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為家千首全注釈
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年3月
- 書店発売日
- 2016年3月14日
- 登録日
- 2016年2月18日
- 最終更新日
- 2017年8月24日
紹介
為家の和歌は決して一般に理解されているような平明温雅な古典主義のみではない―。
俊成・定家と父祖の跡を継ぎ、三代にわたり勅撰集の撰者となった歌人、藤原為家が26歳で詠んだ『為家千首』初の全注釈。
『為家千首』は貞応二年(1223)八月中、五日間に詠出した現存最古の千首和歌、しかも個人による速詠というただ一つの作であり、同時に、慈円の諫めによって出家を思い止まった26歳の為家が、はじめて父定家に認められ、歌道家第三代宗匠の自信を得た記念すべき作品である。
藤原為家の出発点の大作の意義をも押え、俊成とも定家とも異なる、為家という人物と詠作のあり方に迫る。
本文は冷泉家時雨亭文庫蔵「入道民部卿千首」により、注釈は【現代語訳】【参考】【他出】【語釈】【補説】の順に示す。
代表歌をもたぬ大歌人の真実に迫ることが出来る、格好の藤原為家入門でもある書です。
[本書の特色]
1・初の全文現代語訳付きの注釈書。
2・【現代語訳】【参考】【他出】【語釈】【補説】の順に示し説明。
3・成立、本文と詠出実況、内容等を詳細に示した解説付き。
4・1000首を自在に行き来できる、別冊各句索引付き。
【...一度は細部にこだわらず、千首を通読する事をおすすめする。(中略)全体を虚心に読んでいただけばいろいろな意味で実に面白い歌が多数あり、平淡な古典主義と一括し去る事は到底できないと理解されよう。そしてまた、春部では緊張し、謹直であった歌風が、詠み進むにつれて次第に自在の度を増して、万葉語や独自句、独自発想を多用、雑部に至って楽しい誹諧性を発揮するまでに至る様相が、まざまざと味わい得られるであろう。
千首に見る為家歌風は、決して平淡温雅な古典主義ではない。そこには宗匠家後嗣なればこその、豊富な和歌資料を精読記憶活用し得る「稽古照今」の精進と、それを生かしつつ自詠を独自の物とする才気・誹諧性が明らかに示されている。それらは抽象的常識的な「習練」「練磨」のみで到達し得る性格のものではなく、為家にとっては当然、かつ必須の修学方法であったにもかかわらず、以後の後進歌人らの動向が彼の真意に反して、伝統と権威に寄りかかった二条派歌風に堕して行ったのは、まことに已むを得ぬ所であった。けれども為家の作品、殊にもその出発点なる千首と、到達点なる「詠歌一躰」との子細な検討無くして、彼を軽々に論断する事はできない。今後の和歌研究者は、俊成・定家に比し余りにも過小評価されて来た従来の為家観にとらわれず、虚心に彼の和歌・歌論に向き合い、前掲為家関係小著・小論をも併せ読み、忌憚のない吟味・批判を加えられた上で、万葉から近世まで一千年の和歌史の中の正当な位置に、彼を据え直し、評価していただきたいと、切に願う。】...解説より
目次
はじめに
凡例
入道民部卿千首
詠千首和歌
春二百首
夏百首
秋二百首
冬百首
恋二百首
雑二百首
補遺
解説
一 成立
二 本文と詠出実況
1 一首詠出時間
2 無歌題千首の意義
三 内容考察
1 「稽古」―「證歌」活用能力
2 万葉語摂取
3 三代集以下摂取
4 定家・家隆・慈円継承
5 新発想・新用語
6 誹諧性
7 語彙に見る言語能力
8 創作力の根源
四 「詠歌一躰」への進展
1 稽古
2 百首詠法
3 「新」の奨励
4 「制詞」の意味するもの
五 結語
参考文献
あとがき
前書きなど
【凡例】
一 本文は冷泉家時雨亭文庫蔵「入道民部卿千首」、同亭叢書十、『為家詠草集』(二〇〇〇、朝日新聞社)所収影印、佐藤恒雄解題による。翻刻引用を許可された冷泉家に厚く御礼申上げる。
一 正しい作品名は「入道民部卿千首」であるが、注釈書名としては一般的明示を旨として、通称「為家千首」を採用した。
一 表記には適宜漢字を宛て、歴史的仮名遣いを用いる。底本表記は傍書により示すが、漢字表記か変体仮名表記か必ずしも分明でない場合は適宜判断する。また送り仮名・脱字の補入は「・」をもって示す。
一 歌頭に歌番号を付す。これは佐藤恒雄『藤原為家全歌集』歌番号から、一六一を減じた数に当る。
一 歌頭に存する朱・墨の合点、末尾に存する墨の合点は、「朱・墨・尾」と略記して各歌末尾に示す。
一 注釈は【現代語訳】【参考】【他出】【語釈】【補説】の順に示す。
一 引用参考歌はすべて『新編国歌大観』(以下、叙述には単に『国歌大観』とのみ記す)によるが、うち万葉歌は歌番号・訓ともに西本願寺本による。『私家集大成』はあまりに浩瀚で検索に力及ばず、かつそこまでの必要は無いかと考えて割愛した。
一 【他出】において、前歌詞書を襲う場合はこれを( )内に示す。
一 解説として成立・本文と詠出実況・内容考察・詠歌一躰への進展について述べる。
一 別冊として各句索引を付す。歴史的仮名遣いによるが、「生る」「梅」のみは「むまる」「むめ」とする。
上記内容は本書刊行時のものです。