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夜明けの海鳴り 合田 一道 - 柏艪舎
.

夜明けの海鳴り 北の幕末維新

発行:柏艪舎
発売:星雲社
四六判
272ページ
並製
定価 1,600円+税
ISBN
978-4-434-24173-4
Cコード
C0095
一般 単行本 日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月
2018/2
書店発売日
登録日
2018年1月12日
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書評掲載情報

2018-02-22 朝日新聞    朝刊  北海道版
評者: 山内浩司

紹介

150年前、明治へと時が移ろうとしていた激動の時代。幕末の志士たちは様々な想いを胸に、北を目指した。新しい大地に夢を託し、命をかけた男たちがいた。
今日の北海道の礎を築いた男たちの奮闘を、当時の古文書や貴重な資料を基に描いた22の物語。

目次

夜明けの海鳴り~北の幕末維新

蝦夷地に着目した龍馬 5
黒龍丸に浪人を乗せ出帆 6/北添佶磨の松浦武四郎宛て便り 7/長崎に出て海援隊を結成 8/「新国を開くは積年の思ひ」 9/「大極丸のヘチャモクレ」11/坂本一族、北海道へ 13


小樽内騒動がもたらしたもの 15
政権交替とニシン不漁のなかで 16/博徒と流れ者が計画 18/漁民に裏切られた博徒ら 20/博徒の四人は斬首、さらし首 22


政治に翻弄された松前藩 25
幕府の命で新城を築城 26/蝦夷地、幕府の直轄地に 28/崇広、幕府海陸軍総奉行に 30/松前藩のクーデター 32/

戦火燃ゆ、箱館戦争勃発 37
最初から蝦夷地を狙う 38/雪の海上に艦隊の影 40/嘆願書、攻撃で吹っ飛ぶ 41/福山城下、戦火にまみれる
43/開陽、江差沖で座礁、沈没 44/「自刃」とされた松前藩主の死 46

蝦夷島臨時政権の樹立と崩壊 49
デ・ファクトウの政権 50/政権の枠組みと性格 52/フランス軍人が相次ぎ参加 56/臨時政権、応戦体制へ 58/資金に苦しむ臨時政権 59

宮古湾、箱館港、二つの海戦 61
甲鉄を奪え宮古湾の海戦 62/回天だけで攻撃 63/甲賀、顔面撃たれ戦死 65/箱館海戦、艦を浮き砲台に 66/蟠龍の砲弾に、陽春撃沈 68/

土方歳三と中島三郎助父子の戦死 71
土方歳三、五〇人を率いて出陣 72/腹部を射抜かれ落馬、死ぬ 73/諸説がある歳三の死 75/関門で指揮中、狙撃された? 77/中島三郎助父子の覚悟 78/函館に中島町の名を残す 81

北海道の誕生と本府建設 85
松浦武四郎が「北海道」と命名 86/島義勇が石狩本府の建設へ 89/二つの札幌、札幌本府と札幌村 91/資金使い過ぎて免職に 93/佐賀の乱に巻き込まれる 95/桜並木に籠もる心情 96

北に走った新選組の残党たち(上) 99
捕虜になった新選組の隊士 100/見廻組の犯行を今井が供述 102/相馬、横倉は「存ぜず」と供述 104/開拓使にいた暗殺者たち 105/近藤の正体を見破った加納 107/加納、阿部ら開拓使の役人に 109

北に走った新選組の残党たち(下) 111
阿部、リンゴ園を経営 112/三井丑之助と足立民治 113/前野五郎、ススキノ遊廓を経営 116/岡本の千島義会に共鳴、樺太へ 118/永倉新八、杉村家の婿養子へ 119/小樽新聞に「新撰組永倉新八」を連載 121

ガルトネル事件の顛末 125
プロシア人の兄弟 126/九九年間の措借結ぶ 128/箱館戦争の置き土産 131


仙台藩亘理領、岩出山領の移住 135
“朝敵”と蔑まされ北海道へ 136/蝦夷ケ千島の雪のあけぼの 137/領主の義母、保子も同行 139/岩出山領、二転三転の末に 142/村の憲法「邑則」を作る 144/吾妻、屯田兵を一喝 146

仙台藩士の移住と咸臨丸の最期 149
仙台藩片倉家の北海道移住 150/第三陣移住から開拓使貫属に 151/咸臨丸、木古内の更木岬で難破 153/対立する両家老 155/作られた暴風雨による遭難 157/札幌の白石と手稲 159

開拓使の誕生と黒田清隆の登場 163
樺太開拓使の次官からトップに 164/榎本武揚放免、開拓使へ 165/榎本とケプロンが対立 168/幌内炭鉱を「上等ノ石炭」と見抜く 170/空知川に石炭山発見 172/樺太問題の解決に乗り出す 174

北辺の農民一揆、檜山騒動 177
ニシン税の引き揚げが発端 178/漁民らが福山出張所などを襲撃 180/黒田が「いっさいの責任を持つ」182


ドイツ代弁領事の暗殺 185
皇国を汚す外国人を殺す 186/「夢のお告げ」と狂信者装い 188/裁判、審理進まず 190/断罪で落着 192

樺太・千島交換条約と樺太アイヌ民族 195
日露の紛争問題を交渉 196/日露境界線の確定で激論 197/決断迫られる樺太アイヌ民族 200/宗谷から強制的に対雁へ 202/松本十郎が憤然、辞職 204

北海道に屯田兵が誕生 207
徴兵制度が引き金に 208/永山らが屯田兵設置を建言 209/黒田の上申書が通る 211/琴似に初の屯田兵移住 213/厳しい訓練と開墾 215/西南戦争で屯田兵出陣 216/三七兵村に七〇〇〇戸余建設 217

サッポロビールの誕生 221
決定引っ繰り返し札幌に 222/中川清兵衛と二人三脚で 223/麦とホップでビイルに 225/栓はずれ、船内泡だらけ 226/村橋、開拓使に辞表 228/村橋の葬儀に元同僚ら出席 230

開拓使官有物払い下げ事件 233
「明治十四年の政変」の陰で 234/三八万円で開拓使官有物を払い下げ 236/天皇、行幸帰京して取り消し 238/初の総選挙と初の国会 241

岩村通俊と上川開拓 243
岩村判官の「御用火事」 244/高畑が上川探検 246/北海道への夢を抱き続ける 248/初代北海道庁長官に 249/上川道路の建設に着手 251/北京の構想、頓挫 253

自由民権運動の光と陰 255
未開の大地に集治監 256/自由民権運動の騒乱 257/牢獄の自由民権思想犯たち 259/加波山事件の原利八の死 260/逃げきった死刑囚、井上伝蔵 263

あとがきにかえて 266

参考文献 269
取材協力者 271

前書きなど

はじめに

黒船の来航により開国へ舵を切った幕末の日本。異人斬りが横行する中で、北辺の蝦夷地もまた激しく揺れ動いていた。海鳴りのように響く近代日本の夜明けを、北の視点から照射したい。
                                著者

あとがきにかえて

拙著は、海と船の雑誌「LAMER(ラメール)」(日本海事広報協会出版)に平成二四年(二〇一二)三月から二年間にわたり連載した「夜明けの海鳴り~北の幕末維新事件帖」をもとに、新たに七編を追加してまとめたものです。読んでおわかりの通り、一話完結の形態をとっています。
明治維新により、蝦夷地が北海道と名を改めて、今年で一五〇年になりますが、国内を大きく揺るがしたこの時代を、北の視点から見たらどうなるか、という目的で書いたものです。
北の幕末維新は、函館・松前を舞台に始まったといってもいいでしょう。政権交替に伴い雄藩の態度に不満を抱く旧幕府脱走軍が蝦夷地へ侵攻し、箱館・五稜郭を奪い、福山城(松前)を落とします。翌年、新政府追討軍が進撃し、各地で戦闘を展開し、旧幕府軍は降伏します。戊辰戦争は会津の戦いで終わり、とする日本人が多いのですが、実は蝦夷地を舞台にしたこの箱館戦争こそ、わが国のその後の政治を決定づけたといえるのです。
それは箱館戦争が終焉した三日後の上局会議に出された三つの勅問、一、皇道の興隆、二、知藩事新置、三、蝦夷地の開拓に表れています。翌日の下局会議でさらに絞り込み、皇道の興隆と蝦夷地の開拓の二件が勅問され、これが明治新政府の重要な方針となっていくのです。
蝦夷地はもともと日本国には所属しない、かといって他の国でもない、いわば宙ぶらりんな存在でした。ですから幕府は松前藩の所領なのに、寛政一一年(一七九九)と幕末期の安政二年(一八五五)の二度にわたって領地を幕府に上知させています。
ロシアの南下政策がより激しくなり、北辺の危機が叫ばれるなか、明治新政府は王政復古の名のもとに明治二年(一八六九)、古代の律令制を用い、「五畿七道」に含まれていなかった蝦夷地をこの枠内に入れて、新たな国家体制を作り上げたのです。
このあたりは拙著の八五頁の「北海道の誕生と本府建設」で触れましたが、それだけに開港場となった函館や松前、江差は別として、突然、「日本国北海道」にされたその他の地に住む人々や、全道各地に住むアイヌの人々は、想像を絶する政治的変革を迫られたのです。
ですから北海道が誕生するということは、日本国内が徳川幕府の政治から天皇の政治に変わることより、もっと凄まじい変化だったと思えてならないのです。
蝦夷地を日本国とした新政府は、防備体制を固めるため、開拓使を設けて精力的に開拓を進めていきます。それに便乗する形になったのが敗北士族の藩ごと移住です。さらに貧しい住民を集団入植させたり、屯田兵村を建設して開拓を進めていきます。蝦夷地-北海道が存在しなかったら、明治維新の負の部分を掬い上げることもできず、到着点もなかったろう、と筆者は思っています。そんな最中に「開拓使官有物払い下げ事件」をはじめとする多くの政治的な事件が起こるのです。
北海道は各地からやってきた「内地人」により開拓され、いまは素晴らしい大地になりました。両親が北海道生まれの「北海道人」が誕生して、その二代、三代、いや四、五代を数える家庭も出てきました。一時は「県民のるつぼ」といわれた北海道ですが、その多様性から出る「北海道人」ならではの発想こそもっと大事にしたい、そんなことをしきりに考えています。

                                  合田一道
    

著者プロフィール

合田 一道  (ゴウダ イチドウ

一九三四年(昭和九年)、北海道空知郡上砂川町生まれ。北海道新聞社に入社し、事件を担当。在職中からノンフィクション作品を発表。退職後は札幌大学講師など。主な作品は『日本史の現場検証』(扶桑社)、『松浦武四郎 北の大地に立つ』(北海道出版企画センター)、『北の墓 歴史と人物を訪ねて』(柏艪舎)など。札幌市在住。

上記内容は本書刊行時のものです。