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文とおじいちゃんの歴史の旅
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2015年7月
- 書店発売日
- 2015年7月24日
- 登録日
- 2015年6月26日
- 最終更新日
- 2015年7月17日
紹介
ノンフィクション作家合田一道が5歳の孫と歴史上の人物ゆかりの地を旅した8年間の記録。
義経、赤穂浪士、坂本龍馬、野口英世、空海、一休さん、関ヶ原の合戦、新選組、西南戦争など、日本各地をめぐり、果ては咸臨丸の足跡を辿ってアメリカに渡る。
目次
文とおじいちゃんの歴史の旅―もくじ
はじめに 4
第一章 初めての旅―義経の子ども時代を歩く 9
第二章 川中島と赤穂浪士の旅 19
第三章 坂本龍馬の故郷・高知へ 31
第四章 野口英世の故郷を行く 41
第五章 空海が生まれた町と玉川上水 53
第六章 一休さんの故郷を訪ねて 69
第七章 関ヶ原の合戦の旅 87
第八章 新選組、土方歳三を追って 97
第九章 咸臨丸の旅でアメリカへ 133
第十章 姉妹で「西南戦争の舞台」をめぐる 143
旅のあとがき 153
「つぶやき」のあとがき 156
文とおじいちゃんの歴史の旅MAP 158
前書きなど
はじめに
「おじじどの」こと合田一道は、私にとって祖父であり、それ以上に先生だ。
歴史のことで質問をして、返答がなかったことのないこの人は、私が知っている中でも有数の歴史オタクなのだ。もちろん、尊敬の意味を込めて。遡ること十六年、「文とおじいちゃんの歴史の旅」を始めたのは五歳七カ月のころであった。両親に見送られ、祖父とたった二人きりで知らない土地を旅するというのは、幼い自分にとっては何だかとっても特別なことのように思えて、初孫の特権という気さえして、妹や従兄弟に鼻を膨らませて自慢したのを覚えている。(そのころ妹たちはほんの二、三歳だったから、たいして羨ましがられもせず、価値のわからないお子様ばかりだと思ったものだった)
最初は単に、ただ大好きなおじいちゃんとの旅行にワクワクしていた。全国各地色々なところへ飛び、全く見ず知らずのところに連れていかれては、「ここは歴史的に名高い」なんて聞かされて、最初は何のことやらわからなかったけれど、幼いなりの解釈を加えて文章におこすことにした。
それを小学校の夏休み自由研究として提出してみたところ、「よくできている。おもしろいですね」というコメントが大きな花丸と一緒に返ってきた。それですっかり気をよくしてしまった私は、祖父との歴史の旅をいつしか毎年のお決まりにするようになっていた。
そして七歳、八歳と年を重ね、旅を重ねるうちに、歴史のおもしろさにどっぷりハマっていったのである。暗殺、幕府、遊廓……小さいうちから難しい言葉をたくさん知った。歴史上の人物たちの行動に人間臭さを感じ、ものごとの善悪や道徳を学んだ。いつの時代にも身分差別や女性差別があり、何かにつけて弱い立場の人がひどい目にあってきたことにも気がついた。平和とは何か、本気で考えるようになった。「私なりの意見」なんていうのも、いつしか芽生えていた。
中学二年まで続いたこの「文とおじいちゃんの歴史の旅」は、私自身の成長記録にほかならない。皆様にお見せするのはいささか照れ臭い気もするけれど、一緒に旅をするつもりで読んで頂けたらと思う。
文章の拙さについては、片目をつぶって頂けると有り難い。
合田 文
旅のあとがき
今、出来上がった原稿のゲラ(試し刷り)を全て読み終えた。〝お爺のつぶやき〟を見てみると、本当に祖父が私をよく見ていてくれたことに生まれて初めて気がつく。
それと同時に、沢山の思い出が蘇ってきた。義経の育った鞍馬山にのぼるロープウェイではしゃいだこと、龍馬が歩いた桂浜をふんぞり返って歩いてみたこと、一休和尚のとんちで有名な橋を見たこと、空海の生まれた町に立ったときのこと、野口英世へふるさとから送られてきた母の手紙がとても感動的だったこと。
それから祖父と食べる全国各地の名産品が楽しみのひとつだったこと。そして夜は必ず祖父が、私が飽きるまでトランプで遊んでくれたこと。取材だけじゃなく、そういうことも旅行の醍醐味だったのだ。
いちばん壮大だった六年生の時の「新選組」の取材では、東京都内のゆかりの地をめぐってから京都を訪ね、そこから土方歳三を追って函館へ向かった。函館で取材した翌日、札幌へ帰る祖父と別れて一人で羽田へ飛んだあの時は、達成感でいっぱいだったのを覚えている。
その翌年、とうとう旅の行く先は世界へと拡大した。咸臨丸子孫の会の方々とともに「咸臨丸航海の旅」で渡米することになる。咸臨丸が太平洋を航海した時、同船に乗り込み帰国したアリメカ軍人ブルック大尉の孫という方を、アメリカのバージニア州に訪ねて、彼と握手を交わしたとき、現代に受け継がれる歴史の血潮を感じた気がした。西海岸のサンフランシスコで日本人墓地を訪ねたときは、未知の世界に羽ばたいていった彼らに敬服の念を覚えたことも忘れられない。
こうして考えるとひとつひとつの旅は、断片的ではあるようで、実はひとつなぎの歴史の足あとを辿っていたことに気がつく。先人が歩んできた道、歴史とはそういうものなのだ。
幼いうちから折に触れて歴史に関わりを持ってきたことは、私にとっての大きな財産である。こうした体験を授けてくれた祖父に、今改めて感謝したいと思う。おじじどの、どうもありがとう。
私はあの、五歳七カ月の、はじめての旅の好奇心を決して忘れないだろう。まだまだ知らないことがたくさんある世界に飛び出していこうとしている今、私の中に眠るあの日の幼い冒険心は、己の行動力と智への欲望をどこまでもくすぐるのだから。
合田 文
「つぶやき」のあとがき
一昨年夏、柏艪舎主催の「文化講演会」があり、終了後の会食の席でほろ酔い機嫌でふと漏らした「孫娘との旅」の話が、こんな書物を作るきっかけになった。
もともと家族内の話であり、他人様にお見せするようなものではない。でも「面白いですね。本にしてはいかがですか」と山本光伸代表におだてられ、そうかな、と思いつつ、東京の孫娘に電話をしたところ、「やろうよ、作文はみんな保存してあるから」と弾んだ声が返ってきた。
出版計画が進められ、ドギマギしながら古い日記をめくったり、アルバムを引っ繰り返したりしているうちに、孫娘から大きな箱が届いた。夏休みや冬休みのたびに学校に提出した文章や写真が、中にどっさり入っていて、よくも取ってあったなぁ、と感心させられた。
本書は、孫娘の文章はもとより、私の「つぶやき」など、その時に書いたものをそのまま用いた。思い違いや明らかな間違いもあるが、あえてそのままにした。ひとりの幼な子が成長していく過程を、文面から感じとっていただけたら、望外な幸せと思っている。
最後になったが、面倒な編集作業を担当してくださった可知佳恵さんら編集スタッフに心から感謝申し上げたい。
お爺 合田一道
上記内容は本書刊行時のものです。