあり、試行錯誤の繰り返しである。
深層心理学者ユングが提唱したシンクロニシティとは、「意味のある偶然の一致」のことである。シンクロニシティは、潜在意識からの願望実現のメッセージでもある。身の回りに起こるシンクロニシティに気づき、これを解読し、活用すると、人生の中での成功や、危険から身を守る安全など願望の実現に活用することができる。本書の中では、シンクロニシティという言葉がたくさん出てくる。そこでは、シンクロニシティに気づくことにとどまっていることが多い。つまり、多くは偶然の意味にまで言及していない。だが、シンクロニシティの活用には、先ずはその出現に気づくことが大切である。気づかなければ活用できない。
これからは、シンクロニシティに気づくだけでなく、「意味ある偶然の一致」の「意味」の解析・究明、その活用にも気を入れたいと思っている。
二〇二二年一月十一日
佐藤文彦
追記
本書の原稿を書きはじめたのは平成二十九年一月。完成して出版したのは令和四年五月のこと。実は、原稿を書きはじめた時は意識していなかったが、令和四年四月十三日は石川啄木の没後百十年なのだ。その年に申し合わせたように本書を出版した。この偶然は何なのか。まさしくシンクロニシティだ。その意味は何か。今、その不思議さに浸っている。
上記内容は本書刊行時のものです。