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出版者情報
渦運動の数理的諸相
- 書店発売日
- 2013年3月26日
- 登録日
- 2015年8月13日
- 最終更新日
- 2015年8月13日
紹介
本書は流体運動,特に「渦」と呼ばれる構造に注目して,その運動の解析に必要な数学的基礎を基本的なところから解説すると同時に,著者がこれまで行ってきた渦運動に関連するさまざまな研究結果の紹介を通じて,流体運動の背後に潜む数学的問題の面白さを伝えるためにかかれたものである。
数学を専門としない理系の研究者には,流体運動の数学解析・数値解析によって明らかにされる渦運動の数学的側面の深さと広さを伝えることに努めた。またこれから数理流体力学を学ぼうとする理工系の学部生・大学院生に対してはセミナーや自学自習にも十分用いられるよう,いくつかの章はかなり基本的なことから丁寧に記述しており,数理流体力学の入門書としても利用できる。
また,生命流体現象や環境流体現象にも適用が可能な多重連結領域の渦力学に関する記述は,日本語でかかれた最初のものであり,数理流体の専門家にとっても参考書として利用できるようになっている。
目次
第1章 二次元非粘性・非圧縮流体運動~渦力学の基礎
1.1 はじめに
1.2 二次元非粘性・非圧縮流体の運動方程式
1.3 渦度と循環
1.4 非粘性ポテンシャル流
1.5 オイラー方程式の解の存在と一意性について
1.6 渦力学
1.7 球面上の渦力学
第2章 球面点渦運動の基礎解析~可積分性と衝突解
2.1 球面点渦系のハミルトン定式化
2.2 三点渦問題
2.3 可積分四点渦問題
2.4 まとめ
第3章 球面上の定常渦構造~点渦の定常配置
3.1 球面点渦の定常配置
3.2 ブラウニアン ラチェット法による定常解探索
3.3 非対称な定常配置のギャラリー
3.4 球面最適被覆問題と点渦定常配置
3.5 特徴的な構造をもつ定常点渦配置
3.6 まとめ
第4章 特異点と渦構造の生成~球面渦層の運動
4.1 せん断流の渦層モデル
4.2 線形安定性解析
4.3 特異点の形成
4.4 渦層の長時間発展
4.5 まとめ
第5章 予測できない流れ~球面点渦運動のカオス
5.1 極渦をもつ球面上N 点渦環の運動
5.2 線形安定性解析からの準備
5.3 不変縮約系ハミルトン系の構成
5.4 シンプレクティック定式化
5.5 解析手法と数値計算法
5.6 カオス軌道の存在の検証
5.7 まとめ
第6章 回転する球面上の渦運動~点渦と回転渦の相互作用
6.1 回転球面上の渦運動について
6.2 一方向剛体回転モデル
6.3 双方向モデル
6.4 まとめ
第7章 渦運動と高速数値計算~高速tree-codeアルゴリズム
7.1 渦法と多体問題の計算量
7.2 球面版高速tree-codeアルゴリズム
7.3 アルゴリズムのテスト結果
7.4 まとめ
第8章 渦運動で混ぜる~組みひもと位相カオス
8.1 粒子の攪拌・混合
8.2 二次元流体中のカオス的混合について
8.3 Blinking vortexによる粒子混合モデル
8.4 組みひもとその分類
8.5 Thurston-Nielsen理論
8.6 位相カオスによる効率的混合
8.7 まとめ:効率的「混ぜ方」の数理
第9章 渦・境界の相互作用の数理~多重連結領域の点渦力学
9.1 二次元多重連結領域における流れ
9.2 境界をもつ領域におけるグリーン関数の構成
9.3 多重連結標準円領域における点渦力学
9.4 一様流中にある平行平板における定常点渦
9.5 まとめ
上記内容は本書刊行時のものです。