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変えよう! 日本の学校 ピーター・ハウレット - 柏艪舎
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変えよう! 日本の学校 カナダ人英語教師が提唱する“エンパワーメント”(活力を与える)教育

発行:柏艪舎
発売:星雲社
四六判
176ページ
並製
定価 1,400円+税
ISBN
978-4-434-23553-5
Cコード
C0095
一般 単行本 日本文学、評論、随筆、その他

出版社在庫情報
在庫あり
初版年月
2017年8月
書店発売日
登録日
2017年7月31日
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紹介

こんなに明るく、フランクで、フェアで痛快な教育論があったろうか?いや、これは単なる英語教育論ではない。教育論にとどまらない、現代日本論であり胸のすくような文明批評―これこそ、教育者として、子どもの親としてそして社会の現状を憂える一市民としてぼくが待ち焦がれていたものだ。 辻信一(文化人類学者)
自分の頭で考え、自分の力で行動する人間を育てる“エンパワーメント”教育を、日本を愛し憂えるカナダ人教師が提唱!

目次

目次

まえがき

1章 著者の軌跡
  ・両親が歩んだ道
  ・幼少期・青年期
  ・これまでに携わってきた主な社会活動と政治運動

2章 なぜ、日本の英語教育は変わらなければならないのか
  ・日本式英語教育の弊害
  ・諸悪の根源は受験英語
  ・教科書中心の授業はナンセンス
  ・英語「を」学ぶな、英語「で」学べ
  ・リスニングとスピーキングの重要性
  ・外国語習得に関する研究が教育の現場に生かされていない
  ・英検について

3章 日本の教育界はどう変わるべきか
  ・中・高等教育でもっと積極的に情操教育を行うべき
  ・大規模クラスを廃止し、教育にかける予算を増やす
  ・「銀行型教育」を廃止せよ
  ・生徒の個性を尊重する―教育先進国フィンランドに学ぶ
  ・少年よ、「好奇心」を抱け
  ・テスト・メンタリティを廃止せよ―日本はもっと在学中の
   成績を評価すべき
  ・生徒に政治的関心を持たせる
  ・自然と触れ合う教育を

4章 私が実践してきた教育活動
  ・多読学習
  ・社会問題教育
  ・先住民文化に関わる教育
  ・平和教育

5章 エンパワーメント(活力を与える)教育のススメ
  ・パウロ・フレイレの主張
  ・エンパワーメント教育とは何か
  ・クリティカル・シンキングを生徒に身に付けさせるには
  ・生徒と教師は対等であるべき
  ・エンパワーメント教育の実践例

6章 対談 阿木幸男 × ピーター・ハウレット
  ・塾の仕組みについて
  ・模試について
  ・「怒り」が欠如した日本人
  ・非暴力トレーニングの実践例
  ・教育の2020年問題について

文部科学省への公開質問状

あとがき

前書きなど

まえがき

2016年4月某日、札幌の出版社柏艪舎の代表取締役である山本光伸さんが、私に会うために、札幌からわざわざ函館までおいでになった。
山本さんは、70歳を過ぎているとはとても思えぬほどに若々しくパワフルな方だ。しゃんと伸びた背筋と、豊かな教養を感じさせる紳士的な物腰がとても印象的で、空高くそびえる白樺の木を連想させるような、清々しくも威厳に満ちた雰囲気をたたえている。
私たちは待ち合わせたレストランの席に着くと早速名刺を交換し、簡単な挨拶を済ませた。すると突然、それまで静謐さをたたえていた山本さんの瞳が鋭く光り、青々とした情熱の炎に包まれた。それから彼はやにわに前のめりになって、私の顔を真っ直ぐに見つめながらこうおっしゃった。
「ハウレットさん、日本語に青色吐息という表現があるのをご存知ですか?」
私は首をかしげた。
「青色吐息というのは、ため息が出るほどに窮地に陥っていたり、心身ともに疲れ果てていたりする様を表した言葉なんです。日本の教育の現状は、今まさに青色吐息の状態にあるんですよ。そこでハウレットさんに、日本の英語教育や教育界全般の問題点を指摘する本を書いていただきたいのですが、いかがでしょうか?」
日本の教育は青色吐息。確かにその通りかもしれない。今年、2017年3月に定年退職するまで、私は函館ラ・サール中学校・高校で英語の専任教師として働いていた。これまで30年以上もの間、日本の中学校、高校、大学に加えて、英会話学校や社会人向けの英語教室など、多種多様な教育の現場に携わってきた。日本の教育システムの良い面も悪い面もある程度は見てきたつもりだが、特に最近は生徒たちの活気の衰えを肌で感じていて、深刻な危機感を覚えているところだった。
「学者でも研究家でもない、一介の教師に過ぎない私に本が一冊書けるのだろうか?」
多少の不安はあったが、自らの経験を生かして日本の教育界や日本社会全体の活性化に少しでも貢献できるのならば、これほど意義のあることはないと考え、私は依頼を引き受けることにした。
山本さんはこれまで200点以上に及ぶ海外の文学作品を日本語に訳してきた名うての文芸翻訳家で、現在は先述の出版社を経営しながら、〈インターカレッジ札幌〉というプロの文芸翻訳家を養成する学校も運営されている。その山本さんが、「どういうわけか、良い大学を出た高学歴者や、英検やTOEFL高得点者ほど、翻訳家として使いものになる人間がほとんどいないんですよ」とおっしゃっていたのは、とても興味深かった。
世界最大級の私立教育機関〈エデュケーション・ファースト〉の日本法人〈エデュケーション・ファースト・ジャパン株式会社〉が、世界各地の英語学習者(成人限定)91万人分のデータをもとに作成した国別英語能力指数レポート〈EF EPI 2015〉を見てみると、日本の順位は70カ国中30位に留まっている。過去5年間の〈EF EPI〉の結果と比較してみても順位はほぼ横ばいで、日本人の英語力が大きく伸び悩んでいることが分かる。ベトナムやインドネシアなど、〈EF EPI 2011〉で日本よりも遙か下位にランクインしていた発展途上国が、近年の世界情勢の変化や経済発展の追い風を受けて、ここ数年で急速に順位を上げてきている事実も無視できない。
さらに、2005年から2012年まで行われたTOEFL国別平均点調査の結果を見てみると、日本はずっと韓国や中国など近隣のアジア諸国に大幅に遅れを取っていて、経済制裁で海外諸国との接触さえままならぬ北朝鮮よりも下位にランクインし続けている。
これは、山本さんのおっしゃる通り、テストの結果ばかりを重視する旧来の日本式英語教育では、英文の読み書きのみならず、会話力も備え、国際社会で十分通用するだけの英語力を身に付けた人間がなかなか育たないことを示しているのではないだろうか。
そこで、本書では主に、私のこれまでの体験談を交えながら、日本の英語教育と教育界全般に見受けられる問題点を、外国人教師であり、社会運動家でもある私なりの視点から検証してみたいと思う。
また、20世紀を代表するブラジル人の教育家パウロ・フレイレが提唱した思想をもとに、本書の副題にもあるエンパワーメント教育とは何なのかを説明していきたい。
日本の教育界はどう変わっていくべきなのか。日本の教育界が変われば、社会全体にどのような変化が生じるのか。国と国との境目が限りなく曖昧になっていくことが予想される21世紀において、日本人は何を捨て、何を獲得すべきなのか、読者諸氏も一緒に考えてみてほしい。
この本が日本の教育界を「empower」(活力を与える)するカンフル剤となり、矛盾だらけの今の日本社会において、世間体やプライドをかなぐり捨てて、「王様は裸だ!」と勇気を持って声を張り上げることのできる人間をひとりでも多く増やすきっかけになれば、著者として望外の喜びである。

著者プロフィール

ピーター・ハウレット  (ピーター・ハウレット

1955年北海道札幌市生まれ。名寄小学校に5年生まで通学。カナダのグエルフ大学で農業を専攻し、卒業後ブルーベリー生産農家を目指して函館に定住。2017年春、函館ラ・サール中学・高校を定年退職し、現在は青丘学院つくば中学・高校で教鞭を執っている。『ぐりとぐら』シリーズ(タトル出版)、『注文の多い料理店』、『スーホの白い馬』、『からすのパンやさん』(以上アールアイシー出版)など日本の絵本多数を英訳。

上記内容は本書刊行時のものです。