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原稿の下に隠されしもの
遠藤周作から寺山修司まで
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年6月
- 書店発売日
- 2017年6月29日
- 登録日
- 2017年6月7日
- 最終更新日
- 2017年6月30日
書評掲載情報
2017-10-06 |
東京新聞/中日新聞
評者: 大波小波(聴聞衆) |
2017-09-01 |
週刊読書人
3205号 評者: 田桐正彦 |
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紹介
ふたりの原稿の下には「禁秘〈タブー〉」がある。そこには毒が仕込まれている。
出自にからむあれこれがあり、卑下のなかに虚栄が香り、したたかな戦略もまた見え隠れ。そうした暗部にためらわず手を突っ込み、つかみあげたい―。引用や模倣に目を配り、その有様を具体的に検証することから、創造の原理を考える書。
遠藤に、寺山に、躊躇なく迫る。目指すのは日向水のようなぬるい論考、分析ではない。
あわせて、こんな着眼も開示する。手放しで称賛されている感のある映画『沈黙』だが、はたしてそうか。本書はかく問いかける。
【...ところが、英訳ではキリストが話しかける。Trample!(「踏みつける」の命令)とロドリゴを誘う。マーティン・スコセッシ監督の『沈黙--サイレンスー』も根は同じ。踏絵のシーンで神が言葉を発している。だが、キリストが本当に声をあげたなら、論理は破綻する。
キリストが沈黙を破った瞬間、それまで存在を疑っていた神がいると証明されたことになる。踏絵のなかに、手の届くところに神はいる。クリスチャンは救済を約される。踏絵、棄教云々などどうでもいいはず。ロドリゴは叫べばいい。穴吊りされている信者に向かって「安心めされ。神は沈黙を破られた」と伝えればそれでいいではないか。
原文は、神の沈黙がはたして破られたのか否か判然としないままであり、それが『沈黙』の玄妙ともなっている。この点がゆがめられている。】......第4章内容より
目次
はじめに―禁忌(タブー)に触れる
覚書
第1章 原稿の下に隠されしもの 遠藤周作から寺山修司まで
Ⅰ 遠藤周作から
『沈黙』の引用書簡/下敷き―『沈黙』/会長辞任―丹羽文雄/連載打ち切り―熊谷達也『聖武士の谷』/社会的制裁―西村みゆき『針のない時計』/赤毛の男/木曽路はすべて山の中である/臨界点七十六パーセント
Ⅱ 寺山修司へ
十三面待ち/マトリョーシカ/揺れる振り子/著作権のない時代/禁手から定石へ/模倣巡礼
■寺山修司 模倣巡礼年表(「チェホフ祭」以降)[昭和三十三年~五十八年]
オリジナリティーとは/言葉誑し
第2章 無名時代の寺山修司 「チェホフ祭」に至るまでの文学神童の歩み
序
破
背景一 小学校時代(昭和十七年~二十三年)
背景二 中学時代(昭和二十三年~二十六年)
背景三 高校時代(昭和二十六年~二十九年)
背景四 早稲田大学入学後
背景五 「父還せ」誕生前
背景六 「父還せ」応募直前
第二回五十首応募作品原稿
急
第3章 遠藤周作の秘密 年譜から見えてくるもの
序
Ⅰ
秘密の真価/秘密の淵源/白鳥の信仰復帰/神は働きである
Ⅱ
自作年譜/十八歳の空白/告発/婚約そして破棄/真の〝秘密〟
Ⅲ
受洗の心境を喩えて/複数の年譜/錯誤か作為か/堅信
Ⅳ
面従腹背/どじょう/弱者の論理/聖母と修羅
Ⅴ
誤読/仮想の死/自我の確立/懐疑/実人生
Ⅵ
二重の生き方/決意
Ⅶ
遠藤郁とヘルツォーク神父/疑問/激怒/影法師
【年譜】遠藤郁とペーター・ヘルツォーク神父
結
第4章 測深鉛をおろす 遠藤周作訳『テレーズ・デスケールー』を繰る
惚れこんだ作品/愛人訳の背景/フランス語の実力/邦訳参照/江戸の仇を長崎で討つ/冒頭の訳文/人称のすり替え/小説『アデンまで』の不可思議と混乱/『沈黙』の冒頭の不成立/「コト」と「モノ」/日本語の特性/消える主語/『テレーズ』の邦訳より抜粋[六章・七章・十三章]/汎神的な血液/踏むがいい/未来もそのように
おわりに
遠藤周作の原稿/寺山修司の「風」
あとがきにかえて
索引(人名・書名・雑誌名、引用詩歌)
上記内容は本書刊行時のものです。