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日本霊異記の罪業と救済の形象
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年2月
- 書店発売日
- 2017年3月9日
- 登録日
- 2017年2月14日
- 最終更新日
- 2017年8月24日
書評掲載情報
2017-07-10 |
日本文学
2017年7月号 評者: 津田博幸 |
2017-06-01 |
佛教タイムス
評者: 「本だな」欄 |
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紹介
人はどのように苦しみ救いを得ているのか
恋や愛という他者への欲望から生まれる罪業と葛藤、
そして聖人の救済が描かれる『霊異記』。
奈良末期から平安朝前期において、漢訳仏典の語や教理の深淵に
人間の心の様相を求め、存在の在り方を探った仏教説話集である。
これまでは仏教学、思想史学、歴史学、国語学方面からのアプローチが
ほとんどであったが、「文学」の対象に据えたとき、
物語の持つあらたな構造が浮かび上がる。
作品論的読解により、中国説話集の未熟な模倣作とされた評価を覆す。
目次
凡例
序章 『日本霊異記』における罪業観と救済の構造
一 本書の目的と方法
二 『霊異記』における罪業観と救済の構造
三 本書各論の概要
第一部 罪業の形象
第一章 狐妻説話における主題―愛欲の表現と異類婚姻譚―
はじめに
一 『霊異記』に見る狐妻説話とその主題
二 狐の変化と「姝しき女」への眼差し
三 異類婚における愛欲
おわりに
第二章 狐妻説話における恋歌―「窈窕裳襴引逝也」との関係を通して―
はじめに
一 狐妻説話の変容と歌の意義
二 当該歌の先行研究
三 「窈窕」の表現性
四 散文部「裳襴引逝也」の表現性
五 『万葉集』における類歌
六 「ほのか」と「はろか」
おわりに
第三章 「愛心深入」における女の因業
はじめに
一 「愛心深入」における文脈の問題点
二 『霊異記』の夢見
三 神識にみる人間の心的作用
四 女の「愛心深入」
おわりに
第四章 婬泆なる慈母―子の孝養における救済―
はじめに
一 問題の所在
二 「天骨婬泆」の意味
三 婬泆の母・悪逆の子
四 孝の思想と『父母恩重経』
五 仏の導きと子の孝
おわりに
第五章 盲目説話の感応と形象―古代東アジア圏における信仰と奇瑞―
はじめに
一 盲目の母
二 盲目治癒説話における願
三 「郷歌」にみる母子の盲目譚
四 『雑宝蔵経』に見える盲目説話
五 『霊異記』の宿業の病と感応
おわりに
第六章 宿業の病と無縁の大悲
はじめに
一 『霊異記』の病と宿業
二 無縁の大悲と無相の妙智
三 『霊異記』説話と無縁の大悲
おわりに
第二部 〈聖人伝〉の形象
第一章 聖徳太子の片岡説話―「出遊」に見える〈聖人伝〉の系譜―
はじめに
一 聖徳太子片岡説話伝承の位相
二 釈迦の出家における遊観・出遊
三 聖徳太子伝承と『梁高僧伝』
おわりに
第二章 『霊異記』が語る行基伝―聖人の眼をめぐって―
はじめに
一 『霊異記』の行基説話と分類
二 聖人が備える天眼とその機能
三 天眼の菩薩・通眼の聖人
おわりに
第三章 行基詠歌伝承と烏の形象
はじめに
一 行基の詠歌
二 烏の形象と歌の伝承
三 婆羅門僧正と行基との贈答歌
四 行基の嘆きと歌の意義
おわりに
第四章 「外道」なる尼―女人菩薩説話の形成―
はじめに
一 肉団からの異常出生
二 尼と神人
三 外道なる尼
おわりに
終章 編者景戒の夢見と『日本霊異記』説話との関係性
一 『霊異記』下巻第三十八縁―二つの夢見と夢解―
二 延暦六年の夢
三 延暦七年の夢
四 本書各論の結論
初出論文一覧
あとがき
索引(書名・事項)
前書きなど
【......『霊異記』とは、罪業に起因する仏教的因果について、人間の自己認識を根幹に据えた書物であると考える。罪人が罰せられることによって説話の語りが閉じるのではなく、罪を犯さざるを得ない人間の業を、編者は自らの内省と照らし合せて描こうとしたのではないか。人間の欲望からなる罪業を語るのみではなく、欲望を超克し、罪業の救いを目指す『霊異記』の志向を、個々の説話の検討を通して掬い上げることが本書の目的である。
......「序章 『日本霊異記』における罪業観と救済の構造」より】
上記内容は本書刊行時のものです。